異世界の裏口

千代子レイ子

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閑話 アルベルトのカバン

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 アルベルトは『淀み』に行く日、花に渡したカバンの中身が信じられないほど便利で驚いた。

 まだまだ下っ端のアルベルトは隊では雑用係だ。なので集団で作る食事はまだしも寝る場所は酷いものだった。

 「テント?! 寝袋?」

 ルーベンスに頼んだのだろう。美しい字で色々説明がされているメモと共にアルベルトの無事を祈る御守りも入っていた。

「!!」

 それは昔、父親が領地に戻るたび母親が無事を祈って渡していた御守りと同じ物だった。またまたかもしれないが、それを見つけたとき母親が自分を心配して入れてくれたかのように思えてアルベルトは嬉しくて少し泣いてしまった。

 『淀み』に行く時は必ず下っ端でも遺書を書かされる。それ程危ない任務なのだ。もし、母親が生きていれば絶対反対していただろう。アルベルトは御守りを胸に仕舞い、再び説明を読む。

「えーと、人のあまりいない所で広げる?」

 言われた通り結界の端で広げると「バン!!」と言う音と共に小さなテントが出来上がった。

「おい! どうした?!!」

 音に反応した同僚が慌ててやってくると、見たこともないテントに同僚は説明を求めた。

「いや、寝る準備をしようと家の者から渡された新しい寝具かと思ったらどうやら違ったようだ」
「違ったって、何だよそのテント! テントだよな?」
「あぁ、多分……」
「凄いな、一人用テントか」

 何だか気まずいまま、寝袋という物を取り出し開けると何ともヘンテコな袋が出てきた。

「簡易マットレスの上にこれを着て寝て下さい?」
「それは何だ?」
「これを着て寝るらしい……」
「へぇ」

 心配してくれた同僚に一緒に狭いテントで寝る提案をした

「いいのか?」
「あぁ。結界は安全だが雨は防いでくれない。濡れる心配がないほうがいいだろう?」
「ありがたい」

 そうして同僚に2つ入っていた簡易マットレスを1つ貸してやって自分はマットレスと寝袋でその日は就寝した。

「……おい! 起きろ! 朝だぞ!」
「えっ?!!」

 まさか野宿で初めて爆睡してしまい、みの虫寝袋で慌てて起きるも布団と勘違いしてそのまま転げ落ちるハプニングをかますアルベルトに同僚は朝から大笑した。

「ははは! ドジだなアルベルト! 俺もお前が貸してくれた簡易マットレスのお陰で身体が朝から痛くなくて助かったよ」

 テントや寝袋を片付けながら先程の失態を早く忘れてくれと思いながら朝の準備へとかかった。




 今回の『淀み』は天候に恵まれなかった。何とか浄化は出来たものの、被害はかなり出てしまっている。部隊は一先ず嵐を避けるため大きめの洞窟に避難した。

「怪我人はこちらに運べ!!」

 上の命令通り怪我人を運べば次々と同行した魔術師が治療していく。

「この嵐じゃ、怪我が治っても飯は食べれないな」

 そう道具はあっても食材は基本現地調達をする部隊はこういう時困る。

「……3日ぐらいならあるぞ……」
「えっ?」

 アルベルトのカバンには花が朝昼晩用のご飯を沢山入れといてくれたのだ。ちなみに今回は出番はなかったが医薬品もたんまりある。

 マジックバックだからと遠慮なしにガンガン詰めたのだろうと容易に想像出来た。

「隊長! 湯の準備、出来ますか?」
「? どうした?」
「お湯さえあれば昼飯の用意が出来ます!!」
「どういうことだ?」
「家の者が今回の同行に色々準備してくれたものがあるんですが簡易飯にはお湯が必要なんです」
「……何人分だ?」
「全員分あります!」
「そうか。ありがたい。よし! 湯を沸かせ!!」

 こうしてアルベルトの為に用意したカップラーメンや携帯食料は嵐が過ぎるまで大活躍し、怪我で上手く食事が出来ない者たちにも携帯バーなどは大人気だった。

「アル! 今回はお前のお陰で随分助かった!! 正直今回、嵐の時の食事が一番旨かったよ」
「俺も! 隊長も何も言わないけどさ、たぶんアルの食事が一番旨かったと思うよ。初めて食べた時、目を開いてたし何よりずっと器離さなかったもんな」

 王都が見えてきた頃、同僚たちが嬉しさから今回の嵐について語っていた。

「でも、今回も無事に帰って来れて良かったな」
「……あぁ。今回はマジで死を覚悟したぜ」
「嵐のせいで怪我人も多かったからな……」

 アルベルトは無意識に御守りが入っている胸を握りしめていた。

「……花、ありがとう……」



 あの日花に約束通りカバンを渡して本当に良かった。花はアルベルトの為に出来るだけ多くの物を準備してくれたのだ。

 初めはマジックバックとは知らなかったらしく、顔を蒼白して慌ててアルベルトの所までやって来て説明を求めた事を思い出す。

「ちょっ、これ、何なんですか?! 質量保存の法則が仕事してないんですけど?!!」
「? 質量? 保存?」
「つまり、このカバンの量容以上に品が入る謎!!」
「あぁ。そのカバン、マジックバックですからね」
「マジックバック?」
「はい。下っ端でも軍の人間ですから支給されます」
「……なんて夢のようなカバン……」
「はは、ですよね。下っ端の俺にはあまり必要ないんですけどね」
「そんなことないです!! それならばお任せ下さい!!」

 そういって今回色々と入れてくれたお陰で助かった。帰ったら花に今回の事をお礼と共に話そう。
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