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しおりを挟むリーダーが寝ている医務室に入ると、
「俺はこんなとこに居たくないんだ。怪我はもう大丈夫だ!帰らせてくれ!」
と叫ぶリーダーの声が聞こえた。
ジャンとグレンが私を抱いてリーダーの所へ近付いた時、私を見つけたリーダーは、
「ウサギ!良かった~無事だったんだな、俺が守るっていったのに気ぃ失っちまった。ごめんな。」
と私の事をホントに心配していたのが分かってジャンの腕からリーダーに飛びついた。
「おっと、危ねえよ。お前は怪我なかったか?」
コクコク。
「ん?今頷いた?」
コクコク。
「お前、言葉分かんの?」
コクコク。
「オオオーーーーすげぇ!」
「興奮してるとこ悪いが、話しを聞きたい!」
と何故か怒った口調のジャンがリーダーに話しかけた。
「あ…そうだった…ここ王宮だった・・・あの…俺帰らなきゃならないんで…」
「お前にメアリー王女を攫うように依頼したのは誰だ?」
「何のことやら」
「お前が王女を攫おうとして川に落ちたのを俺は見た。」
「あの時あそこにいたのか…俺の部下も捕まったってこと?」
「そうだ。そしていつまで抱えている!返せ!」
「やだよ、ウサギは俺が見つけたんだ!」
ダメだ、これではリーダーが捕まっちゃう。
リーダーの顔を見上げ、首を振る。
ジャンを怒らせてはダメ。
リーダー、言うこと聞いて!
「どうした?」
なんとか伝えたい。
お願い、喋らせて!
声を出せ!
頑張れ、私!
「どうした、ウサギ!なんでそんなに震えてる?なんだよ、どうしたんだよ!」
「貸せ!姫様、どうしたんです!姫様!」
「姫様?なんだよ、姫様って。」
「お前には関係ない!姫様、力を抜いて下さい!姫様、どうしたんですか!」
お願い、神様、人間に戻して!
すると急に身体が熱くなった。
ジャンとリーダーが何か騒いでいる。
熱い、助けて…ジャン…
「ジャ…ン…タツケテ…アツイ…」
そして私は気を失った。
「姫様⁉︎姫様、姫様、大丈夫ですか!姫様、誰か姫様の様子が!」
「ジャン、待て待て、黙ってろ!」
「グレン、姫様が「ジャン!」
「おい、ひょっとしてそのウサギって・・・」
「それ以上言うなよ!誰にも何も言うな!ジャン、俺はランに報告してくる。ここでウサちゃんと待ってろ!そしてお前も余計な事言うなよ!」
「済まん…分かった。」
グレンが出て行き、姫様を攫った男と二人きりになった。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
無言に耐えられなかったのか男が、
「おい、そのウサギ、王女なのか?」
と小声で話しかけてきた。
「・・・・・」
「そうか…王女だったのか…。
俺なんか放っておいて逃げれば良かったのに…。」
「姫様はお前が倒れてた場所を必死に教えようとしてた。」
「そうか…俺を助けてくれたのは王女様か…。そのウサギの王女様、俺の為に野いちごを取ってきてくれたんだ…。
自分を攫おうとしてた男なのにな。」
「お前は優しいってさ。助けたいって。
話せないのに、一生懸命に文字を指して俺達に教えてた。
だけど俺はお前を許さない。
下手したら姫様は死んでた。」
「・・・そうだな。」
「でも姫様を助けたのもお前だ。
この小さなウサギの王女様はお前達が姫様を攫わせた実行犯の兄弟の事も助けようとした。
自分が囮になってまで。
それでお前らに追い詰められて崖から落ちた。
川に姫様のドレスの切れ端を見つけた時は、もうダメだと思った。
なのにお前を助けてって…。」
「・・・俺達は隣町の“銀狼”ってグループだ。俺は銀狼のリーダーのジェフだ。
俺達に王女様を攫えって依頼したのは、チルベル侯爵家の執事見習いのスタンって奴だが、そいつが“お嬢様”って呼んでる女が家紋が入ってない馬車に乗ってるのを見た。
王女様を攫えと命令したのはそのお嬢様だと思う。手付金として宝石を渡された。
成功したら金貨十枚くれると言われた。
手付金の宝石はまだ手元にある。
証拠になるなら渡す。
俺の知ってるのはそれだけだ。
捕まえないとまた狙われる。だから早く捕まえろ!」
「良いのか、仲間も捕まるぞ。」
「こんなちっこいウサギに助けられるようじゃ俺もここまでなんだろう。
それに久しぶりに生きてた頃の親父を思い出した。
ウサギをおぶってた背中があったかくて…親父の背中もあったかかったって思い出した。
親父が死んでからはなんでもやった。
今じゃこんなだ。だから、王女様に助けてもらえるような人間じゃねえ。
だから王女様が起きる前にここから出て行ってくれ。
俺は逃げねえから。」
「姫様は目が覚めたら、お前を探すだろう。助けようとまた無茶をする。
ほんの少しでも一緒にいたのなら分かるだろ?
お前の無事を確認するまで探し続ける、きっと。
俺は姫様の望みを叶えてあげたい。」
「お前、王女様が好きなのか?」
「そ、そんなんじゃない!」
「ふぅ~ん、じゃあ死ぬ前に最後のお願いで抱きしめさせてもらおうかな、“姫様”を。」
「やらせるか!姫様って呼ぶな!」
「いいだろ、お前のものでもあるまいし、“姫様”が良いって言ったら俺も“姫様”って呼ぼうかな。」
「ダメだ!姫様って呼ぶのは俺だけだ!」
「ふぅ~ん、だってさ、“姫様”。」
「え?」
だいぶ前に意識は戻っていたけど、なんか恥ずかしくて動けなかった。
ジャンがまるで私の事好きみたいに聞こえて、目を開けられなかった。
リーダーにはバレてたけど。
「モウ、ヤメテ、ハズカチイ」
「「あ、喋った!」」
「ア、ホントダ」
三人で驚いてる所にグレンとラン兄様が来た。
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