異世界の裏口

千代子レイ子

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32 この世界は……

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 そうこうしているうちに花はまた城の茶会に呼ばれることになり、今度こそドレスで参加しようと意気込みを入れていたら……

 ー 茶会には着物で来ること! ドレスは無しよ ー

 ちゃんと指定されてしまった……。

 今回もカメリアと一緒に着物・・で登城すると案内人の前にきらびやかな男性が現れ、何故か花を上から下まで確認すると鼻をならした。

「お前があいつのお気に入りと言う異国の姫か……」
「? 異国の姫?」
「確かにそのドレスは初めて見ても美しいし、その髪型にある装飾も珍しく目を引く。あいつが気に入るのも分かる」
「?」
「だが!! 珍しいだけだ! 可愛い顔にその髪型と髪飾りがあるから引き立つだけで、お前自身はあいつの玩具なだけなんだからな!」

 目の前のきらびやかなイケメンは、花に嫌味な忠告をしたいようなのだが着物マジックのせいかツンデレみたいな可愛い言い分になってしまう。

「……クス。ありがとうございます」
「?! はぁ? 何故、礼を言う!!」
「? 可愛いと誉めてくれたではありませんか。それにこの髪飾りはお気に入りですからそれが似合っていると言われれば嬉しいですよ」
「?!!!!」

 花が可愛らしく微笑めば、きらびやかなイケメンは真っ赤になって挙動不審な動きを見せる。

「あの、この方はどなたですか?」

 カメリアは案内人に小声で尋ねると『第二王子殿下』だと言う。これは不敬になってまずいと何とか花に伝えようとする前に第二王子殿下はその花の腕を掴むと、急にその場からそのまま2人消えてしまった。

「?!! 花ちゃん!!!」
「!! 殿下!! はっ! も、申し訳ございません!!」

 つかさず第二王子殿下の護衛が謝辞してくれたがカメリアは花の行方が気になってしかたない。

「花は何処に連れていかれたのですか!!」
「城内だとは分かるのですが特定には少し時間が掛かります」
「少しとはどのくらいですか! 曖昧な時間表示ではなく具体的な時間を示してください!!」

 第二王子殿下とはいえ、まさか花が連れ去られるなど予想外の出来事で周囲はあわてふためいていた。





 その頃誘拐? された花は薄暗い部屋にいた。

「えっ?!! どういうこと?!」
「転移だ。お前に見せたいものがある。ついてこい!」

 通された小部屋には気持ち悪いほどの皇太子妃殿下の肖像画などが所狭しに飾られていてまるでストーカーの部屋みたいで恐怖さえ感じた。

「言いたいことは分かる。……不気味だろう? 俺も見付けたときは青ざめたよ。だがな真相はここにあるんだ!」
「……真相?」
「俺が無理矢理禁じられている転移魔法を使ったのもこれをお前に見てもらいたいからだ」

 渡された本は随分古く所々表紙が剥げていた。なので丁寧に本を開くとそこには日本語・・・が書かれていた。

「えっ……」
「まぁ、驚くだろうな。その実物みたいな絵はお前と同じ異国の人間なのだろう?」
「へっ?」
「違うのか?」
「いえ、その絵はないのですが……」
「何?!!」

 そっと本を差し出すと慌ててページをめくるイケメン誘拐犯は「無くなっている?!」と独り言を呟くとみるみる真っ青になっていく。

「そんなに重要な絵だったのですか?」
「いや、絵も確かに人物その者そっくりでビックリしたのだが……これは全くの別物だ。表紙は同じだが中身は俺も知らない……こんな文字見たこと無いぞ……」
「えっ?!」
「何なんだ?!」

 相当混乱しているのだろう。その場にしゃがみこみ、頭を抱えながら何やらブツブツ言い出した。

 (とりあえず、この隙にこの本を読んでみよう)

 誰かが書いた日本語の日記に目を通すと今度は私が頭を抱えたくなるような話がそこには書かれてあった。



『○月△日

 私は王家の鈴蘭に転移なのか転生なのかバグなのかは分からないが囚われてしまっているのは確かだと思う。

 初めは嬉かったけどもう無理だ。何をしても私は殺される。悪役令嬢の下克上なんて夢のまた夢なんだと痛感した。だからそろそろ解放してほしい。心がまだ自我を保つ間に。

 殿下、もう貴方のことを忘れます。もう自己中心的に誰も助けず生き延びたい。それでも駄目なら一番辛くない一瞬の死を目指そう。

 本来の悪役令嬢様ごめんなさい。こんなに辛いとは知らずに貴女を毎回役割だとしてもゲーム内で酷い目に遭わせてごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、許して下さい。助けて下さい。誰か! 誰でもいい! お願いします! 私を解放してください!!


 ○月△✕日

 今日は絶対死ぬ。でもいい。今日の死は一瞬で済むから。爆発だと眩しいのと弾ける痛みの前に記憶が無くなっているから即死。暗殺だったとしてもプロだから熱い?って思った瞬間に事切れているから本当に有難い。プロの仕事に感謝します。

 シロートだったら激痛のうちに絶望と共にじわじわ死ぬことになるからこれでいい。今日まで頑張って良かった。これが一番辛くない死だから。たぶん次があったら私は壊れてるだろうな。

 よく小説で何百回死に戻りとかあるけど、やっぱりフィクションだね。酷い死を体験したら死に戻りした瞬間に発狂してそこから記憶は曖昧だもの。相当鋼の精神を持っていてもせいぜい5回くらいじゃないかな。それも即死込みじゃなきゃね。精神崩壊は一回の死に戻りでもあるよ。

 これは呪いだもの』

 ここで日記は終わってた。花は恐ろしくて気を失いそうになった。
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