異世界の裏口

千代子レイ子

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10 聖職者エミリー様

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 オリバーのお仲間さんはやはり聖職者で癒しの魔法が使えるお貴族様でした。

「す、すみません!! 貴重な癒し魔法を施して頂き、本当にありがとうございます!!」
「いえ、事情は分かりませんが、あんな幼子が毒に犯されるなんて見過ごせませんから」
「あー……、えっと、エミリー様……その、お金なんですけど、少し待ってもらえますかねぇ……」

 (!! そうだ! お金!! 私持ってないのに!)

 オリバーが気まずそうに頭をかいて苦笑いをしている姿から、かなりの高額請求なのだと分かる。

「しょうがないですねぇ」
「あっ、あの! お金はないのですが、それと同等の価値のある物でもいいでしょうか?」
「? 同等? どのような?」

 花の不審な発言にエミリー様は少し眉をひそめるが、ここは正念場だ。日本製品こちらで納得してもらう。

「えっと、エミリー様は聖職者様で外出も多いですよね?」
「? えぇ」
「では、折り畳み傘などいかがでしょうか?」
「おりたたみがさ??」
「実物を持って参ります! あっ、因みに好きなお色をお聴きしてもよろしいですか?」
「……青色が好きですが?」
「分かりました。少々お待ち下さい!」

 花は元の世界で折り畳み傘とビニール傘を購入してエミリー様の前に出した。

「これが『おりたたみがさ』ですか?」
「こちらの青い方が折り畳み傘で、こちらはビニー……透明傘です!」
「透明?」
「はい。それでは開きますね」

 ネームバンドを外して玉留めを押すと勢いよく傘が開く。

 エミリー様は傘が勢いよく開く動作にも驚いたが、ガラスのように透明な傘を初めて見てそれに驚いていた。そして重いと思っていたその軽さにビックリし、柔らかいその素材(ビニール)をいたく気に入り感動していた。
 
 次に本命の折り畳み傘を開くと、傘がこんなにコンパクトに収納出来る仕組みに唖然として、お金より全然こちらの方が価値があるととても満足していただけた。

「この透明傘は本当に素晴らしいわ! 傘で視界が遮られることもなく安全なんて! しかも片手で押すだけで傘が開くなんて画期的よ!!」

 コンビニのビニ傘と折り畳み傘で1人の幼子の命が救われたと思うと、これからはコンビニに足を向けて寝れないなと花は思った。



 それからミー君の看病をオリバーと交代で行い、ミー君が元気になるとマリーたちと一緒に遊ぶようになった。

 花はミー君の為にエミリー様を連れてきてくれたオリバーへお礼としてケーキをプレゼントすることにした。少し痛い出費だがここはちゃんとしたい。

「オリバーさん、この前は本当にありがとう。これは私からのお礼のケーキなんだけど、何が好みか分からないから適当に色々買ってみたんだ」
「えぇ!! そんなの気にしなくていいのに!」
「ミー君の命を救ったヒーローにお礼するのは当たり前でしょ? まぁ、あんまり豪華じゃなくて申し訳ないけど……」
「……ヒーロー? ……俺が?」
「そうよ。カッコいい正義のヒーロー! オリバー様ね!」
「……花……」
「さっ、選んで!」

 オリバーにケーキを選んで貰おうと箱の中身を見せると驚いて固まってしまう。

「宝石?」
「いえ、ケーキです」
「飾ってもいい?」
「腐るので食べて下さい」
「嘘だー!! こんな綺麗な物がケーキだなんて知らない!」
「美味しいですよ?」
「分かる! 分かってる!! だって匂いが美味しそうだもん!! でも勿体無くて食べれない!!」

 花はマリーたちに見つかる前にと、適当にケーキを選んで一口サイズにフォークへ刺すとそのままブツブツ言ってる、オリバーの口に突っ込んだ。

「どう? 美味しいですか?」
「………………?!!!!!」

 オリバーは花からいきなり口にケーキを入れられると、瞬間湯沸かし器かと思うほどに真っ赤になって、椅子から転げ落ちてしまった。

「……そんなに驚かなくても…………」
「いや、だって! その、あれは、やっぱり、それで……」
「? あの、ほぼ接続詞だけの会話は理解出来ないので困るんですけど……」
「………………」
「?」
「……花は、その、……俺が好きなの?」
「? 勿論好きですよ。ケーキをあーんしてあげるくらいにはね!」

 (たがらとっとと選んで食べて!! 3個しかないからマリーたちに見つかるとマズイの!!)

 花の焦りとは逆にオリバーは真っ赤なまま、うつむいてしまった。すると本能でケーキを察知したのかのこどく、向こうからマリーたちが現れて瞬く間に賑やかになってしまう。

「花ずるーい!! オリバーだけにお菓子あげるなん
て!!」
「これはミー君を助けてくれたお礼だからいいの!」
「でもずるい! マリーも食べたい!!」
「……スゴい、綺麗。宝石みたいなイチゴがある……」
「ミー君も食べりゅ!!」

 案の定、食べたいと騒ぎだして箱のケーキを取ろうとするので花は必死に死守する。たが当のオリバーは上の空でケーキのことなど視界に入っていないようだ。

「…………花、それ、マリーたちにあげて。俺はいいから」
「でも、オリバーさんのお礼なのに……」
「うん。ありがとう。その気持ちだけで十分嬉しいから……それに、今はなんと言うか……胸一杯で……」

 (ケーキのお礼だけでこんなに喜んでもらえるとは!! 今度はもっといい店のケーキをプレゼントしよう!)

 フラフラと足どり怪しく部屋を出ていくオリバーに感激していたら、早くケーキを寄越せとキッズらがうるさく騒ぐ。

「はぁ……後でオリバーさんにお礼言ってね! それと皆、手は洗ったの?」
「大丈夫! 大丈夫!!」
「駄目です! メリー! マリーとミー君の手洗いお願いしてもいい? その間にケーキ用意しとくから」
「……うん。マリー、ミー君、ケーキ食べるなら手を洗わないと駄目。行くよ」
「ちぇ、はーい!」
「ミー君、ありゃうよ!」

 こうしてオリバーのケーキは3人の子供たちのお腹に収まってしまった。
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