番なんていません、本当です!

jun

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俺とグレンがランバートの説教が終わって雑談をしている時、

ドアの向こうがうるさくなった。

何かと思い、ドアを開けると、

「ラン!ランバート!お前、ウチの妹に何してくれてんだ、コラァ!」

「え?ジョージ?」

と言ってランバートがドアの所まで走ってきた。

護衛に止められた隣国の王太子、姫様の兄上のジョージ様は、

「俺は聞いてない、こっちにそんな報告来てないぞ、どういう事だ!」

「ジョージ、落ち着け!とにかく中に入れ!お前らもジョージを離せ。隣国の王太子だぞ!」

護衛達はパッと離し、

「失礼致しました!」
と頭を下げた。

ジョージ様はそんな事よりも姫様のことしか頭にないのか、執務室に入っても、我が国の王太子に怒鳴り散らしている。

「ジョージ、とにかく説明するから座れ。」

「それで、何でメアリーが誘拐なんてされる事になった?」

そして、ランバートが学校の事から説明し、誰に何故狙われたのかを話した。
姫様が崖から落ちた話の時は、血管切れるんじゃないかと思うほど、怒っていた。

「それで、メアリーはウサギ化したと?」

「そういう事かな。」

「まあ、もうそろそろ元に戻るとは思うがな。それにしても、その誘拐を企んだ女は捕まえたんだな?」

「ああ、さっき逮捕した。」

「で?どうするの?ただ処刑しないよね?
プルーム王国を敵にまわしたその侯爵家は潰すよね?
今から父上と母上に連絡したらどっちも最速で来る事になるけど、いいよね?
ショーヤ様に伝えてくるから!
今、ショーヤ様はどこ?」

「本当に済まないと思っている。
でも、俺だって死ぬほど心配したし、殺したい程、その令嬢が憎いよ。でも、お前も王族なら分かるだろ、王族は誰よりも冷静にならないとダメなんだって。
だから、少し落ち着け。
ブロス様方が来るのも構わないし、父上に会うのも構わない。
でも今のジョージは、父上には会わせられない。会いたかったら、落ち着いてくれ。」

「・・・・・フゥーーーーー」

ジョージ様はライオンの獣人だ。
怒ると立髪のように髪が逆立つ。

息を長く吐き出して、ようやく髪が戻った。

戻っても、毛量が多いのでライオンなのがすぐ分かる。
逆立った髪は威圧感が半端ない。

「済まない…。まさか、誘拐されて、崖から落ちたなんて…。
お前もナタリーがそうなったら落ち着いてなんかいられないぞ…」

「まあな、お前の気持ちは分かる。
メアリーは俺にとっても可愛い妹だと思っている。あ、お前、メアリーの子ウサギ姿見た事ある?めちゃくちゃ可愛いぞ!で、喋るんだぞ、可愛かった~」

「なにそれ?見た事ないんだけど!」

「“ランにいたま”って言うんだぞ!ぴょんぴょん飛ぶんだぞ!」

「嘘だろ、俺も見たい!でも、今はメアリーが四つん這いになったようなウサギだったぞ。」

「なにそれ?俺、見てない!見たい!」

「まだそのままなんじゃないかな、行くか、ラン!」

「待って下さい!姫様はあのお姿にショックを受けて気絶なさったんです!
泣いて、誰にも会いたくないと部屋に篭ってしまわれたんです!
ですから、今、お二人が行くのはどうかと。」

「ジャン、“あのお姿”って言ったよね?ジャンは見たってこと?」

「あの、色々あって、姫様を泣かせてしまい…誤解を解くために部屋へ入りました…」

「ちょっと待って!君、誰?」

「私は白騎士団所属ジャン・ラテリアです。ジョージ様とは幼い頃一緒に遊んだ事があります。」

「ジャン・・・・・あ、意地悪ジャンだ!」

「そうそう、その意地悪ジャンだよ、彼は。」

「え、意地悪ジャンって呼ばれてたんですか、私は?」

「二人で呼んでた。かくれんぼや鬼ごっこしてると年上なのをいい事に、かくれんぼでは小さな俺達には見つからない所ばっかり隠れ、鬼ごっこは本気で追いかけてきてたからな。」

「全然、そんな事覚えてない…」

「お前は意地悪だった。俺を泣かせたのはお前が初めてだった。」

「なんか、すみません。」

「その意地悪ジャンがなんでウチの妹泣かせたんだよ!」

「いや、俺のリアクションが姫様の姿を気味悪がったと勘違いさせてしまい、誤解だと言っても納得されないので、少し強引に部屋に入り、説明させてもらいました。」

「ふぅ~ん、メアリーはそれで納得したの?」

「はい、納得して下さいました。」

「ジョージ、ジャンはメアリーを探すために崖から飛び込んでまで、探してくれたんだ。そして、誰も気付かなかった、子ウサギメアリーを見事見つけたんだぞ、凄いだろ!」

「え?そうなの?へぇーそうなんだ~。
ねえ、意地悪ジャンは婚約者はいるの?」

「その意地悪ジャンって呼ぶのやめてもらえますか、昔の事なんですから。」

「いいから、婚約者はいるの?」

「いえ、いません。」

「ふぅ~ん、そう、分かった~。」

「ジョージ、悪い顔してるよ。」

「ジャンはラテリアって言ったね、て事は公爵家だね。」

「はい」

「ふぅ~ん、今度さ、ウチの両親が来たら会ってやってよ。メアリーを助けてくれたんだもの。良いよね?」

「それは構いませんが…」

「よし!ラン、怒って悪かったな。ジャンも・・・・・ん?ジャンの後ろの人は誰?」

「あ、グレンだ。ジャンと同じ白騎士団のグレン・ニクソンだ。グレンにも会ったことあるぞ。」

「グレン・ニクソンです。ジャンと一緒にジョージ様とは遊んだ事がございます。」

「知ってる、覚えてる、腹黒グレン。」

「何の事でしょう?ちっとも覚えていなくて…。」

「お前、絶対覚えてるだろ!俺も覚えてる!お前は“ここなら見つかりませんよ”って教える所は必ず最初に見つかる場所だった。
鬼ごっこは全速力で逃げてそのまま帰ってこなかった!」

「さすが王太子様、よく覚えていらっしゃる。」

「この性悪コンビは未だに連んでるだな!」

「見つからないように後ろにいたんですが、見つかってしまいました。」

「それで、腹黒グレンは婚約者いる?」

「います。可愛い婚約者がいます。メアリー様には私の婚約者がお世話になっています。」

「そうか、ま、お前は嫌だから良かった。」

「俺もジャンなら良いと思いますよ。」

「あれ?知ってるの、メアリーの事情?」

「はい、あ、これ以上言わない方が良いですよ、は今何の事言ってるか気付いてないので。」

「なるほど。さすが腹黒だ。」

「褒め言葉と受け取ります。」

「え?何?何のこと?」

「ジャンはいいんだよ、さあ、仕事に戻ろう、ジャン。」

「あ、ああ。では、失礼します。」



「お前、ひょっとしてジャン、狙ってる?」

「うーーーん、良いかもしれない…」




とジョージが呟いたことを、ジャンは知らない。











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