異世界の裏口

千代子レイ子

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40 クリスマス

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「栗山のパーティーや劇が勝つとかどうしてるって聞いてて、あと2つのそういうみその懐かしくなったりするかって!」

 探偵マリーの報告が難解過ぎて大人たちはフリーズする。

「……えー、では助手のメリーさんはどう聞こえましたか?」
「……くりすますパーティーやしょうがつはどうしてますか? やりますか? あと、にほんのしょうゆやみそはやっぱりなつかしくおもいますか?」

 マリーの通訳は助手メリーがいないと成り立たないことが証明された。それにしてもメリーの瞬間記憶力は目を見張るものがある。

「? やっぱりよく分からん……」
「私たちのお祭りはこっちにきてもやりますか? 後私たちの国の調味料は懐かしく思いますか? ……そんな感じの会話ですね」
「お祭りに調味料の話かよ!」
「ちなみにクリスマスは恋人や家族と過ごす聖夜の定番で、正月は1年の始まりを祝う行事です」
「恋人や家族と過ごす性夜……いいなそれ……」

 分かりたくもないがへルマンの下半身スイッチが入ったことだけは何となく察した。

「……クリスマスってお祭りはどんなものなの?」
「本当はキリスト教っていう宗教を作った人の誕生日をお祝いする日なの。でも私の国ではクリスマスツリーと言うもみの木に飾り付けをしたりリースと言う円の形をした物を飾ったり、プレゼントを贈り合ったり、皆で楽しく食事をしたりする季節のイベントのひとつなの」
「?!! 何それ、楽しそう!! いいな!!」

 メリーではなく、へルマンが食いついた。流石、子供思考である。

「しかもね、1年間よいこにしてた子供にはサンタクロースと言う空を飛ぶそりに乗った白いお髭のお爺さんが寝ている間に靴下へプレゼンを入れてくれるのよ」
「何それ怖い!!」
「大人はないのか!!」
「……何で靴下なの?」
「へルマンのだったら臭そうだね」
「?! マリーひでぇ!!」

 すっかりクリスマスの話で盛り上がってるとお茶と言う名の同郷会は終わっていたらしく、リナと宮沢さんが後ろでクスクス笑っていた。

「へルマン、来ていたのなら声をかけてくれればよかったのに……。タケユキさん、こちら私の夫へルマンです」
「初めまして、タケユキです。私も嫁を紹介したいのですが、今身重なのでまた今度紹介させてください」
「なー、父ちゃん! 身重ってなんだ?」
「えっ? あぁ、母ちゃんのお腹に赤ちゃんがいるってことだ! お前も知ってるだろ?」
「知ってる! 赤ちゃんいるんだ! じゃ、女の子か男の子か楽しみだね!」
「えぇ。とても楽しみです!」

 その満面の笑みを見たへルマンは気付いた。この男は俺と同族だと。浮気を心配した俺がバカらしく思うほどその瞳はここにいない1人の女しか見ていない。

「……はは! ならクリスマスってのを一緒にやろうぜ! 花様も加えて教えてもらおう!!」
「で、場所はここなんでしょ?」
「広いからな!」
「ちょっ、へルマン! ご迷惑よ!」
「? やり方を知らなかったら出来ないだろ?」
「リナさん、大丈夫ですよ。マリーも、もうやる気だしね」
「楽しいことならマリー、やるよ!」

 こうして急遽決まったクリスマス。時期も意味も無い、ただのパーティーになってしまったけど、楽しければもういいだろう。




 それからクリスマスの準備をしていると何だかメリーの様子がおかしい。元気がないのだ。

「……ねぇ、メリー。もしかしてクリスマス嫌何じゃない? それなら無理して参加しなくてもいいんだよ?」
「…………メリー……悪い子だから……」
「えっ?」
「……ミム婦人の言うこと聞かないでマリーと逃げたから、プレゼン貰えない。……マリーもメリーのせいでプレゼン貰えない……」

 メリーは涙を溜めて後悔する。でもそれは違う。あの判断があったからマリーもメリーも今ここで笑っていられるのだから。

「それは違うよメリー!! マリーがメリーの手を引いて逃げたことは悪いことじゃない!! 自分の命を守ることは一番大切なことなんだよ!」
「……言い付け守らなかったのに?」
「あのおばさんは悪い人なんだよ。 悪い人の言うことは悪いことになってるでしょ? だから聞かなくていいんだよ。マリーは良いことをしたの。その証拠におばさんは捕まったでしょ?」
「……うん」
「大人だからって悪い人はいる。だからそんな人の言うことなんてこれからも聞かないでいい! マリーはそれが分かったから逃げたの。立派な英雄だ!」
「……英雄?」
「そう! きっとマリーは今年一番のプレゼンを貰うかもしれないね!」

 それを聞いたとたん、メリーの目には涙から笑顔に変わった。

「あっ、メリー! 花!!」
「あら? 噂をすればね!」
「? ねぇ、花は臭わない大きい靴下持ってる?」
「靴下? 大きいのならへルマンに頼んだら?」
「花ー……。言ったでしょ? 臭わない・・・・大きな靴下だって!」
「……洗濯したやつなら平気なんじゃない?」
「ふっ、メリーも分かってないね! あれは洗っても落ちない頑固な汚れなんだよ」

 (なんでマリーはそんなにへルマンに詳しいんだい?)

「……そうなの?」
「リナから聞いた」
「なるほど。奥さんからじゃ、確実だね」

 それからへルマンは下半身事情に足が臭いが追加された。ゲームではかっこいい攻略対象だったのに……。
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