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24 王弟閣下とミー君
しおりを挟む「この度は息子を助けてくれて感謝する。しかもこんなに元気に遊んでいるとは思わなかった。本当に……うっ、うっ……」
相当嬉しかったのだろう。感謝の言葉も最後まで言えず、また涙を流して嗚咽する王弟閣下に周りはハラハラした。
「大丈夫? あんまり泣いてるとお目目が真っ赤に腫れちゃうよ? マリーはねそういう時、皆に話すの。それでね美味しいご飯を食べると涙とか悲しい事とか忘れちゃうの!」
「……大人はあんまり泣けないんだよね」
「じゃ、ここでいっぱい泣きなよ! そしたらスッキリするから! ね?」
「……メリーがよしよし撫でてあげる」
王弟陛下へ物怖じせず、側で励ます双子にアルベルトたちは真っ青になった。慌てて止めようとするも、王弟は優しく首を振る。
「……そうか。そうだな。君たちはミシェルの友達かな?」
「そうよ! マリーがミー君を見つけたの! でもね毒でゲーゲーしてて可哀想だったよ」
「?!! 何?! 毒だと!!」
マリーの口から暗殺を仄めかす毒と言うキーワードが出ると王弟や周りの騎士たちの目の色が変わり緊張が走る。
「そう! 始めは風邪かと思ったんだけどオリバーがおかしいって言って聖職者のお姉さんを呼んで助かったの。花が聖職者のお姉さんにありがとうって宝物を渡してお礼してたんだよね!」
「……なんと……そうか。そんなことがあったのか……」
王弟はマリーの話を聞き終わるとこちら向いて頭を下げた。
「何から何まで感謝しかない。しかも大切な宝を渡してまで見ず知らずの息子の命を救ってもらい、お礼の言葉もない」
「いえ、いえ、閣下どうか頭をお上げください!」
アルベルトの後ろで黙っていると王弟と目があった。
「……そちらの女性が息子を救ってくれたのか?」
「……「はにゃ!!」「そうだよ!」
どうしようか迷ってると、つかさずミー君とマリーが被せてきた。
「ありがとう。ありがとう……この礼は必ずしよう!!」
美丈夫のイケメン王弟閣下にいきなり手を握られて花は真っ赤になってしまう。それを横目にオリバーは小さく溜め息をこぼしている。
「ねぇ、はにゃ、ミー君おにゃかすいたー」
感謝している父親の腕の中でマイペースに自分の欲求を求めるミー君に花も王弟閣下も苦笑するしかなかった。
「ではミシェル、城に帰ろうか」
「やっ! ミー君ご飯たべりゅの!!」
「だから城で……」
「やー! はにゃー……わーん!!」
まだ2歳児のミー君に我慢は無理だ。王弟は泣き出した愛息子にあたふたするしかない。
そんな様子を微笑ましく思いながら、花は泣き止まないミー君を王弟に目配せしてから抱き上げてなだめた。
「夕食は用意してありますので、少し早いですが宜しければ閣下もお召し上がりになりませんか?」
「……すまない……」
「ミー君、今日はハンバーグのお子様ランチだよ。だからもう泣かないで」
「!! おこちゃんち!! ミー君大しゅき!!」
「うん。お子様ランチいっぱい食べようね!」
お子様ランチの一言にミー君の機嫌はすぐに良くなった。王弟は花と2人楽しそうにお喋りをする息子の様子にまた泣きそうになってしまう。
「…………花令嬢、それは一体何なんだ?」
「? えっと、何とは?」
「はにゃ、はにゃ! ハンニャーグ!!」
「あっ、はい。はい」
小さいミー君専用のベビーチェアーにお気に入りの可愛らしいプレートでお子様ランチを据える。手に小さいフォークを持っているが食べさせているのは花なのでこれは飾りに等しい。
そしてこれがいつもの光景なのだが王弟にはその全てが不思議に映る。
「その息子に着けてるエプロンは、えー、……変わっているな……」
「あぁ、これは子供用のお食事ポケット付きエプロンになります。このポケットが付いてることで、こぼしても汚れないので助かっております」
「なるほど……」
「こえね、ミー君のなの! かあいいね!」
ミー君はお気に入りのエプロンを父親である王弟に可愛く説明をする。すると嬉しそうに王弟も「そうか、そうか」と優しく頷く。
そして王弟は出された料理より、息子の食べる様子が気になるようで終始花に質問していた。しかも食べ終わった後も息子の座っていたベビーチェアーやエプロン、食器などを観察し、とても驚いていた。
「本日は急な訪問にもかかわらず、ここまでもてなしてもらい感謝する」
「こちらも、ミー君がミシェル様と分かり安心しました」
「閣下、そろそろ参りましょう。ミシェル様が寝ているうちに城に戻らなければ……」
「あぁ。では失礼する」
夕食を食べた後ミー君はマリーたちと遊んでいるうちに眠くなり花に甘えるように抱き付くとそのまま寝落ちしてしまった。
アルベルトは寝ているうちに城に戻ったほうがいいと王弟に告げ、花は王弟の腕の中にミー君をそっと降ろす。
そして挨拶をすませるとそのまま鳥車に乗って王弟妃がいるこの領地の城へと戻って行った。
「なんかあっという間だったなぁ……」
「まさかミー君が王弟の息子だったとはねぇ」
「……今更私の方が寂しくなってきちゃった……ミー君は両親の元に帰れたのに……」
「泣くなら胸を貸しますよ? お嬢さん!」
「……もう、オリバーのバカ!」
花は遠ざかって行く鳥車を薄寂しい気持ちで見送った。
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