異世界の裏口

千代子レイ子

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34 花の引っ越し?

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「花ちゃん!!!!」

 数時間ぶりに会ったカメリアは花に抱き付くとその安否を確かめた。

「身体は大丈夫? 何もされてない? 言いづらかったら後でもいいからね?」
「いやいや、何もなかったよ! 第二王子とは知らなかったけどちゃんと紳士でした」
「本当に?」
「うん。第二王子は全然平気・・・・・・・・・だった!」

 (そう、問題は皇太子殿下の方だから。私をキーマンって言うけど、私目線では貴方がキーマンですよ!!)

「そう。良かったわ。私も先ほど妃殿下にも謝られたの」
「じゃ、今回はこのままお暇した方が賢明だよね」
「えぇ。そうね」

 こうして茶会を後日にして私達は帰ることにした。

 (行き帰りが鳥車だから疲れるんだよね。きっと車なら飛ばして1日で着くんだろうなぁ……。新幹線ならもっと早いかな? まぁ、それでも城から貸し出してくれた高級鳥車だからそんなに文句言えないけど)

「……私、これからどうしようかなぁ……」
「? 何が?」
「あのね初めは双子が心配だったから保護者的立場でこっちにいたの。でも今はカメリアたちがいるでしょ? なのである意味役目は終わったのかなって」
「向こうの世界に帰るの?」
「……迷ってる。生活は向こうの方が安全だし快適だよ。でも会えないと思ってたおばあちゃんに会えたし、こっちの皆も大好きだから『じゃあね!』と簡単には割り切れない。それにオリバーも大切な人だから……」

 (後、この世界の謎を残したまま向こうに帰るのもモヤモヤして嫌だ)

「そうね。こちらとあちらの扉がいつまで開いているか分からないものね」
「!! 確かに!! そうだ! もしこちらに残っても困らないよう帰ったら色々持ってこなきゃ!!」
「あらあら……」

 鳥車酔いと格闘しながら必要な物を思い出してはメモすると言う作業をしている内に屋敷に着いた。

「宿で書けば良かったのに……」

 (泊まる宿では疲れで爆睡するから無理です! それに思い出した時にメモらないと忘れるじゃん!)


「「お帰りなさい!!」」

 双子に出迎えてもらいやっと我が家に着いた気持ちになれた。そこにミー君がいないのは少しだけまだ寂しいけれど……。

「今回は早かったね」
「ちょっと事件にあったから」
「!! えっ! 泥棒?!」
「泥棒?」
「……今、マリーは探偵本にはまっているの」
「なるほど」
「犯人は現場に戻る!!」
「……教授、本当ですか!」
「あぁ、私に着いてきたまえ!!」

 マリーたちはそのまま探偵ごっこを始めて庭の方にかけていった。

「ふふ。懐かしいわね。よく子供たちもあんな風にしてたわ」
「お父さんが?」
「えぇ。そっくりよ」

 幼子たちの後ろ姿を見送るカメリアはではなく自分の子供たちを思い出したような表情で郷愁に駆られているようだった。



 それから暫くは私の引っ越しが忙しく大変だったが、何故かオリバーとルーベンスがニッコニコで手伝ってくれたので案外楽に終わり助かっている。

「ここに図書室があって助かったー!! 結構本を買ったから収納場所で困ってたんだよね」
「花もこっちで暮らす事に決めたんだね!!」
「へっ? 何で?」

 オリバーにしてみたら城から帰っ来て、いきなり花が引っ越しを始めれば何かあったかと思うのも仕方ない。

「何でって……引っ越しだよね?」
「あぁ、それはね、もしこっちにいる時に扉が消えたりしたら困るでしょ? だからもしもの保険として持ってきただけだよ」
「なんだ。俺の嫁になる決意がついたのかと思ったのに」
「えぇっ! 嫁?!」
「最終的にはそうでしょ?」
「……なんか最近オリバーってへルマンに似てきたね」
「!! あそこまで酷くない!!」

 (オリバーにも酷いと言われるへルマンって……)

「あっ、そう言えばそのへルマンから手紙を預かってたの忘れてた!」

 オリバーから渡された手紙は、とてもへルマンからとは思えない可愛らしい封筒。

 (きっと奥さんから貰ったな。まぁ、あいつがこんな可愛らしいレターセット持ってたら持ってたで恐いけど……)

 何となく可愛らしい手紙を丁寧に開けて読む。

「………………」

 くしゃ。

「えっ! どうしたの?!」
「これは手紙じゃなくて手ゴミだった……」
「てごみ?」

 花はオリバーにグシャグシャにした手紙を渡す。

「…………あいつ……殺す……」
「ちょ、気持ちは分かるけどダメだよ! あいつは本能に忠実な馬鹿なんだから! 怒るだけ労力の無駄!!」

 手紙に書かれていた内容は……

『花様! こっちに引っ越すんだって? ならよ、嫁さんに似たエロ本持ってきてくれよ! 異世界のエロも勉強してぇんだ! 50冊ほどあればいいからよ! 頼んだぜ!! 俺の趣味はー……』

 さすが下半身に正直な男である。お嫁さんから貰ったであろう可愛らしい便箋が不憫でならない。
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