27 / 61
25 ルーベンス
しおりを挟むミー君達が城へ帰った後、オリバーは花にルーベンスの事を聞いた。
「そういえばルーベンスは今日居なかったけど何かあった?」
「実家に戻っているの。色々書類の整理があるらしくて」
「ふーん。でもルーベンスは当主様だよね? アルベルトが雇っているとしてもここに居ていいの?」
「いいんですよ!! それに男爵位は返還しましたから!」
「わっ!!」
花との会話に後ろからルーベンス本人が登場してオリバーは驚いてつい大声を出してしまった。するとその態度に気分を良くしたルーベンスは笑顔で花に帰宅を報告する。
「ただいま戻りました」
「お帰りなさい。ルーベンスさん。夕飯はもう食べましたか?」
「いえ、まだ」
「では、中でゆっくり食べて下さい。今日はちょっと豪華なんですよ! その理由も色々報告しますね」
花は笑顔でルーベンスの帰宅を喜びながら食事の話をするとそのまま屋敷に2人で戻って行く。それを後ろから慌ててオリバーが追いかけた。
「ちょっ、置いてくなよ!!」
花が食事の用意をしている間、ルーベンスはオリバーにミー君と王弟の話を聞いていた。
「なるほど。行方不明のミシェル王子は家のミー君だったんですね」
「まぁ、貴族が関係しているとは薄々気付いてたけど、まさか王族だとは思わなかったよ」
「それはそうでしょう。偶然でもこのお屋敷の庭にいるとは思いません」
ミー君の命は本当に偶然に偶然が重なった奇跡だった。1つでもこのパーツが抜けていたらきっと助からなかっただろう。そしてそれはミー君だけじゃない。双子のマリーとメリー、そしてルーベンスもだ。
「お待たせしました! どうぞ暖かいうちに食べて下さい」
そう、花。全ては花がいるお蔭で皆、助かっているのだ。本人はそんな自覚は無いだろうが……。
「? どうしました?」
「いえ。頂きます。ありがとうございます。花様」
「はい。召し上がって下さい!」
笑顔で答える花にルーベンスの心は満たされて行く。花と出会ってから苦労がないのだ。特に王都へ来てからはいつも心が休まる時さえなかったので兄妹2人、辛くとも頑張ってささえあってきた。
「……とても美味しいです……」
「良かった! ルーベンスさんは好き嫌いないですけど、チーズは好物ですよね? このチーズ変わってるけど、どうですか? お口に合います?」
「はい。スモークの香りとチーズがとても合います」
「このワインと合うよな!」
「ふふ。良かった」
オリバーは花が向こうで買ってきた『いぶりがっこチーズ』をつまみに赤ワインを開けていた。
「オリバー、あまり飲み過ぎて花様に迷惑かけないで下さいよ」
「そう言うルーベンスだって結構飲んでるじゃん」
「嗜み程度です」
「随分量が多い嗜みですね!」
じゃれ合う2人に花はコンビニのアイスクリームを振る舞った。
「あっ! アイス!」
「寝ている双子たちには秘密ですよ?」
「勿論です」
食後の冷たいアイスを方張ると2人とも自然と笑顔になる。
「……私は花様と出会ってからずっと幸せなので、最近少し怖いです」
「あっ、それ分かる。俺も幸せ過ぎるとここが頂点かと思って怖くなるな!」
ルーベンスはアルベルトと話し合い正式に此方へ妹と共に引っ越して来た。元住んでいた屋敷も母親に頼み売り払ったのでこれでもうルーベンスとカメリアは平民だ。
別に男爵と言う位に未練はない。だがルーベンスは痛いほど知っていることがある。それは自分の大切な者を守る為には権力と言う武器は強いことに越したことはないと身に染みて理解している。だから男爵より協力な権力は欲しいとは思っていた。
頭のよいルーベンスは相手が自分の美しさをどう思っているかもちゃんと理解しているし、それによってカメリアが巻き込まれることをとても恐怖していた。だからこの屋敷で隠れて双子たちの講師を住込で出来ることは願ってもない幸運でしかないのだ。
「……貴女が私の女神ですよ……」
アイスを食べ終わり小さく呟く。花は大袈裟だなぁっと笑っているがルーベンスには事実でしかない。
ルーベンスは自室へ戻る前にパソコン部屋に寄る。もうほぼこちらの方が自室みたいなものでもあるが……。
「このパソコンも花様のお蔭で知り得ることが出来た」
電源を入れてルーベンスはいつも通り勉強をする。花の世界とはある程度違いはあれど、かなりの知識をこの箱から貰っているのは有難い。
「花様、貴女には本当に感謝しかないのです」
ルーベンスは1人パソコン画面を見つめるとマウスを動かした。
花は自室で少しミー君を思い出していた。最後に別れたのは寝ている間のこと。
「泣いてないといいなぁ……」
短い間だったけどミー君が城に戻り、もしかしたら今いる皆もその内ミー君のように在るべき場所に帰るかもしれないと思うと、この泡沫の出会いも大切にしようと思う花だった。
10
あなたにおすすめの小説
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
【完結】灰かぶりの花嫁は、塔の中
白雨 音
恋愛
父親の再婚により、家族から小間使いとして扱われてきた、伯爵令嬢のコレット。
思いがけず結婚が決まるが、義姉クリスティナと偽る様に言われる。
愛を求めるコレットは、結婚に望みを託し、クリスティナとして夫となるアラード卿の館へ
向かうのだが、その先で、この結婚が偽りと知らされる。
アラード卿は、彼女を妻とは見ておらず、曰く付きの塔に閉じ込め、放置した。
そんな彼女を、唯一気遣ってくれたのは、自分よりも年上の義理の息子ランメルトだった___
異世界恋愛 《完結しました》
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる