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番外編(その後のお話)
黒歴史を乗り越えて③(スフレ&ガイル)
しおりを挟む優しい気遣いと視線に気づいて頬を赤く染めた。
顔も良くて、強くて、優しいなんて反則にもほどがある。
これだけモテそうなのに、まだ婚約者がいないというのだから驚きだ。
「あのさ、デリックに聞いたんだけど……」
「……?」
「そんなに可愛い顔してんのに、走るのがめちゃくちゃ速いんでしょう?」
「───ッ!!」
「聞いていて面白そうだから、会ってみたかったんだ」
確かにスフレは走るのが速かった。
他の令嬢とは比べられないくらいに……。
それは昔、マナーを無視して走り回った成果だろう。
これもまた隠したい黒歴史だった。
デリックに感謝で一杯だった心が静かに萎んでいく。
会話も少しずつ弾んできた所で、ララはまだガイルを警戒しているのか、腕を組みながら肩に座りガイルを睨みつけていた。
「ララは怒ってるの……?」
「いえ、少し警戒しているみたいです」
「……なるほどね」
ガイルはテーブルにある白い花を一輪取ると、警戒心を滲ませるララに向けて花を差し出す。
「はい、どうぞ」
『!?』
「ララはとても綺麗だね」
『っ!!』
「水の精霊は初めてみた。本当に美しいな」
ララはそんなガイルの言葉に照れているのか頬を押さえながらクネクネしている。
そして茎を折り、花を頭に付けるとガイルの指を握りながら嬉しそうに笑っていた。
「仲良くしてくれるのか?ありがとう」
ララはすっかりと気をよくしたのかカーテシーをして応えていた。
ずっとイチャイチャしているガイルとララに、ポカンとしていたが、次第に悔しくなり肩をプルプルと振るわせた。
「……私のララを口説かないで下さいっ!」
「あまりにもララが可愛いくてさ……つい」
「っ、そんなの知ってるわ!私のララは世界一可愛いもの」
そんな言葉を聞いたララが、うんうんと頷いてスフレを抱きしめる。
「ララもスフレ嬢のこと、世界一可愛いって思っているのか?」
『!!』
「……!」
「そうだな……二人とも可愛いし素敵だよ」
ララが何度も頷くのを見て、ガイルはニコリと微笑んだ。
スフレは絆されそうになるのを、ぐっと堪えていた。
(相手は王子よ!?こういうリップサービスは当たり前なの……落ち着け、落ち着くのよスフレ!!)
ララと戯れながら無邪気に笑うガイルに心臓が煩く音を立てる。
そんな気持ちを知ってか知らずか、ガイルは更にスフレに距離を詰める。
「今度、二人で出掛けないか?森の奥に綺麗な湖があるんだけど知ってる?」
「……湖?」
小さな頃にユーリンとデリックとタイラーと冒険している時に森の奥にある湖をたまたま見つけたのだと教えてくれた。
それを聞いてララが、すかさずガイルへと抱きついた。
「……ララ!?」
「ララは行きたいってさ、スフレ嬢は?」
「わ、私は……」
「とても綺麗な場所なんだ、是非ララとスフレ嬢を連れて行きたかったんだけど」
「……!」
「どうする……?」
「…………お願いします」
「そう、良かった。俺のことはガイルって気軽に呼んでくれ……俺もスフレって呼んでいいか?」
「はい」
あっという間に話が進んでしまい、ガイルに言いくるめられている気もしなくはないが、湖に一緒に行けることは単純に嬉しかった。
そんなガイルの軽快な会話に乗せられて、スフレに笑顔が戻り、いつの間にか緊張は消えていた。
「さぁて、そろそろ時間だ。挨拶に行こうか……お姫様、お手を」
「はい!」
爽やかな笑顔に流されないように必死で堪えながら、差し出された大きな手を取った。
打算的な腹黒王子と予想の斜め上をいく行動を取るスフレとの恋の始まり
end
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