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第34話 脱出
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「……ひどい有り様になっちゃいました」
マルクは、目の前で魔力を吸い尽くされて気絶している男と、背後で服を燃やされて気絶している男を交互に見ながら呟いた。
「ライムが戻ってくる前にどうにかしないといけません!」
そう言いながら、マルクは作業に取りかかる。
「よいしょっと……」
見張りの男二人を引きずって、やっとの思いで部屋の壁際に並べた。
「えっと……何か縛るものは……」
それから室内を見回し、机の上に置いてあるロープを見つけたマルク。
それを手に取り、二人の体をぐるぐるに縛った。
「ふぅ……これでよしっと」
一仕事終え、一息ついたその時。
「マルク、みんな連れてきた」
ぎぃ、という音と共に自分が入ってきた方の扉が開き、そこからライムが顔を覗かせた。
「ありがとうございます、ライム」
「みんなここに入れていい?」
「えっと、ちょっとだけ待っててください」
マルクはそう言うと、地面に落ちていたぼろぼろの袋を拾い上げた。
「それ……どうするの?」
「こうします」
そして、それを服を燃やされて全裸になっている男に上から被せる。
「さすがに、こんな教育に悪そうな子供たちに見せるわけにはいきませんから……」
「おー。なるほどー」
感心するライム。それから、はっとした様子で続ける。
「じゃあマルクも見ちゃダメ。ぜんぶ忘れて」
「無茶を言わないでください…………あと、子供たちのこと、もう呼んでもいいですよ」
「わかった。みんなかもーん」
ライムがそう言うと、子供たちが後ろからぞろぞろとついてくる。
「お姉ちゃんたち、もう悪い人やっつけちゃったの?」
「そのとーり。マルクがすごいがんばった」
先頭に居た女の子の問いかけに、そう答えるライム。すると、子供達はわっと歓声を上げる。
「やっぱりすごいや!」「さいきょーだね! お兄ちゃんたち!」「ボク、お兄ちゃんみたいにつよくなりたい!」
「えへへぇ、いやぁ、それほどでもぉ……!」
満更でもなさそうな様子のマルク。しかし、ここが人さらいのアジトであることを思い出し、慌てて気を引き締め直す。
「こ、こほん。……とにかく、まだ危険が潜んでいるかもしれませんから、外に出るまではみなさんいい子にしていてくださいね?」
マルクはあたふたしながら、皆にそう言い聞かせた。
「うん! わたしいい子にしてる!」「みんなもう少しがんばるんだぜ!」
指示に従い、団結する子供たち。
「……それじゃあ先に進みます。危険がないかは僕が確認するので、ライムはみんなのことを見守っててあげてください」
「おっけー」
こうして、マルク達は部屋の扉を開け、出口を目指して先に進んだ。
扉の先はいくつか道が分かれていたが、男の話の通りであれば、真っすぐ進めば良いはずだ。
「……一度止まっていてください」
マルクはそう言って、先に分かれ道の方を確認する。
その先には扉があり、寝室や物置部屋のような場所へと続いていたが、どの場所にも人はいなかった。
「大丈夫そうです、先に進みましょう」
確認を終え、マルク達は通路を真っ直ぐ進み始める。
「マルク、あれ」
しばらく進んでいると、ふとライムが前方を指さした。その先にあったのは階段だ。
「はい、分かってます。――あの階段を登れば外に出られますよ!」
マルクが子供達へ向けてそう説明する。
「やったー!」「俺たち、帰れるんだな!」「お父さん、お母さん、早く会いたいよぉ……」
喜びを口にする子供たち。安心からか、泣き始める子もいた。
「………………」
「マルク、どうかしたの?」
「いえ。ただ……みんなには、心配してくれるお父さんやお母さんがいるんだなって……そう思っただけです」
「マルクにはいないの?」
「……僕が小さい時に、二人とも死んじゃいました」
「さびしい?」
「さあ……どうなんでしょう? お姉ちゃんがいてくれたから、あまりそんなことは思わなかった気がします」
「……いまは? ライムちゃんがそばにいるよ?」
マルクの腕を掴みながら、そう問いかけるライム。
「そうですね、ライムや、クラリスさん、カーミラさんがいてくれるので寂しくありません!」
――トラブル続きでそれどころじゃないので。
ふとそんな言葉が頭をよぎり、マルクは苦笑いした。
「よかった…………あとね、ライムちゃんにもそんなものいないから、マルクと一緒だよ」
「そうでした、ライムはスライムでしたね」
「うん」
一般的に、スライムは分裂したり、液体に魔力が反応して生まれるとされている。そもそも、親という概念自体がないのだ。
「今まで、寂しかったですか……?」
「…………うん」
「よく頑張りましたね、ライム。さっきも、たくさん手伝ってくれてありがとうございます」
マルクはそう言って、ライムの頭をなでる。
「うん、ライムちゃん、なんでもしてあげるからね」
ライムは嬉しそうに目をぎゅっとつぶりながらそう答えた。
「だから……ずっとライムちゃんのそばにいて……? いなくなったり、しないでね」
「はい、僕は居なくなったりなんかしませんよ」
マルクは、頼られていることが少しだけ嬉しく感じた。
「――ずいぶんと仲がいいんだねぇ、お兄ちゃんたち」
「…………え?」
「ひゅーひゅー! おあついねぇ!」「お兄ちゃんとお姉ちゃん、こいびとなの?」「何でもいいけど、早く外に出ようぜ!」
「……そそそ、そうですね、早く外に出ましょうか」
子供たちに茶化されたマルクは、顔を真っ赤にしながらそう言った。
しかし、階段を登ろうとしたその時――。
「F*CK! 俺が居ねえ間に……こりゃあ、一体どういうことだ?」
通路に、大きな声が響き渡った。
「な、なに……この声!?」「うえええええええん、こわいよぉ……っ!」
「――みんな近くの部屋に隠れてくださいっ!」
マルクにそう呼びかけられ、蜘蛛の子を散らすように逃げていく子供達。
マルクとライムは、通路を塞ぐようにして身構える。
「S*IT! 冗談きついぜ……」
それからすぐ、兜を被った男が三人の手下を引き連れて階段から降りてきた。
マルクは、目の前で魔力を吸い尽くされて気絶している男と、背後で服を燃やされて気絶している男を交互に見ながら呟いた。
「ライムが戻ってくる前にどうにかしないといけません!」
そう言いながら、マルクは作業に取りかかる。
「よいしょっと……」
見張りの男二人を引きずって、やっとの思いで部屋の壁際に並べた。
「えっと……何か縛るものは……」
それから室内を見回し、机の上に置いてあるロープを見つけたマルク。
それを手に取り、二人の体をぐるぐるに縛った。
「ふぅ……これでよしっと」
一仕事終え、一息ついたその時。
「マルク、みんな連れてきた」
ぎぃ、という音と共に自分が入ってきた方の扉が開き、そこからライムが顔を覗かせた。
「ありがとうございます、ライム」
「みんなここに入れていい?」
「えっと、ちょっとだけ待っててください」
マルクはそう言うと、地面に落ちていたぼろぼろの袋を拾い上げた。
「それ……どうするの?」
「こうします」
そして、それを服を燃やされて全裸になっている男に上から被せる。
「さすがに、こんな教育に悪そうな子供たちに見せるわけにはいきませんから……」
「おー。なるほどー」
感心するライム。それから、はっとした様子で続ける。
「じゃあマルクも見ちゃダメ。ぜんぶ忘れて」
「無茶を言わないでください…………あと、子供たちのこと、もう呼んでもいいですよ」
「わかった。みんなかもーん」
ライムがそう言うと、子供たちが後ろからぞろぞろとついてくる。
「お姉ちゃんたち、もう悪い人やっつけちゃったの?」
「そのとーり。マルクがすごいがんばった」
先頭に居た女の子の問いかけに、そう答えるライム。すると、子供達はわっと歓声を上げる。
「やっぱりすごいや!」「さいきょーだね! お兄ちゃんたち!」「ボク、お兄ちゃんみたいにつよくなりたい!」
「えへへぇ、いやぁ、それほどでもぉ……!」
