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ナタリア 尋問
しおりを挟むブライアンがナタリアを騎士団に連れてきた日の夕方に一度目の尋問が始まった。
ブライアンはすでに帰っている。
「では、ナタリア・ハワードの取調べを始めます。
私はファルコン騎士団団長、エドワード・セイガルです。こちらはイーグル騎士団団長、ラルス・リルガルです。
ここで話した事はすべて記録されます。
後で言ってないとは言えません。
問題ありませんか?」
「ありません。」
「あなたのお名前は?」
「ナタリア・ハワードです」
「年齢は?」
「二十九歳です」
「ご主人の名前は?」
「ニール・ハワードです」
「現在、誰と同居していますか?」
「主人の実家に、主人の両親と私達夫婦、後は使用人です。後は主人の弟のブライアンがたまに帰ってきますけど。」
「義理の弟の名前は?」
「ハア…知ってるでしょ、ここの副団長なんだから!」
「義理の弟の名前は?」
「ブライアン・ハワード」
「夫婦仲は良いのですか?」
「普通です。」
「普通とは?」
「悪くもないし良くもないって事です!」
「貴方はそれで満足しているのですか?」
「貴族の夫婦なんてそんなものじゃないんですか?」
「じゃあ満足してるんですね?」
「・・・それなりには。」
「満足していない?」
「満足なんかしてないわよ!」
「具体的にどうして満足していないのか仰ってください」
「主人には嫌われてるし、お義母様にも嫌われてる。ブライアンは寄りつきもしない!
ブライアンの側にいたいからニールと結婚したのに、ブライアンはちっとも帰ってこない!お茶会に行っても夜会に行っても、義理の姉の私より、その辺の令嬢達の方がブライアンに会えていて、これ見よがしに私に報告するのよ!
“ブライアン様は素敵でしたわ”、“ブライアン様があそこのカフェにいらっしゃったわ”、“ブライアン様にはとても素敵な恋人がいるんですって”とかね!
その話を聞いて、顔を歪めている令嬢を見つけて、その令嬢達とブライアンの話しをする事の何がいけないの?」
「大分鬱憤が溜まっているようだ。それでシシリー・フォードファルコン騎士団一番隊リーダーに嫌がらせをさせたんですね?」
「私はやれなんて一言も言ってないわ。」
「じゃあフランシス・イザリス公爵令嬢にはどういう話しをしたんですか?」
「覚えてないわ。」
「カール・ケンネル一番隊副リーダーには何を言ったんですか?」
「覚えていません。」
「貴方の弟のヤコブには何を聞いたんですか?」
「覚えていません。」
「そうですか。では、これを聴いて下さい。」
『私の方が何年も何年も前からブライアンが好きだったのに、ちょっと綺麗だからって、二、三年しかブライアンを知らない女に渡したくないって思って何が悪いのよ!
だからフランシスや他の令嬢に、貴方とシシリーが如何に仲が良いか事細かに教えてあげたのよ!
家に二人で泊まる時は夜うるさくて眠れないとか、中庭でイチャイチャしてたとか他愛のない事を教えてあげたの!
そしたら勝手にあの子達がシシリーに嫌がらせをしただけよ!』
録音した音声をナタリアに聴かせると、明らかに動揺している。
「と先日貴方自身が言っていましたが、間違いないですね?」
「・・・・・・・」
「ブライアンとシシリーはハワード侯爵邸に泊まったことはないらしいですが、夜が五月蝿いとかイチャイチャしているのはどこで見たのですか?
まさか覗きですか?」
「失礼な!覗きなんてしません!」
「じゃあ有りもしない事、見てもいない事を教えていたんですね?」
「・・・はい」
「その嘘を令嬢達に教えた時、貴方は楽しかったのですか?そんな会話が楽しいんですか?そしてシシリー一番隊リーダーとブライアン副団長が別れればいいと、襲われてしまえばいいと思ってたんですね?
そして媚薬を飲んだのがブライアンで貴方はどう思ったのですか?
貴方の大好きなブライアンが他の女を一晩中抱き潰したことがそんなに楽しいのですか?貴方の大好きなブライアンが貴方ではなく貴方が唆した女性を抱いて、貴方は満足なんですか?何がしたかったんですか?
ブライアンのファンの為に一肌脱いだんですか?抱いてもらえと思って媚薬を盛れと言ったんですか?大好きなのに貴方自身は抱かれたいとは思わなかったんですか?
自分以外の人に好きな人を薬を使ってとはいえ、抱かせるなんて随分お優しいのですね!」
「うるさいうるさい、私は信じてない!きっとブライアンがシシリーを庇って自分が飲んだと言っているのよ!ブライアンが他の女を抱いたなんて許せない!」
「ブライアンは両親と兄上に自分にあった事説明したんですよね?
そしてその場に貴方もいたんですよね?」
「いましたけど、信じていません。」
「そうですか、分かりました。
今日はこれで終わります。ですが自宅にはまだ帰れません。
明日も話しを聞きます。
貴方と楽しい会話をしていたご令嬢達の話しも聞かないといけませんから、そのご令嬢達の話しを聞いた後、もう一度聞きます。
少しでも食い違えばその分ここにいるのが伸びるだけですし。
今の段階で貴方は暴行傷害の教唆の容疑がかかっていますので。
それではまた明日。」
「待って待って。私は帰れないの?
確定はしていないのにどうして帰れないのよ。」
「逃亡、証拠隠滅のおそれがあるからですよ。」
「家で軟禁すればいいじゃない!」
「ハワード侯爵、貴方のご実家のユンゲル伯爵家が引き取りを拒否しているからです。」
「ハア⁉︎どうして?」
「ハワード家とはもう無関係ですし、ご実家は貴方の所業が許せないそうですよ」
「そんな・・・・」
「自業自得ですね。それでは、また。」
ナタリアの一度目の尋問が終わった。
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