異世界の裏口

千代子レイ子

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25 ルーベンス

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 ミー君達が城へ帰った後、オリバーは花にルーベンスの事を聞いた。

「そういえばルーベンスは今日居なかったけど何かあった?」
「実家に戻っているの。色々書類の整理があるらしくて」
「ふーん。でもルーベンスは当主様だよね? アルベルトが雇っているとしてもここに居ていいの?」
「いいんですよ!! それに男爵位は返還しましたから!」
「わっ!!」

 花との会話に後ろからルーベンス本人が登場してオリバーは驚いてつい大声を出してしまった。するとその態度に気分を良くしたルーベンスは笑顔で花に帰宅を報告する。

「ただいま戻りました」
「お帰りなさい。ルーベンスさん。夕飯はもう食べましたか?」
「いえ、まだ」
「では、中でゆっくり食べて下さい。今日はちょっと豪華なんですよ! その理由も色々報告しますね」

 花は笑顔でルーベンスの帰宅を喜びながら食事の話をするとそのまま屋敷に2人で戻って行く。それを後ろから慌ててオリバーが追いかけた。

「ちょっ、置いてくなよ!!」


 花が食事の用意をしている間、ルーベンスはオリバーにミー君と王弟の話を聞いていた。

「なるほど。行方不明のミシェル王子は家のミー君だったんですね」
「まぁ、貴族が関係しているとは薄々気付いてたけど、まさか王族だとは思わなかったよ」
「それはそうでしょう。偶然でもこのお屋敷の庭にいるとは思いません」

 ミー君の命は本当に偶然に偶然が重なった奇跡だった。1つでもこのパーツが抜けていたらきっと助からなかっただろう。そしてそれはミー君だけじゃない。双子のマリーとメリー、そしてルーベンスもだ。

「お待たせしました! どうぞ暖かいうちに食べて下さい」

 そう、花。全ては花がいるお蔭で皆、助かっているのだ。本人はそんな自覚は無いだろうが……。

「? どうしました?」
「いえ。頂きます。ありがとうございます。花様」
「はい。召し上がって下さい!」

 笑顔で答える花にルーベンスの心は満たされて行く。花と出会ってから苦労がないのだ。特に王都へ来てからはいつも心が休まる時さえなかったので兄妹2人、辛くとも頑張ってささえあってきた。

「……とても美味しいです……」
「良かった! ルーベンスさんは好き嫌いないですけど、チーズは好物ですよね? このチーズ変わってるけど、どうですか? お口に合います?」
「はい。スモークの香りとチーズがとても合います」
「このワインと合うよな!」
「ふふ。良かった」

 オリバーは花が向こうで買ってきた『いぶりがっこチーズ』をつまみに赤ワインを開けていた。

「オリバー、あまり飲み過ぎて花様に迷惑かけないで下さいよ」
「そう言うルーベンスだって結構飲んでるじゃん」
「嗜み程度です」
「随分量が多い嗜みですね!」

 じゃれ合う2人に花はコンビニのアイスクリームを振る舞った。

「あっ! アイス!」
「寝ている双子たちには秘密ですよ?」
「勿論です」

 食後の冷たいアイスを方張ると2人とも自然と笑顔になる。

「……私は花様と出会ってからずっと幸せなので、最近少し怖いです」
「あっ、それ分かる。俺も幸せ過ぎるとここが頂点かと思って怖くなるな!」

 ルーベンスはアルベルトと話し合い正式に此方へ妹と共に引っ越して来た。元住んでいた屋敷も母親に頼み売り払ったのでこれでもうルーベンスとカメリアは平民だ。

 別に男爵と言う位に未練はない。だがルーベンスは痛いほど知っていることがある。それは自分の大切な者を守る為には権力と言う武器は強いことに越したことはないと身に染みて理解している。だから男爵より協力な権力は欲しいとは思っていた。

 頭のよいルーベンスは相手が自分の美しさをどう思っているかもちゃんと理解しているし、それによってカメリアが巻き込まれることをとても恐怖していた。だからこの屋敷で隠れて双子たちの講師を住込で出来ることは願ってもない幸運でしかないのだ。

「……貴女が私の女神ですよ……」

 アイスを食べ終わり小さく呟く。花は大袈裟だなぁっと笑っているがルーベンスには事実でしかない。



 ルーベンスは自室へ戻る前にパソコン部屋に寄る。もうほぼこちらの方が自室みたいなものでもあるが……。

「このパソコンも花様のお蔭で知り得ることが出来た」

 電源を入れてルーベンスはいつも通り勉強をする。花の世界とはある程度違いはあれど、かなりの知識をこの箱から貰っているのは有難い。

「花様、貴女には本当に感謝しかないのです」

 ルーベンスは1人パソコン画面を見つめるとマウスを動かした。



 花は自室で少しミー君を思い出していた。最後に別れたのは寝ている間のこと。

「泣いてないといいなぁ……」

 短い間だったけどミー君が城に戻り、もしかしたら今いる皆もその内ミー君のように在るべき場所に帰るかもしれないと思うと、この泡沫の出会いも大切にしようと思う花だった。
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