満更でもなさそうな様子のマルク。しかし、ここが人さらいのアジトであることを思い出し、慌てて気を引き締め直す。
「こ、こほん。……とにかく、まだ危険が潜んでいるかもしれませんから、外に出るまではみなさんいい子にしていてくださいね?」
マルクはあたふたしながら、皆にそう言い聞かせた。
「うん! わたしいい子にしてる!」「みんなもう少しがんばるんだぜ!」
指示に従い、団結する子供たち。
「……それじゃあ先に進みます。危険がないかは僕が確認するので、ライムはみんなのことを見守っててあげてください」
「おっけー」
こうして、マルク達は部屋の扉を開け、出口を目指して先に進んだ。
扉の先はいくつか道が分かれていたが、男の話の通りであれば、真っすぐ進めば良いはずだ。
「……一度止まっていてください」
マルクはそう言って、先に分かれ道の方を確認する。
その先には扉があり、寝室や物置部屋のような場所へと続いていたが、どの場所にも人はいなかった。
「大丈夫そうです、先に進みましょう」
確認を終え、マルク達は通路を真っ直ぐ進み始める。
「マルク、あれ」
しばらく進んでいると、ふとライムが前方を指さした。その先にあったのは階段だ。
「はい、分かってます。――あの階段を登れば外に出られますよ!」
マルクが子供達へ向けてそう説明する。
「やったー!」「俺たち、帰れるんだな!」「お父さん、お母さん、早く会いたいよぉ……」
喜びを口にする子供たち。安心からか、泣き始める子もいた。
「………………」
「マルク、どうかしたの?」
「いえ。ただ……みんなには、心配してくれるお父さんやお母さんがいるんだなって……そう思っただけです」
「マルクにはいないの?」
「……僕が小さい時に、二人とも死んじゃいました」
「さびしい?」
「さあ……どうなんでしょう? お姉ちゃんがいてくれたから、あまりそんなことは思わなかった気がします」
「……いまは? ライムちゃんがそばにいるよ?」
マルクの腕を掴みながら、そう問いかけるライム。
「そうですね、ライムや、クラリスさん、カーミラさんがいてくれるので寂しくありません!」
――トラブル続きでそれどころじゃないので。
ふとそんな言葉が頭をよぎり、マルクは苦笑いした。
「よかった…………あとね、ライムちゃんにもそんなものいないから、マルクと一緒だよ」
「そうでした、ライムはスライムでしたね」
「うん」
一般的に、スライムは分裂したり、液体に魔力が反応して生まれるとされている。そもそも、親という概念自体がないのだ。
「今まで、寂しかったですか……?」
「…………うん」
「よく頑張りましたね、ライム。さっきも、たくさん手伝ってくれてありがとうございます」
マルクはそう言って、ライムの頭をなでる。
「うん、ライムちゃん、なんでもしてあげるからね」
ライムは嬉しそうに目をぎゅっとつぶりながらそう答えた。
「だから……ずっとライムちゃんのそばにいて……? いなくなったり、しないでね」
「はい、僕は居なくなったりなんかしませんよ」
マルクは、頼られていることが少しだけ嬉しく感じた。
「――ずいぶんと仲がいいんだねぇ、お兄ちゃんたち」
「…………え?」
「ひゅーひゅー! おあついねぇ!」「お兄ちゃんとお姉ちゃん、こいびとなの?」「何でもいいけど、早く外に出ようぜ!」
「……そそそ、そうですね、早く外に出ましょうか」
子供たちに茶化されたマルクは、顔を真っ赤にしながらそう言った。
しかし、階段を登ろうとしたその時――。
「F*CK! 俺が居ねえ間に……こりゃあ、一体どういうことだ?」
通路に、大きな声が響き渡った。
「な、なに……この声!?」「うえええええええん、こわいよぉ……っ!」
「――みんな近くの部屋に隠れてくださいっ!」
マルクにそう呼びかけられ、蜘蛛の子を散らすように逃げていく子供達。
マルクとライムは、通路を塞ぐようにして身構える。
「S*IT! 冗談きついぜ……」
それからすぐ、兜を被った男が三人の手下を引き連れて階段から降りてきた。
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