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逆ハーエンドを迎えたので砂糖を吐く覚悟をしていたのですが…①
しおりを挟む「なんか全然幸せそうじゃないな」
「は?誰が?」
季節はあっという間に巡り、俺たちはもうすぐ卒業する。
リア・ウォールマンが断罪されたのは主人公のアンナ・ロドリーが一年生の時。それからちょうど二年の月日が経った。
乙女ゲームでは攻略対象たちがそれぞれの形で主人公を愛し、一人とはくっつかずに全員と恋人になって終わる。
後日譚として攻略対象たちとの甘々な学園生活が描かれていた。
だから、乙女ゲームなこの世界でもゲロ甘なイチャコラをところ構わずお披露目されると思っていたのだが……。
「お前もそう思うだろ?」
「だから何が、って……ああ、ロドリー嬢のことか」
俺の視線の先に気づいたのか、正面の席に座っていたアレクが後ろを振り返り、得心したというように顔を顰めた。
「何?お前までロドリー嬢に心を奪われたわけ?」
「そういうわけじゃないけど」
「そういや、そうだな。お前が未だに心底惚れてるのは『ハルハドールの華』だった麗しの君だもんな」
なんだか言葉に棘を感じる。俺の従者なのに、俺以上に学園の人気を誇っているアレクはご機嫌斜めらしい。
「そういうわけでもないけど」
「彼女のことばっかり目で追いかけていたくせによく言うよ。言葉にはしなくてもお前がどれだけ彼女に強い感情を抱いていたかは見てれば分かる。あんな事さえなければ……どうとでもなっていたんだ」
アレクは何かを飲み込むようにカップの紅茶を一気に飲み干した。その様はやけになって酒を煽る中年親父のようだ。
ダンッとカップを置きアレクがギロリと俺を睨む。
「お前、くだらないこと考えてねぇだろうな」
俺の従者、ちょっとガラが悪すぎない?これでいて、人前では月花の貴公子なんて呼ばれちゃうほど出来た従者だから世の中、嫌になるよな。
そっと視線をそらした俺にアレクは小さくため息をついた。興味なさそうに毛先をいじりながら、やっと俺の質問に答えてくれた。
「……まあ、幸せかどうかは知らないけど、大変なんじゃない?第二王子との婚姻が決まったかと思ったら、彼女の周りで怪我人が続いてるんだ。死人が出てないだけマシって感じ」
そう。そうなのだ。ゲロ甘のイチャコラを延々と見せつけられると思いきや、逆ハーエンドのはずなのに何故か第二王子との婚約話が上がり、それからジャンル替えしました?と聞きたくなるくらい、サスペンスな展開が続いているのだ。
転落事故、刃傷沙汰、服毒事件、火災、エトセトラ、エトセトラ……。
被害者は全員、攻略対象だ。アレクが言ったようによく生きてるなと思うほど全員が重症を負っている。
その側にはいつもアンナ・ロドリーの姿が。
攻略対象たちが身を挺してかばったのか、たまたま側にいただけなのか。
すべての事件に巻き込まれながら、ただひとり無事だったアンナ・ロドリーが事の中心にいるのは間違いない。
にも関わらず、すべての事件は不注意、もしくは偶発的な事故として処理された。
そんな偶然あるか?と誰もが疑問を抱き、誰もがひとつの答えを思い浮かべた。
これはリア・ウォールマンの呪いではないかと。
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