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1章
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しおりを挟む俺が3歳になった頃、隣街の奴らがメルを訪ねてやって来た。
隣街からわざわざメルを訪ねて仕事の依頼をしに来るのはあまりないことだ。
小さな街での仕事や依頼は大体街の中で済まされる。
俺の住んでる街や隣街はそこまで大きくないし、自分達の街で賄えるはずだ。
何か大変な事が起こっているのだろうか?
俺は心配になり、メルの部屋を覗きに行ったがすぐにバレて追い出されてしまった。
だがしかーしっ!
俺は一筋縄ではいかないのさっ!
ちゃっかりと精霊、忍ばせてますよっ!
闇の精霊を闇に紛れさせ聞き耳を立ててもらっている。
風の精霊に風で伝えてもらっても良かったが闇の精霊がやりたいと言うので闇の精霊に任せたのだ。
俺は家の前でメル達の話が終わるのを待つ。
数時間ほど隣街の依頼人とメルは話をしていたが、日が暮れる前には帰って行った。
内容はこうだった。
隣街に魔獣が度々出現するようになったらしい。
何度か討伐を試みたが、その魔獣はそこそこ強く、群れを成している為、怪我人を増やしただけで一切歯が立たなかったらしい。
そこで元英雄の…え?英雄?
メル英雄だったの!?
初耳なんですけどーーーー!!
って違う、まぁその話はとりあえず置いといて…
メルに白羽の矢が立ったらしい。
俺は何か嫌な予感がする。
あの依頼をしに来た隣街の奴ら…
メルは気付いてないのか気にしてないのかわからないが嫌な感じがした。
精霊達も寄り付かず嫌そうな顔をしていたと思う。
夕食時、メルは明日隣街に魔物討伐をしに行く事と内容を軽く掻い摘んで説明してくれた。
俺は勿論一緒に連れて行ってくれとせがんだが
「これは遊びじゃないんだ。」
と真剣な顔で言われてしまえば俺には出る幕もないし、黙って俯くしかなかった。
そんな俺を宥めるようにメルが優しく頭を撫でる。
「帰ったらみんなでピクニックに行こう。
な?」
だから機嫌直せってか…
わかってるよ…俺の我儘だって…。
メルだって危険な場所へ俺を連れて行きたくないだろうし、俺だってメルの立場なら反対した。
わかっててもやっぱり俺は…
「わかった…
けどとーさま…ぶじにかえってきてね…」
とりあえず頷き不安げな顔でメルを見上げる。
俺の頭を撫でるメルの手付きが少し荒くなり ぐしゃぐしゃっ っと俺の髪を乱す。
これは 大丈夫だ、心配するなって意味なんだろうな。
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