無能はいらないとSランクパーティを追放された魔術師の少年、聖女、魔族、獣人のお姉さんたちにつきまとわれる

おさない

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第83話 メイド長

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「キャラが被っていますっ!」

    客室に通されて早々に、クラリスが叫んだ。

「ど、どうしたのよいきなり……」
「おお神よ!    哀れなワタクシをお導きくださいっ!」

    膝をつき、悲痛な面持ちで神に祈るクラリス。

「だから何の話なのよ……」
「ライムちゃん、お腹すいた」

    それまでの流れをぶった切り、そんなことを言い始めるライム。

「そういえば、この町に着いてから何も食べてませんでしたね」
「マルクのほっぺた……食べていい?    あーん」
「急に怖いこと言いださないでください」

    口を大きく開けて近づいてきたライムのことを、マルクは手で制した。

「すぐにお食事の準備をいたしますので、お待ちください」

   すると、近くで待機していた使用人がそう言った後、一礼をして部屋から出て行く。

「あの人……僕たちをここまで案内してくれた方ですよね?」
「ほんもののメイドさん。カッコいい……」

    ライムは、目を輝かせながら呟いた。

「おそらくそうでしょうけど、何か気になることでも?」とクラリス。

「ただ者じゃあないね……☆    気配を完全に消していた」
「あら、ルドガー。あなたも感覚は鈍っていないようね」
「ボクも、あの人だけは敵に回さない方がいいと思った……」

    ルドガー達は、口々にそんなことを言い出す。

「へ……?    も、もしかして、分かっていないのはワタクシだけですか……!?」
「クラリスさんは元々、戦いとは無縁の聖女ですから、気づかないのが普通だと思いますよ。それだけ、あのメイドさんの振る舞いが自然なんです」

   マルクは苦笑いしながら、落ち込んでいるクラリスを慰める。

「それにしても、やっぱり町の領主ともなれば、メイドも飛び抜けて優秀なのを雇ってるのねぇ」
「お、襲われたりしたらボク……負けちゃうかも……!」

    リタが身震いしながら呟いたその時。

「皆様は大切なお客様です。天地がひっくり返ろうと、背後から襲いかかるようなことはしませんので、ご安心ください」

   いつのまにか室内へ入ってきていた先ほどのメイドが、そう言った。

   リタは驚いて小さな悲鳴をあげる。

「一応ノックはしましたが……驚かせてしまったようで申し訳ございません」

   深々と頭を下げるメイド。

「ところでメイドさん、名前はなに?    ライムちゃん、知りたい」
「申し遅れましてすみません。私は、デネボラお嬢様にお使えする、メイド長のアンドレアと申します。以後、お見知り置きを」
「わかった。よろしくね、あんそにー」
「アンドレアです」

    メイド長のアンドレアは、ライムのおとぼけにも一切表情を崩さず、クールに対応する。

「それでは皆様、お食事の準備ができましたのでどうぞこちらへ」

    こうしてマルク達は、アンドレアに連れられて、屋敷の食堂へ向かうのだった。

✳︎

    食事の席には、主人であるデネボラも居た。マルク達は彼女にもてなされ、豪華な食事に舌鼓をうつ。

   デネボラの話によると、元々船に乗る予定だったのは彼女とメイド長のアンドレア、それから料理長であるフェナの三人で、そこにマルク達が加わる形になるらしい。

「でもそれなら……船の操縦は誰がするんですか?」
「良い質問ですわねマルク様。それは――」

    その後のデネボラの説明は、とても信じがたいものだった。何と船には、予め目的地まで航行するための魔術が組み込まれており、自動で進んでいくというのだ。

「そんなことが可能なんですか……?」
「技術的には可能だし、なんなら随分と前から開発が進められていたという話を私も聞いたことがあるよ☆   もっとも、実用化されていたなんて知らなかったけど☆」

   ルドガーは、ナイフでステーキを執拗に切り刻みながら言う。

「ええ、ですから、皆様に乗っていただく世界初の魔導船こそが、今回の目玉商品なのですわ!」

   そう言って両手を広げるデネボラ。話すうちに、段々と熱が入ってきたらしい。

「なのでマルク様にはぜひ、わたくしの船の乗り心地の良さと安全性を、体感していただきたいと思っていますことよ」
「なるほど、つまり有名人のマルクちゃんを広告塔にしようって魂胆ね」

   カーミラは、腕を組みながら言った。

「言ってしまえば……それも理由の一つになりますわね。もちろん、嫌であれば今からでもお断りいただいて構いませんわ」
「その際は、私共の方で別の船を手配いたします」

    デネボラの言葉に付け足すように、側へ控えていたアンドレアが言った。

「なんか大盤振る舞いって感じだね」とリタ。

「わたくし、マルク様のファンですもの」
「ふーん。まあ、ファンになっちゃう気持ちは分かるけどさ。それで、マルクはどうす――」
「ぜひ乗ってみたいです!」

   リタが聞き終わるより先に、前のめりになってそう答えるマルク。

「な、なんかすごくノリノリ……?」
「だって自動で動く船ですよ!   それも魔法の力で!   かっこいいじゃないですか!」
「そ、そうかなぁ?   ボクには分かんないかも……」

   リタは困惑した様子で言う。

「是非とも乗せてください!   ……えっと、皆さんもそれでいいですか?」
「まあ、マルクちゃんがそうしたいのなら、それで良いんじゃないかしら」
「ワタクシも、特に異論はありません」
「良いと思うよ。私としても、その魔導船とやらは実に興味深いからね☆」
「じゃあボクも異議なーし!」

   マルクに異議を唱える者はいなかった。

「決まりですわね。おほほほ、気に入ってもらえたようで何よりですわ!」

   こうして、マルク達はデネボラの魔導船に乗せてもらうことが決定したのである。

   ちなみに、ご馳走を食べて満足したライムは、ナイフとフォークを握りしめたまま気絶したように眠っていた。
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