49 / 61
43 パーティー開始
しおりを挟むこれは軟禁である。
確かに不自由はないし、メイドさんは何でもしてくれるけど外は危ないからと意味不明な理由で出れない。
(危ないって、ここお城ですよね? 何でだよ!)
隣部屋にいるオリバーなんて軟禁されているのに城と言うブランド名だけで満足している。まぁ、オリバーの場合は娯楽本が読めるので私とは違ってまだいいのだろう。
「携帯やタブレットの有り難さを痛感するわ……」
自作でトランプを作ってゲームでもしようかと思った花は、なんか超高級そうな紙を渡されてしまい、ハサミで切って遊ぶ行為なんぞ出来る勇気がなかった。
そして気付けばあっという間にパーティーの日になり、花は朝からメイドさんにエステティックサロン並の待遇を受けていた。
「くっ、もっと早くこれを知っていたらやって貰えていたのか……」
色々後悔しながら着物を1人着付けているとメイドさんたちはその工程に感嘆のため息をついていた。
「あの、髪型はこれでお願いできますか?」
写真を見せると1人のメイドさんが息を飲んでビックリしていた。
「す、すみません。今まで見たこともないくらいに生き生きしている絵だったもので驚いてしまいました」
「ふふ。分かりやすいですよね」
あまりにも平然としている花を見てメイドは花の事を王族に連なる高貴な人間だと勘違いし、その後の対応が更に丁寧になる。
「この髪飾りをここと、ここに刺して貰えますか?」
合せ鏡をしながらメイドに指示を出して完璧な装いにすると丁度いい時間となった。オリバーを呼びにメイドが向かいその間に軽くケープコートを羽織る。
扉を叩いてオリバーを招くと花の美しさに固まって動かなくなってしまった。
「? オリバー? どうしたの? パーティー遅れるわよ?」
「はっ! う、うん……。て、手を……」
「まぁ! エスコート!! でも私よく分からないんたけど……」
「腕に添えるだけでいいよ」
こうしてカチカチに固まったオリバーと異国の美しい姫君(花)の登場に会場は騒然とした。
見たこともない繊細な刺繍を施した美しい異国のドレスに相まって漆黒の髪に煌めく髪飾りがまるで星のようで、貴族たちは呆然と見惚れていた。
「なんて美しいの……」
「歩く芸術ではないか……」
「……女神と言うものを初めて見たぞ……」
等々圧倒されていた。だがそんなこととは知らずに花はもう既に帰りたくなっていた。
(やっぱりアウェイじゃん!! だから嫌だったんだよ!)
少し涙目になっている花に1人の貴族が声をかけてきた。
「こんばんわ。異国の姫。今宵は良い出会いになりますか?」
「えっ?」
貴族的言い回しが分からず顔を上げた花は先程の涙目もあって、女性的美しさがかなりプラスされていた。
「!! ……な、なんと……美しい……」
本来の目的も貴族的言い回しも忘れるほど、今の花は無敵で完璧な女性だった。きっと着物と和物たちの相乗効果もあって、このパーティーである意味主役になっていた。
「…えっと、ありがとうございます」
一言礼を述べて立ち去るとエスコートをしてくれているオリバーが小声で呟く。
「そんな顔、他の男に見せるなよ……」
「? そんな顔?」
「……無自覚か……」
「はぁ。とにかく、この後王族達が入場してくるからそれまでは離れないで」
「離れないわ! むしろ今日は片時も離れないから!」
「!! ……それは嬉しいね」
笑顔のオリバーにドキドキしながら花はそっと寄り添った。
そして王族たちが続々入場し、隣国の国王陛下御夫妻が会場に入ると小さなどよめきが起こった。それもそのはず王妃は顔も髪型も分からない黒いベールを上から被っているのだ。
(前見えるのかな? それにしても小さい子がやるシーツのお化けみたいだな)
そんなことを考えていたらそのシーツのお化けがこちらを向いた。そしてそのまま動かない。
(えっ? 何? メチャクチャ怖いんですけど……)
そっとオリバーの腕にしがみつく。すると隣国の国王陛下が王妃に何か耳元で話しかけると、また前を向いて歩き出した。
「……何だったの?」
「花の着物が珍しくてビックリしてたんじゃない?」
「あぁ。そう言うことか」
一旦納得した花だったが、その後も王妃から視線の様なものを感じていたら、今度は国王陛下からも射殺すような視線を追加されほとほと困ってしまった。
(一体何なの?!!)
王命でパーティーに行かされ、服装まで指定されたから従ったのにこの対応。考えれば考えるほど理不尽だ。
(もし次回も同じようなことされたら行方不明になってやる!! 向こうに帰れば同じ意味になるだろうし!)
こうして決意を新たに決めたところでこの針地獄パーティーは終わった。
0
あなたにおすすめの小説
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
【完結】灰かぶりの花嫁は、塔の中
白雨 音
恋愛
父親の再婚により、家族から小間使いとして扱われてきた、伯爵令嬢のコレット。
思いがけず結婚が決まるが、義姉クリスティナと偽る様に言われる。
愛を求めるコレットは、結婚に望みを託し、クリスティナとして夫となるアラード卿の館へ
向かうのだが、その先で、この結婚が偽りと知らされる。
アラード卿は、彼女を妻とは見ておらず、曰く付きの塔に閉じ込め、放置した。
そんな彼女を、唯一気遣ってくれたのは、自分よりも年上の義理の息子ランメルトだった___
異世界恋愛 《完結しました》
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる