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二章
121.ルカくんとの再会
しおりを挟む雪が降る前に王都に戻ってくることができてよかった。灰色の分厚い雲が広がる空からは、今にも雪が降ってきそうだ。今年は雪が降るのが早いのかもしれない。
そんな空を見上げながら、僕はシルと一緒に本を読んでいた。
シルを膝に乗せて一緒にページをめくっていく。今日はシロクマが魚をたくさん取るために色んな方法を試す物語だ。
「マティアス様、ハリオ殿とお客様がお見えです」
リーブが部屋に呼びに来たんだけど、誰かが訪ねてくる予定なんてあったかな?
ハリオは何しに来たんだろう?
シルをメアリーに預けて応接室に向かうと、ハリオとルカくんが座っていた。ハリオはいつも通りだけど、ルカくんは俯いて肩を落としているように見える。
「ハリオ、どうしたの? ルカくん久しぶりだね」
「色々とありまして、ルカをこの家に置いてもらえないかと相談にきました」
うん、全然分からない。ラルフ様も今は不在だし、色々ってところを説明してくれないと、僕だって判断できない。説明不足なところまでラルフ様に似てしまったハリオを残念な気持ちを込めて眺めた。
「ハリオ、それで説明は十分だと思う? それで僕が判断できると思う?」
「すみません。マティアスさんにはちゃんと説明します。隊長にも」
そう言ってハリオが話した内容を聞いて、僕は少し冷めた気持ちになった。
ルカくんは、前にハリオをカモにしたみたいに、色んな人にお店の商品を大量買いさせていた。「お店の売り上げが厳しくて……」などと嘘までついていたそうだ。
そんなことをしていたから、見返りを求める人が現れた。「これだけ売上に貢献してるんだから一晩くらい付き合えよ」などと言って迫ってきたそうだ。
しかしルカくんにその気は無いし、一人にそんなことをしてしまえば、他の人とも……なんてことになりかねない。
当然ルカくんはそれを断った。しかし、断ったら閉店後に襲われそうになった。
その時はハリオがいて助かったんだけど、相手は逆上して捨て台詞を吐いて去っていったそうだ。それで終わりならよかったんだけど、その相手は後日、夜中に誰もいない店を襲撃。それで店はぐちゃぐちゃになって営業ができなくなった。
なんていうか、それ自分で蒔いた種じゃないの? って僕は思ってしまった。
また襲われる可能性があるってことでハリオがルカくんを保護してここに連れてきた。宿に一人で置いておくのは不安だし、騎士団の寮に連れていくわけにはいかない。
だからってさ、他人を家に置くのは僕の判断でどうにかできるものじゃない。ルカくんはハリオの片想いの相手だけど、恋人ではないし、何より僕がルカくんのこと信用できないんだ。
それは僕がハリオ経由でルカくんのお菓子を食べて丸くなったから恨んでるってわけじゃない。ちゃんとラルフ様にたくさん愛されたおかげで頬はスッとしたんだ。
ハリオをいいように利用して、他のお客さんのことも利用してた。そんな人を家に置くのは不安なんだ。
うちにはシルがいるし、使用人のみんなはどうにかなるようなことはないと思うけど、家に滞在させるということは信用している人でないと無理だ。
勝手に部屋に入ったり、誰かに何かをしたり、それは絶対に無いって言える?
「悪いけど僕はルカくんのことを信用してない。僕にとってもラルフ様にとっても他人で、ハリオは友だちだと思ってるみたいだけど、ルカくんはハリオのことどう思ってるの?」
ルカくんは、そんな質問をされると思ってなかったのか、逡巡した後に小さい声で「す、素敵な、お客さん」と言った。
ハリオは少し悲しそうな顔をした。そうだと思ってた。
ルカくんにとってハリオはまだ友だち未満なんだ。だからお店の商品をたくさん買わせたりできる。
ハリオのことを大切な友だちだと言えるようなら考えてもよかったけど、お客さんか……
「だけど、助けてくれたから、僕も覚悟を決める。ハリオのものになろうと思う」
覚悟を決めるようなことじゃない。差し出せるお金がないからその身を差し出すなんて、ちょっとどうかと思うよ。
「断る」
ルカくんは覚悟を決めてハリオのものになると言ったけど、ハリオはそれを断った。ハリオはルカくんの体ではなく気持ちがほしいんだ。本当にルカくんのことが好きなんだろう。なんでそこまで? 利用されたのに。
「なんでだよ! だってハリオは僕のこと好きなんだろ?」
「自分のことを大事にしろ」
「だって、だって……」
おや? ルカくんが焦っているのは、強くてある程度お金も持っているハリオに寄生できないからだと思ったけど、どうも様子がおかしい。
「僕だって……」
もしかして、ルカくんハリオのこと好きなの?
ムッと不機嫌に断固拒否という様子で腕を組んだハリオを見つめるルカくんは、なんかちょっと悔しそう。
ハリオはオープンに好きだと言っていたから、ルカくんはこの機会に言ってしまおうとハリオのものになる宣言をした。それなのに拒否された。
これで恋人になれると思ったところで、まさかのハリオからの拒絶。
ルカくんも、自分も好きだって言えばいいのに、まだそれは言えないらしい。ハリオ、よかったね。僕はお節介なんてせず見守ることにする。
ハリオは鈍感なんだな。ルカくんがまさか自分のことを好きだなんて思ってないのかもしれない。
でもそっか、ルカくんはハリオのことが好きなのか。僕は二人の今後の動向が気になるという不純な動機でルカくんを家に置くことを決めた。
ただし、何かよからぬことを企んだり、おかしな行動を取ったらすぐに出て行ってもらうという条件付きだ。
そんなつもりはないとしても、一応言っておかなきゃね。
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