異世界の裏口

千代子レイ子

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38 カルロス様の想い人の父親は元入居者

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「青春ですね……」

 いろんな品種のさつまいも天使の涙を渡しながらポツリと呟くとカルロスは「やめろ!」と慌てる。

「すいませんね。4つしか品種が無くて」
「いや、十分だ。20個とかあったら逆に困る」
「一様、拙い私の字ですが名前と詳細を芋の上に貼っときました」
「分かった! 助かったぜ!」



 それで今回の話は終わりだと思っていた。

「おーい! シッター!! どこにいるー!!」
「? あっはい! 今、向かいます!」

 珍しくカルロスからまた呼ばれたので、サツマイモ関連かと急げば手紙を渡された。

「……あいつの親父から……」
「はっ?」
「いや、気持ちは分かる! 俺も何で? って思ってるからさ。でも他人の手紙を読むわけにもいかないだろ?」

 こうしてカルロスの想い人と思われる父親・・から何故か手紙を貰った。

「…………ところでカルロス様はどこまで付いて来るんですか?」
「べっ、別に行く方向が一緒なだけだろ!」
「…………でもここから先、私の部屋とトイレしかありませんよ?」
「!! えっ、あっ、そう! トイレに行きたかったんだよ!!」
「……はぁ。分かりました。そう言うことにしておきますよ」
「…………」

 本人も分かっているのだろう。花の部屋までの道のりにはトイレなど何個もあった。わざわざここのトイレを使う意味なんてないのだ。

 きっと好きな子の父親からの手紙に何が書いてあるのか知りたくてしょうがないのだろう。

「安心してください。カルロス様のことが書かれていたらお教えしますから」
「?!! なっ、べっ、別に頼んでねぇよ!!」

 図星だったらしく、カルロスは顔を真っ赤にして来た道を全力疾走していった。

「……甘酸っぱいなぁ……」




 部屋で自分作成辞書を片手に手紙を開封すると、そこには驚いたことに日本語の文字がびっしりだった。

「えっ?」

 唖然とすると共に既視感もある。

 (何か最近、これと同じようなことなかったっけ?)

 1人考え込んでいると、ふと机の端にある茶会招待状が目に入った。

「そういや、また城から来たんだっけ……。もう、暇なの? そろそろ面倒くさいんだよねぇ……」

 その瞬間思い出した。手紙の既視感はへルマンの奥さん、皇太子妃殿下の日記。

 彼もまたこのゲームの関係者なのかもしれない。

 花は一先ず深呼吸して気合いを入れてから読んだ。



『シッターさんへ

 私は日本でサラリーマンをしていた男です。突然の手紙に驚かせてしまい、本当に申し訳ありません。ですがどうかお願いしたいのです。もしあなたが日本へ帰れるのなら、下記の住所に手紙を送ってもらいたいのです。』

 そうして住所は2つあった。1つは勿論知らないが、もう1つはよく知るお婆ちゃん家の住所。

 (……まさか……この人1番初めに消えた行方不明の方?!)

 名前をちゃんとは覚えていないがお婆ちゃん家に住んだ男性は1人しかいないので、たぶんこの人なんだろう。

 (けど今、家主私なんだよねぇ。伯父さんも行方不明だし、この場合は私なんだろうか? ……読んでいいのかな?)

 少し戸惑いがあったので先にもう1つの手紙をポストに投稿することにした。律儀にもこちらのお金で切手代が同封してあり、これを見ても日本人らしいと感じた。



 手紙を日本で投函してからお婆ちゃんことカメリアに相談した。すると荷物のことかも知れないから早く読んだ方がいいと言われて、もう1つの手紙を開けた。

 内容はカメリアの言う通り荷物のことだった。そして家賃やお金に関する後始末についての謝罪も書かれていた。

「わぁ……すごく真面目な人なんだなぁ。詳しくは書いてないけどきっと仕事を放棄するような人じゃないから、こっちに来たのも偶然なのかも」
「きっと、そのまま帰れなくなったんでしょうね……」
「でもカルロス様の想い人のお父さんなんだよね? つまり結婚はしてるんだ」
「そういえばリナさんも結婚しているわ。もしかしたら結婚が向こうとこちらを繋ぐ扉が消える原因なのかしら?」

 (その理論で行くとお婆ちゃん家にいた行方不明者は全員こちらに来て結婚してるってこと? 少なくとも子供はいるから紙だけとかの上辺じゃないことはわかる)

「……伯父さんもこっちで結婚してるのかな……」
「…………どうかしらね」

 伯父さんの話題を出した途端にカメリアの顔は暗くなった。昔から小悪党だったらしい伯父はおじいちゃんが亡くなってからは更に酷くなったらしい。

「元気でいればいいわ。私はもう亡くなってしまったから何も出来ないもの」

 (私視点ではろくでもない伯父だったけと、カメリアお婆ちゃんにとっては大切な息子に変わり無いもんね)

「……最後の1人もこっちにいるのかなぁ……」

 窓の景色を見ながら何気無く呟いた。まさか隣国で聖女件王妃なんて凄いことやっているとはこの時は思わず……。
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