僕の過保護な旦那様

cyan

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二章

118.迷宮探索

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 今日は朝から迷宮の見学だ。
 メンバーはラルフ様とシル、リーブとリズと僕の五人だ。リーブとリズが強いから、ラルフ様もこのメンバーで行くことにしたんだろう。

「ラルフ様、なぜそれを持ってきたんですか?」
 ラルフ様の手にはポポママが握られている。本当になんで?
 腰には剣を差してるからそれで十分だよね?
「これはなかなかいい。コンパクトで邪魔にならず、武器ではないというところがいい」
「じゃあぼくはポポをもってる」
 ラルフ様がそんなことするからシルが真似したじゃないか。

「ママはポポのかぞくもたないの?」
「僕は両手が空いていた方がいいから、持たないで行くよ」
 ごめんねシル、僕にはその勇気はちょっと無い。

 ちゃんと僕が用意した防毒マスク、開錠の工具、ツルハシとハンマー、カンテラも持ってる。それと、エドワード王子にもらった研究者しか入れない場所への立ち入り許可証も持った。
 防毒マスクは子ども用がなかったから、メアリーに大人用を小さく作り直してもらった。
 工具やランタンはラルフ様が持ってるから僕たちは持っていない。

 そして、今回ラルフ様の要望で持ってきたものがある。それは『マティアス特製虫除けオイル』だ!
 迷宮の中は真冬でもあまり寒くならないらしく、こんなに寒い時期になっても虫がいるのだとか。それで僕が身を削って作った虫除けオイルの出番がきた。

 堂々と鞄からオイルを取り出す。
 痛っ……
 反らせるように胸を張ったら腰にきた……
 慣れないことはするものじゃない。
 ゆっくり腰をさすって、みんなの手の甲にオイルをチョンチョンとつけていった。

 迷宮へは歩いて向かう。馬車は腰に響くから、徒歩の方が楽だ。
 だけど無理させたからってラルフ様が僕のこと抱っこしていくのはちょっとどうかと思う……
 お尻の下に硬いものが当たってるんだ……
 その感触がなんとも言えなくて、すごく困る。

 その硬い感触はラルフ様がこんなところで欲望を滾らせているわけじゃなく、ポポママの感触だ。持っていくにしてもせめて鞄に入れておいてもらえませんか?
 それか僕は自力で歩くので下ろしてください。

 羞恥に耐えながら迷宮の入り口まで向かうと、やっと下ろしてもらえた。入り口自体は研究者も騎士も一般人も同じところだ。
「シュテルター隊長、お疲れ様です!」
「今日も変わりはないか?」
「はい! 昨日も本日も異常は見つかっておりません!」
 入り口のところに立っている騎士が元気よく答えてくれた。

「たいちょー、いじょーなしです!」
「シルヴィオ隊員、ご苦労!」
 シルもラルフ様に報告している。なんの報告か分からないけど、言いたかったんだろう。うちの子は騎士ごっこが大好きだ。周りの騎士もみんな温かい目で見ている。

「ラル、ぼくチェーンメイルきたい」
「そうだな、何があるか分からない。宿まで取りに戻るか。マティアスの分のも必要だな」
 嘘でしょ? 迷宮を目の前にしてお預けとか悲しすぎる。宿に戻ったところでチェーンメイルなんて持ってきてないし。まさか僕は迷宮を前にして、中に入ることなく帰ることになるんだろうか……
 そんな……

「旦那様、そういうこともあろうかと持ってきております」
 嘘……リーブが優秀すぎて怖い。なんか大きなリュックを背負っていると思ったら、チェーンメイルなんか入れてきたのか……

「ですが、シルヴィオ様の木剣はもってきておりません」
 うん、あれは見せかけだけの飾りだからね。仕方ないよ。
「リーブ、ぼくポポがいるからだいじょうぶ」
 シルの手にはポポという友だちであり癒しの存在であり、そして武器としての能力も発揮する優秀なチンアナゴがいた。

 腰痛いのに……
 そう思いながら、迷宮に入るためだと覚悟を決めてチェーンメイルを着ることにした。旅の恥はかき捨てだ。
 ねえ、チェーンメイル着るってことは、土でできた人形が襲ってきたりするんじゃないの?
 どうしよう、すごくワクワクしてきた!

 巨大な門を抜けて迷宮へと足を進める。街に舞う砂のように光が当たると黄金にも見える黄土色の柱がずらりと並んでいた。
 その柱の向こうには王城にも引けを取らないほどの大きな建物。その右半分は崩れてしまっているけど、数百年前の建築物とは思えないくらい綺麗に形が残っている部分も多い。

「すごい! おおきい!」
 シルが喜んでいる。だよね、迷宮ってワクワクするよね!
「大きいね。こんなに大きな柱、どうやって作ったんだろう」
 ここが迷宮。僕はその事実に圧倒されていた。

 この辺りも砂埃が酷いから、足速に抜けて建物に入ることになった。
 大きな建物は巨人が住んでいたのかと思うくらい天井も高く、入り口も僕を縦に三人重ねても通れるくらい大きい。

 室内に入っても黄土色一色で、扉や窓が無いのは不思議だった。取り外したのか、長い年月をかけて劣化して崩れてしまったのかもしれない。
 今いる場所は一般人が見学できる場所だから、地面は砂でザラザラしているけど、壁や柱が崩れたりしているところはない。
 天井は一部補強されているから、安全が確保された場所なのだとよく分かる。

「マティアス、こっちだ。勝手に動くと迷子になるぞ」
 僕は感動しすぎて周りを見ていなかった。話も聞いてなくて、みんなから逸れかけてラルフ様に注意され、走ってみんなの元へ戻った。
「ごめんなさい」
 僕は団体行動が苦手なのかもしれない。
 すぐに興味惹かれる場所へフラフラと引き寄せられてしまう。
 王都ならいいけど、勝手の分からない迷宮なんかで迷子になったら大変だ。注意しておこう。

 
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