僕の過保護な旦那様

cyan

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二章

190.冬が好きな理由

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 ハァー
 悴んだ手に息を吹きかけて指先を温める。こんなんじゃ全然足りないくらい今年は寒い……
 こんなに寒いのに、シルとパンは楽しそうに少し積もった雪の上に足跡をつけながら散歩している。

 新雪の上に足跡をつけるの、僕も子どもの頃に庭でやってた。
 庭を歩き回って足跡をつける場所がなくなると、こっそり外に出て足跡をつける場所を探して歩いていたっけ? そういえば一度大変なことになった記憶がある。
 誰も歩いていない場所が見えたから走って行ったら、そこは池の上で、薄く張った氷の上に雪が積もってたんだ。それで薄い氷は子どもの僕の体重を支えられず、冷たい池の中にドボンと落ちた。
 その時はひどい風邪を引いて十日くらい寝込んだんだっけ?

「ふふふっ」
 思わず思い出して笑ってしまった。
 子どもの頃はあんなことがあったけど、もう今は大人になったからそんな失敗はしない。

「マティアスさん、何か面白いものでも見つけたんですか?」
 ニコラに話しかけられて、思い出し笑いしてしまったことが恥ずかしくなった。

「ちょっと昔の失敗を思い出してたところ」
「失敗か。雪で滑って転んだとか?」
「まあそんなところ。子どもなら一度は通る道だよね」
「そうですね」
 ニコラも子どもの頃に雪で滑って転んだことがあるみたいだ。誰でもあるよね。

 そんな感じで寒い中シルとパンの散歩を見届けて、ガゼボの近くまで行くとまだ残っていた綺麗な雪で、手のひらサイズの小さな雪だるまを作った。

「ママ、なにつくってるの?」
「雪だるまだよ。小さいけど、丸いのを二つ作って乗せると可愛いでしょ?」
「うん!」
 シルは柱の横に残っていた降り積もった雪で僕と同じように雪だるまを作ってガゼボの机の上に置いた。可愛い。これはラルフ様が帰ってきたら是非とも見せなければ!

「マティアス様、積もった雪を入れるためにあっちの角に穴を掘ってありますので気をつけてください」
「うん、分かった」
 まだ年が明けてそれほど経っていないから、これから春までにたくさん雪が降ると思う。だから今年は雪が積もる前に穴を掘ることにしたらしい。いつも雪かきをして庭の端に山積みにしていたんだけど、いつまでも残ってしまうから今年は穴にすると言っていた気がする。
 冬はあまり庭に出ないし、シルとパンが穴に落ちないよう注意しておく必要はあるけど、シルとパンもバルドが穴を掘るところを見ていたから間違って落ちたりはしないだろう。
 その穴は春以降は、刈り取った雑草や木を剪定した時の枝やなんかを捨てる場所になるそうだ。生ゴミなども捨てて、上手くいけば肥料ができるかもしれないと聞いた。

「ラルフ様、昼間にシルと雪だるまを作ったんです。庭のガゼボに飾ってあるので見にいきませんか?」
 ラルフ様が帰ってくると、僕は部屋に行くより先にラルフ様を庭に案内した。

「この小さい雪だるまを二人で作ったのか?」
「そうですよ。まだ雪はそれほど積もっていないので大きいのは作れませんでした。大雪が降ったらもっと大きいのを作ります」
「その時は俺も手伝う」
 もしかして、ラルフ様も雪だるま作りたかったのかな? ラルフ様の表情を見ると、難しい顔をしていた。もしかしてシルと二人だけで作ったから拗ねてる?
 次はラルフ様も一緒の時に作ろう。

「マティアス、素手で雪を触っていたのか?」
「え? うん、そうだけど、なんで?」
「手が真っ赤になっている。それにとても冷たい。早く家に入るぞ」
 そう言うと、僕はラルフ様にひょいっと抱き上げられて部屋まで運ばれた。ちょっと手が赤くなってるだけなのに、大袈裟じゃない? 足は何ともないから僕は一人で歩けるよ。

「痛そうだ……」
 ラルフ様はチェストから手荒れ用の軟膏を取り出すと、僕の指一本一本に丁寧に軟膏を塗ってくれた。
 温かくて大きな手でヌルヌルと塗り込んでもらうと、ちょっとドキドキしてしまう。冬はこうしてラルフ様が僕の手を管理してくれる。

「かなり指先が冷えているな」
 ラルフ様の手は温かい。ラルフ様の大きな手で両手を包み込まれるのも、ラルフ様に守られているみたいで好きな瞬間だ。
 ラルフ様曰く「マティアスの手を温めるのは俺の役目だと決まっている」ってことで、僕の手が冷たいと、ラルフ様はすぐに僕の手を取って温めてくれる。暖炉で温まるよりもゆっくり温かくなって、すごく気持ちいい。

 気持ちいいなって思いながらラルフ様をボーッと見ていると、ゆっくりラルフ様の顔が近づいてきて、不意に唇が重なった。
「え?」
「マティアスがキスしてほしそうだった」
 そういう意味でラルフ様を見ていたわけじゃないけど、イタズラが成功したようにフッと柔らかい笑みが溢れて、僕はまたドキドキしてしまった。

「もう一回してほしいです」
「一回でいいのか?」
「うーん、ラルフ様がしたいだけしてください」
「分かった。じゃあたくさんする」
 また僕はひょいっと抱えられてラルフ様の膝の上に乗せられると、リーブが夕食だと呼びにくるまで数え切れないくらいキスをした。
 ラルフ様と密着して温めてもらったから、手だけじゃなく体全体が温かくなった。これだから冬は好きだ。

 
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