帰らなければ良かった

jun

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番外編 新人達は楽しくて仕方ない〜結婚式の裏側

新人騎士ショーンは忘れない

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俺はファルコン騎士団三番隊のショーン・サルエン、18歳。伯爵家の次男だ。

俺は本当は騎士団になんて入りたくなかった。
父親が俺の素行の悪さを心配して、入隊試験を受けさせられた。
剣は小さい時からある程度はやってたけど、本気でなんてやってなかったから、絶対落ちると思ってた。
なのに合格。
入団式の時は、まだ不貞腐れていて態度も悪かった。

入団式の最後に、エドワード団長が一人一人に声をかけながら、胸ポケットに団章を付けてくれて終了となる。

みんな団長に声をかけられて感動している。

俺の番になり、

「ショーン・サルエン、お前の実技試験を見ていた。サルエン伯爵はとても綺麗な剣筋でお前の剣筋もとても綺麗だった。これからも研鑽を積むように。入団おめでとう。」

「え?あ、ありがとうございます!」

驚いた。
親父を褒められた…それも剣筋。
そして俺の剣筋が綺麗だと…。

一度もそんな事言われたこともないし、俺自身思ったことなんかない。

でも、あの有名なエドワード団長が!俺を覚えていただけでなく、剣筋が綺麗って!

俺は生まれて初めて感動で身体が震えた。

俺、俺、団長に褒められたい!

あんなに騎士団になんて入りたくなかった俺が、入団初日で立派な騎士になる事を誓う事になるとは思わなかった。
その事を親父に言った時は泣いていた。

それからはとにかく訓練訓練に明け暮れた。

雑務、任務、訓練をこなし、仲間との絆も深め、昔の自分からは想像できないほど、真面目な生活を送っていた。

団長とはほとんどお会いできない日々だが、
新人全員に順番に訓練の相手をしてくれる尊敬すべき団長だ。

春になったら何番隊になるだろうと同期達と話し始めた頃、滅多にない上層部から極秘任務を言い渡された。

この任務が特殊過ぎて、最初は皆、驚いたし、戸惑った。
しかし、時間がない上、文句も言っていられない。

ほとんどの三番隊の団員は飴のラッピング作業だが、俺を含めて数名は飴作り要員になった。

飴⁉︎と全員が思った。
料理もろくに作れないのに、飴⁉︎

選ばれし俺達五名は、厨房の奥に連れて行かれた。

白衣を着て、三角巾、マスクを着用し、目の前の大鍋をぐるりと囲むようにし、綺麗に洗われた苺が入ったカゴを渡された。

コック長が、
「先ずそのカゴの中の苺に串を刺してほしい。その後、串を持ち、大鍋の飴の中に苺のみを入れた後、後ろのトレイに串が真っ直ぐになるように置いていってほしい。
俺が一度見本を見せるから見ていてほしい。」

そう言うと、コック長が流れるようにイチゴ飴を作っていく。

「「「「「おおおおーー」」」」」

なんと、苺を生で飴にするとは!

「飴が固まったら一本食べてみろ。美味いぞ。ちなみに苺はブライアンの好物だ。」

なるほど、そうだった!
ブライアン副団長は苺ショートケーキが大好物だった!

「コック長、質問です。何故大量にイチゴ飴を作るのでしょうか?」

「結婚式のレッドカーペットを歩く二人に、紙吹雪やライスシャワーをかけると、片付けが大変だから、代わりに何がいいかと両団長、イーグル副団長、各リーダー達が話し合い、どうせなら全員が持って帰れる飴にしようとなった。苺はブライアンが好きだからだ。」

「なるほど。」

なるほど、これなら子供も大人も喜ぶ。
でも痛くないんだろうか…結構な大きさで、それも硬い。
でも楽しそうだ。

全員そう思ったのか、気合いが入った顔になった。

一つ目は、恐る恐る。
二つ目、三つ目とやっていくうち、どれくらいで飴の中から苺を出すと、ムラなくコーティングされるのか分かってきた。

どんどんやっていき、カゴ一つ終わって、二カゴ目もテンポ良くやっていった。

コック長が、
「飴、固まったから一個食べてみ。」

と言われ、全員で食べた。

「「「「「オオオオーー美味い!」」」」」

固まった飴はキラキラしていて綺麗だ。
飴のカリカリと苺の甘酸っぱさ、大きさも文句なしだ。
これは美味しい!

黙々とイチゴ飴作りをしていると、

「みんなおつかれ。済まないな、こんな暑いし、しんどい事をさせてしまって。」

なんと!エドワード団長が俺達を労ってくれているではないか!

「ここまでは流石にブライアンも来ないから、大丈夫だと思うが、くれぐれもシシリーには気をつけてくれ。
シシリーの勘の良さは獣並みだからな。」

「「「「「はい!」」」」」

「団長、ありがとうございます!頑張ります!」
と俺。

「ああ、ショーン、頼んだぞ。」

そう言って俺が作ったイチゴ飴を一つ取って食べた。

「お、意外と美味いな。」

カリカリと一口で食べた団長はスゥーと出て行った。

団長が俺の作ったイチゴ飴を食べた…。

一層気合いが入り、それからはイチゴ飴作成は順調だった。

が、

「ねえ、ミッシェル、ここんとこ毎日厨房の奥から甘ーーい匂いするけど、メニューにあの匂いのするもの出てきた事ないよね?
何作ってるんだろ?」

とお昼でもないのに、シシリーリーダーが食堂に来て、ミッシェル副リーダーを問い詰めている声が聞こえてきた。

一気に緊張が走る。皆の手も止まり、ピタッと固まった。

「私に聞かれても、知らないわよ。新しいスイーツの試作でも作ってるんじゃないの?」

「そっか、すごく良い匂いだから楽しみなんだよね~」

その後はミッシェル副リーダーがなんとかしてくれたのか、声は聞こえなくなった。

その後は、廊下でシシリーリーダーとすれ違った時、
「あ!この匂い、あの匂いだ!なんで?なんでショーンからするの?」
と言ってきた。

俺の名前を知ってる事に先ず驚き、イチゴ飴の事でもあったので、俺は何も言えず、固まってしまった。

そこへ、
「シシリー、少し話しがある。執務室に来てくれ。」
と団長がシシリーリーダーを呼んで気を引いてくれた。
そして、俺に、団長がウインクをしてくれた。

な、な、なんてことを!
俺の憧れのエドワード団長…カッコいいー!

しかし、イチゴ飴作りが終わるまで、シシリーリーダーは俺達五人に会うと、
「ねえねえ、なんで皆んな同じ香水なの?」
と聞くようになってヒヤヒヤしたが、シシリーリーダーと少し仲良くなれたので、俺達はちょっと得意気だったのは秘密だ。




そんなこんなな一カ月は本当に楽しくて、忘れられない一カ月だった。















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