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7.ロシア公国にひっくり返る二人 現代
健二は中間テスト初日をようやく乗り切り、明日のテストに向けてノートを開く……昼には無かったはずの最近何度かお目にかかった達筆が彼の目に入る。
<予言者殿。本当に欧州大戦とロシア革命が勃発した!>
うおお! 明日もテストだと言うのに超気になる書き込みが! 健二は頭を抱えたが、これを無視して勉強に集中できるわけがないと開き直り、父のいるリビングへ向かう。
父はパソコンでドラゴンバスターオンラインというゲームで遊んでいたが、ノートの事を告げるとすぐに興奮した様子でパソコンの電源を落とす。
「父さん、ノートの人から書き込みが来たんだよ。向こうでは欧州大戦――第一次世界大戦とロシア革命が起こったらしい」
「どこまで進んでいるんだろうな。まずロシア革命から聞いてみるか」
健二も正直ロシア革命のほうが気になっていた。アメリカが満州に入り込んだことと白軍の動きが変わったかもしれないことで史実と違う動きがあったんじゃないかと思っていたからだ。
<ロシア革命の経過があれば、教えてくれないかな?>
健二が書き込むとノートにすぐ返信が書き込まれる。
<賢者殿の慧眼恐れ入った。アメリカがまさかあれほどまでとは……>
<アメリカが? どうなったの?>
ノートに書き込まれたロシア革命の経過は驚くべきものだった。十月革命勃発前から日米は暗躍し、十月革命勃発後引き込めた白軍を連れて極東へ。バイカル湖より東の極東地域を防衛拠点とし、日米と白軍で守りに入ったそうだ。
健二と父は顔を見合わせて目を見開く。しかし、次の書き込みで彼らは声を上げてひっくり返りそうになった。
<白軍は極東にロシア公国を打ち立てた>
「なんだってー!」
健二は思わず叫んでしまう。ロシア公国って何? どんな国なの? 健二は少しパニックになってしまう。
「健二、半分にも満たないかもしれないが事前に白軍を抱き込めたのが大きい」
父は叫び声こそださなかったが、表情を見ると健二以上に驚いているように見える。
「そ、そうだけど。いくら何でも。どんな国なんだろう」
「いや、健二。俺はアメリカの力の凄さを思い知ったよ。彼らの本気に改めて……」
「政体とかはどうなってるのかな。日米の息がかかってるのか聞いてみるね」
健二は筆記を始める。
<ロシア公国はどのような国なの?>
<ロシア公国は立憲君主制の民主主義国家になる。当初白軍内で権力争いがあったが、日米支援の元白軍は一応まとまった>
やっぱりアメリカ半端ねえな……健二は思わず呟いてしまった。日本だと絶対こうはいかない。アメリカが上手く立ち回ったのだろう。
<赤軍はまだ、ロシア革命の抵抗勢力と戦争中だよね?>
<その通りだ。予言者殿。ロシア公国は一度赤軍を退けたが、いつまた攻めて来るか予断を許さない>
<なるほど。極東以外を勢力下におさめた後、赤軍――ソビエトがどう動くかなんだね。今は小康状態ってことかな>
<概ねその通りだ>
なんと白軍がまとまって政体を作っているとは。史実のシベリア共和国はまとまりが無く、結局すぐに崩壊したけどロシア公国は日米のバックアップの元きちんと政体が成立しているらしい。
公国と言うからには旧ロシア帝国の公爵が立憲君主になったってこと。白軍は民族的にロシア帝国に圧迫されていたが、赤軍と相いれなくて自らの民族の国を建国しようとした者。ロシア帝国に反発し革命に参加したが社会主義者ではない者。旧体制の権力者達や旧体制を支持する者の三つに大まかに分かれる。
彼ら白軍は最後まで一つにまとまることなく、赤軍に壊滅させられたのだが、旧体制の公爵を主と仰ぐ民主主義国家……旧体制の者たちが民主主義を受け入れ、民主主義を支持していた者たちが旧体制の人間を受け入れるというとんでもない事態だ。
これをまとめたのが日米……健二は考えれば考えるほど、この奇跡の国を信じることが出来ないでいた。
「父さん、ロシア公国ってのが荒唐無稽過ぎて……」
「そうだな。俺も信じられない。上手くいってロシア国外に亡命政権が出来る程度だと思っていたからなあ」
「亡命政権かあ。それくらいなら、ありそうだよね」
「ああ。亡命政権が外からソ連を揺さぶってくれればくらいに考えていた。史実の日本によるシベリア出兵は何も得る物が無かったから。せめてそれくらいはって」
「確かに。そもそも出兵しないって手もあったかもね」
「情勢的に難しいんじゃないか。兵力を減らすってのは出来たかもしれないが」
「そうかー。でも、いい意味で結果が出たんだね」
健二は改めてノートに記載された「ロシア公国」という文字に目をやると、再び筆記を開始する。
<北樺太はどうなったの?>
<北樺太はロシア公国から譲渡された。かの国が滅びなければ北樺太は日本の領土のままだろう>
北樺太が取れたのか。これで日本と陸で領土を接する国が無くなったってわけだ。シベリア出兵の結果、北樺太が取れるなら出兵した甲斐はあったってことか。
最も赤軍の攻勢を防ぎきるまで安心はできないけど。
<ロシア革命の事は今後動きがあったら教えて欲しい>
<承った。予言者殿。賢者殿にもよろしく伝えてくれ>
<了解!>
ロシア革命とシベリア出兵の経過は史実と大きく異なっている。今後の歴史も史実とかなり乖離してくるだろうから、こちらで今後の動きを予測する際にも史実と彼らの進んで来た経過を照らし合わせて検討する必要があるな。
健二は複雑になってきたノートの人の歴史にため息をつく。
「父さん、ここまで変わると今後の予想は難しいね」
「いや、ある程度は史実と照らし合わせれば予想は出来る。過信してはいけないけどな」
「もう俺には予測不能だよ。父さん」
「ははは。大丈夫さ健二。災害は史実と同じく起こるだろう。しかし例えば、世界恐慌などはズレる可能性はあるだろうな」
「関東大震災とか台風とかなら変わらないだろうから、伝えられるよね」
「そうだな。政治問題や経済問題なんかは、よく検討してから書き込まないとだぞ」
「じゃあ、第一次世界大戦――欧州大戦の経過も聞いてみようか」
「そうだな。まず欧州の事から聞くか。日本の事はその後に聞こう」
健二は無言で頷くと、鉛筆を握り筆記を始める。
<お待たせ。じゃあ。欧州大戦の欧州地域から聞かせてもらえるかな>
<了解だ>
ノートに書かれた戦闘経過の最初の数年間については史実と概ね変わらなかったが、オーストリア=ハンガリー帝国の降伏から史実とズレが生じてくる!
ロシア臨時政府とドイツ帝国間では史実通り休戦条約が結ばれる。この後の動きが違っていた。なんとオーストリア=ハンガリー帝国はこの時点で英仏と休戦する。イタリアがオーストリアへ攻めて来ていたけど、これも休戦となる。
この時点でオーストリア=ハンガリー帝国が脱落となると、戦後の休戦協定も大幅に変わって来るんじゃないか?
ドイツもオーストリアの救援へ兵を拠出することも無いから、英仏との戦いに影響が出ると予想されたが、史実と同じくキールでドイツ水平の反乱が起こりドイツ皇帝が退位して終戦となった。
<ありがとう。欧州の動きは分かったよ。今欧州はどんな状況なんだろう?>
<現在、パリで講和会議を行っている最中だ。ドイツ以外はある程度枠組みが決まっている>
健二は父に目をやり、口を開く。
「父さん。日本の戦闘経過も気になるんだけど、オーストリアの事を先に聞かない?」
「そうだな。オーストリアはほぼ確定しているのなら聞いておこう。ドイツはまだ決まっていないみたいだから、途中で経過報告を聞けばこちらから言えることもあるかもなあ」
二人は先にオーストリア=ハンガリーについて検討をすることに決め、健二はノートを手に取る。
<オーストリア=ハンガリー帝国の講和条件を聞かせてもらえるかな?>
<もちろんだ>
<予言者殿。本当に欧州大戦とロシア革命が勃発した!>
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<アメリカが? どうなったの?>
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健二と父は顔を見合わせて目を見開く。しかし、次の書き込みで彼らは声を上げてひっくり返りそうになった。
<白軍は極東にロシア公国を打ち立てた>
「なんだってー!」
健二は思わず叫んでしまう。ロシア公国って何? どんな国なの? 健二は少しパニックになってしまう。
「健二、半分にも満たないかもしれないが事前に白軍を抱き込めたのが大きい」
父は叫び声こそださなかったが、表情を見ると健二以上に驚いているように見える。
「そ、そうだけど。いくら何でも。どんな国なんだろう」
「いや、健二。俺はアメリカの力の凄さを思い知ったよ。彼らの本気に改めて……」
「政体とかはどうなってるのかな。日米の息がかかってるのか聞いてみるね」
健二は筆記を始める。
<ロシア公国はどのような国なの?>
<ロシア公国は立憲君主制の民主主義国家になる。当初白軍内で権力争いがあったが、日米支援の元白軍は一応まとまった>
やっぱりアメリカ半端ねえな……健二は思わず呟いてしまった。日本だと絶対こうはいかない。アメリカが上手く立ち回ったのだろう。
<赤軍はまだ、ロシア革命の抵抗勢力と戦争中だよね?>
<その通りだ。予言者殿。ロシア公国は一度赤軍を退けたが、いつまた攻めて来るか予断を許さない>
<なるほど。極東以外を勢力下におさめた後、赤軍――ソビエトがどう動くかなんだね。今は小康状態ってことかな>
<概ねその通りだ>
なんと白軍がまとまって政体を作っているとは。史実のシベリア共和国はまとまりが無く、結局すぐに崩壊したけどロシア公国は日米のバックアップの元きちんと政体が成立しているらしい。
公国と言うからには旧ロシア帝国の公爵が立憲君主になったってこと。白軍は民族的にロシア帝国に圧迫されていたが、赤軍と相いれなくて自らの民族の国を建国しようとした者。ロシア帝国に反発し革命に参加したが社会主義者ではない者。旧体制の権力者達や旧体制を支持する者の三つに大まかに分かれる。
彼ら白軍は最後まで一つにまとまることなく、赤軍に壊滅させられたのだが、旧体制の公爵を主と仰ぐ民主主義国家……旧体制の者たちが民主主義を受け入れ、民主主義を支持していた者たちが旧体制の人間を受け入れるというとんでもない事態だ。
これをまとめたのが日米……健二は考えれば考えるほど、この奇跡の国を信じることが出来ないでいた。
「父さん、ロシア公国ってのが荒唐無稽過ぎて……」
「そうだな。俺も信じられない。上手くいってロシア国外に亡命政権が出来る程度だと思っていたからなあ」
「亡命政権かあ。それくらいなら、ありそうだよね」
「ああ。亡命政権が外からソ連を揺さぶってくれればくらいに考えていた。史実の日本によるシベリア出兵は何も得る物が無かったから。せめてそれくらいはって」
「確かに。そもそも出兵しないって手もあったかもね」
「情勢的に難しいんじゃないか。兵力を減らすってのは出来たかもしれないが」
「そうかー。でも、いい意味で結果が出たんだね」
健二は改めてノートに記載された「ロシア公国」という文字に目をやると、再び筆記を開始する。
<北樺太はどうなったの?>
<北樺太はロシア公国から譲渡された。かの国が滅びなければ北樺太は日本の領土のままだろう>
北樺太が取れたのか。これで日本と陸で領土を接する国が無くなったってわけだ。シベリア出兵の結果、北樺太が取れるなら出兵した甲斐はあったってことか。
最も赤軍の攻勢を防ぎきるまで安心はできないけど。
<ロシア革命の事は今後動きがあったら教えて欲しい>
<承った。予言者殿。賢者殿にもよろしく伝えてくれ>
<了解!>
ロシア革命とシベリア出兵の経過は史実と大きく異なっている。今後の歴史も史実とかなり乖離してくるだろうから、こちらで今後の動きを予測する際にも史実と彼らの進んで来た経過を照らし合わせて検討する必要があるな。
健二は複雑になってきたノートの人の歴史にため息をつく。
「父さん、ここまで変わると今後の予想は難しいね」
「いや、ある程度は史実と照らし合わせれば予想は出来る。過信してはいけないけどな」
「もう俺には予測不能だよ。父さん」
「ははは。大丈夫さ健二。災害は史実と同じく起こるだろう。しかし例えば、世界恐慌などはズレる可能性はあるだろうな」
「関東大震災とか台風とかなら変わらないだろうから、伝えられるよね」
「そうだな。政治問題や経済問題なんかは、よく検討してから書き込まないとだぞ」
「じゃあ、第一次世界大戦――欧州大戦の経過も聞いてみようか」
「そうだな。まず欧州の事から聞くか。日本の事はその後に聞こう」
健二は無言で頷くと、鉛筆を握り筆記を始める。
<お待たせ。じゃあ。欧州大戦の欧州地域から聞かせてもらえるかな>
<了解だ>
ノートに書かれた戦闘経過の最初の数年間については史実と概ね変わらなかったが、オーストリア=ハンガリー帝国の降伏から史実とズレが生じてくる!
ロシア臨時政府とドイツ帝国間では史実通り休戦条約が結ばれる。この後の動きが違っていた。なんとオーストリア=ハンガリー帝国はこの時点で英仏と休戦する。イタリアがオーストリアへ攻めて来ていたけど、これも休戦となる。
この時点でオーストリア=ハンガリー帝国が脱落となると、戦後の休戦協定も大幅に変わって来るんじゃないか?
ドイツもオーストリアの救援へ兵を拠出することも無いから、英仏との戦いに影響が出ると予想されたが、史実と同じくキールでドイツ水平の反乱が起こりドイツ皇帝が退位して終戦となった。
<ありがとう。欧州の動きは分かったよ。今欧州はどんな状況なんだろう?>
<現在、パリで講和会議を行っている最中だ。ドイツ以外はある程度枠組みが決まっている>
健二は父に目をやり、口を開く。
「父さん。日本の戦闘経過も気になるんだけど、オーストリアの事を先に聞かない?」
「そうだな。オーストリアはほぼ確定しているのなら聞いておこう。ドイツはまだ決まっていないみたいだから、途中で経過報告を聞けばこちらから言えることもあるかもなあ」
二人は先にオーストリア=ハンガリーについて検討をすることに決め、健二はノートを手に取る。
<オーストリア=ハンガリー帝国の講和条件を聞かせてもらえるかな?>
<もちろんだ>
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