異世界の裏口

千代子レイ子

文字の大きさ
25 / 61

23 ミー君の正体

しおりを挟む
 カルロスが固まって動かないのを見ているとメリーが花の袖を引っ張った。

「? どうしたの?」
「……ミー君多分おしっこしてる……」
「えぇ?!! ありがとうメリー! オムツ替えてくるわ」

 慌てて部屋を出る時、正気に戻ったカルロスはオリバーに掴みか駆っていた。

「お前、いつの間に女作って産ませてるんだよ!!」
「いやいや、ミー君は……」

 カルロスに誤解を与えたままオリバーに心の中で謝罪する。

 日本の優秀オムツは漏れないけど気分は良くないので子供部屋の寝室で慌てて取り替えていると今度はアルベルトが声をかけてきた。

「何やら騒がしいようですが誰か来ているんですか?」
「あっ、アルベルト様おはようございます。今、客間にカルロス様が来てますよ」
「えっ? カルロスが?!!」
「はい。私はミー君のオムツを今替えてるので、オリバーさんに対応してもらってます」

 寝ているミー君のオムツ交換を済ませて再び抱っこ紐でミー君を胸に抱くとアルベルトは不思議そうにその光景を見ていた。

「とても立派な抱っこ紐ですね」
「人気No.1の物を買いましたから」
「なるほど。それにしても服装といい、その紐といい実に機能性が良い物ばかりで素晴らしいです」
「そうですか?」
「えぇ。その証拠にマリーもメリーもドレスより貴女の国の服を良く来ている」
「……なんかすいません……」
「ふふ。純粋に誉めてるんですよ。謝らないで下さい。さぁ、カルロスの所に行きましょう」

 客間に入るとまだオリバーとカルロスは揉めていた。なのに我関せずとマリーとメリーは楽しそうにケーキを頬張る。

「あっ、アルベルト!! 丁度良かった! この状況を説明してくれよ!!」
「それはこっちが聞きたい!!」

 アルベルトは溜め息をつきながらソファーに座ると、カルロスに今まであった概要を説明しだした。

「なるほど。それでこの屋敷はここまで綺麗になったんだな。シッター、ありがとうな!!」
「いえ、どういたしまして」
「それでそのミー君は一体誰か分かったのか?」
「あぁ。今日はその事もあって報告に来たんだ」
「寝ちゃったけどね」
「オリバー!!」

 全く話の腰を折らないでもらいたい。ずっとモヤモヤしていたミー君の正体が分かるのだから。

 花は始めに着ていた服装からミー君は貴族だと察している。でも幼子を毒殺しようとするくらいだ。危険ならばここで花が育ててもいいと今は思っている。

「ミー君は多分、王弟閣下のご子息だ。名前はミシェル。御年2歳になられる。そしてその……今、行方不明で捜索中だ」

 ミー君。予想外に大物過ぎた。なるほど王家のゴタゴタに巻き込まれて毒殺されそうになったのなら頷ける。王宮やはり恐い。

「そして花、先に謝ります。すみません」
「えっ? 何か怖いんですけど……」
「今日の夕方頃、王弟閣下がこちらにお越しになられます」

 花は慌てて時計の方を見ると14時50分ぐらいだった。

「!!!! ちょっ、えっ? 時間無い!!」
「本当にすみません!!」
「ひぃぃぃ!! アルベルト様、カルロス様! 今から準備がありますので失礼します!!」
「はい。宜しくお願いします」

 花はカメリアを探し、ミー君を預けると慌てて日本に戻り高級紅茶、レンチンの美味しい料理やサラダなどを片っ端から買いそろえた。

「あっ! ケーキ買い忘れた!! くっ、もうデザートはコンビニので我慢してもらおう!!」

 両手に大量の荷物を持ってメークイン男爵家に戻った花はカメリアと相談しながら食器や料理を考えた。

「大丈夫よ。生活水準は向こうのスーパーの方がレベルが高いから此方の人には美食に感じるはずよ」
「うん。一様高級スーパーで色々買ったからこれでメニュー考えてくれる?」
「まぁ、まぁ。奮発したわねぇ」
「そりゃ王弟閣下だもん。時間ないからお金でカバーするしかないじゃん!」

 涙目で愚痴るとカメリアは優しく頭を撫でてくれた。こちらと向こうの両方を知るカメリアはいつも頼りになる。今回も半分パニックになっている花に的確な指示を出して王弟閣下が来る頃には完璧に仕上がっていた。
 




「急な訪問で申し訳ないが早速、息子を確認したい」

 出迎えた王弟閣下は少しやつれてはいたが素敵な美丈夫で花は緊張もあってか固まってしまった。

「?」
「花!!」
「はっ! えっと、ご、ご案内致します!!」

 数人の護衛と共に客間へ案内すると先程目が覚めて、凄く元気に遊んでいるミー君とマリーたちがそこにいた。

「ミ、ミシェル……」
「? あっ!! おとしゃま!!」

 ミー君は久し振りに父親を見ると一目散に走っていった。王弟閣下も最愛の息子が元気に駆けて来るのを受け止める。

「あぁ。ミシェル。ミシェル。良かった。本当に生きている……」
「あんね、ミー君ね、マーちゃとね、メーちゃとあしょんでるの!!」
「そうか。そうか」

 涙を流しながら息子の可愛い会話に相づちを打つその光景に花も少し感動して目に涙を浮かべていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】灰かぶりの花嫁は、塔の中

白雨 音
恋愛
父親の再婚により、家族から小間使いとして扱われてきた、伯爵令嬢のコレット。 思いがけず結婚が決まるが、義姉クリスティナと偽る様に言われる。 愛を求めるコレットは、結婚に望みを託し、クリスティナとして夫となるアラード卿の館へ 向かうのだが、その先で、この結婚が偽りと知らされる。 アラード卿は、彼女を妻とは見ておらず、曰く付きの塔に閉じ込め、放置した。 そんな彼女を、唯一気遣ってくれたのは、自分よりも年上の義理の息子ランメルトだった___ 異世界恋愛 《完結しました》

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

処理中です...