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44 痴話喧嘩に巻き込まれる
しおりを挟むさっさと着替えて寝てしまおう。お風呂に入ってからパジャマ代わりのスエットを着る。
「朝イチで帰ってやる」
「そう言わないでよ」
振り返るとそこには皇太子が優雅に紅茶を飲んでいた。
「夜、女性の寝室に無断で侵入するのは犯罪行為に等しいですよ」
「ここは俺の城だ」
「ほう。では妃殿下に報告しておきましょうか?」
「それは困るな」
「それで? わざわざここに来た要件は?」
腕を組ながら尋ねると皇太子は手紙をテーブルに置く。
「この招待状をプレゼンするよ」
「要らないです」
「まぁ、そう言わずに楽しんでよ」
「今日も散々でしたので辞退したいです」
皇太子は笑顔のまま横を通り過ぎる時、そっと耳元で囁いた。
「この世界を知りたいんでしょ? なら行った方がいいと思うけどね……」
「! どういう事?」
花の質問には答えず皇太子は笑顔で部屋を出ていった。
「えっ? パーティー?」
「そう。悪いんだけど、またパートナーになってもらえる?」
「それは構わないけど、もう帰りたかったんじゃないの?」
「ちょっと気になることがあってね」
「何?」
「いけば分かるらしいわ」
「らしい?」
不思議に思いながらもオリバーは頷いてくれた。花も皇太子にいいように使われているようで癪だが、この世界については知りたい。
(なんでこんな遠回しなことするんだろ? 皇太子は口を割りそうにないし……)
壁に掛けられてある着物を見ながら花は小さくため息をついた。
そして皇太子に言われたパーティー会場に向かうと何故かオリバーと離されて別室に通された。
「こちらで暫くお待ち下さい」
メイドが紅茶を一式用意してから退室の言葉をかけていなくなる。
「パーティーじゃないの? 折角着物着たのに?」
愚痴を1人溢して紅茶を飲んでいるとノックも無しに黒髪の女性……いや、日本人が強面で無言のまま此方に向かって歩いてくる。……なんか怖い……。
「あんた、日本人でしょ!!」
「は、はい!!!」
「どうやって来たの!!」
「と、扉を開けて……来ました……」
「!! その扉はまだ日本と繋がっているの?!」
「は、はい……」
「……なら……私も連れていって!!」
「えっ?」
「……帰りたいの……」
その場で泣き崩れた女性をとりあえずソファーに座らせると、またノックも無しに今度は隣国の国王陛下が慌てて入って来る。
「撫子!!!!」
その時、隣の女性が身震いしたので咄嗟に庇ってしまった。
「! どういうつもりだ!!」
「お、怯えているようなので、向かい側にいったん座ってもらえますか?」
「俺は彼女の夫だぞ!!」
「怒鳴らないで下さい! 怯えているのが分かりませんか? パニックを起こす前に冷静になってくたさい!」
「!……わ、分かった……」
相当彼女が大切なんだろう。しぶしぶだが対面に座ってくれた。メチャクチャ睨まれてるけど……。
「……撫子。お願いだ……帰らないでくれ……」
私とはうって変わって彼女には切なそうに瞳で見つめて懇願している。膝の上で握りこ節が微かに震えていたのは気のせいじゃないだろう。
「もう十分聖女の力は発揮したでしょう。王家に聖女の血が欲しいのかも知れないけど諦めて、本当に愛する人と結婚してよ!」
「だからそれは撫子だと言っている!」
「……聖女の形が同じか確かめてみたい……でしょ?」
「!! ……それは何度も謝っているだろう?」
「そうね。だから私も何度でも言うわ! もう解放してよ! 聖女の形も堪能したんだから未練なんてないでしょ!! あなたの目的は果たされたんだから、いいじゃない!」
「ある!! 未練たらたらだ!! 撫子を愛してるから他の女なんていらない!!」
「そんな言葉を信用しろと? 馬鹿にしないで! 諦めて私を捨てなさいよ!!」
痴話喧嘩が始まった。しかも内容や名前から多分行方不明の方かもしれないので全くの無関係とも言えない。
「捨てられるのは俺の方じゃないか! 現に今もお前にすがっている!」
「子供が目的なだけでしょ? でも御生憎様! 私はそんな可哀想なことはしない! 諦めて他のご令嬢を嫁にするのね! そして私は帰る!」
「駄目だ! なら今、鍵となるこいつをここで殺す!!」
「えぇ?!! ちょっ、横暴過ぎる!!」
いきなり始まった痴話喧嘩に巻き込まれて殺されるなんて理不尽だ。さすが最高権力者とも皮肉も言えないのが悲しいが……。
「そんなことしたらここで私も自殺するわよ……」
「!! ……せ、聖女は自殺出来ない」
「やってみなきゃ分かんないでしょ!」
妻が暴挙にでるのは困るのか、殺気と剣をしまってくれたがまだ安心は出来ない。
(オリバーに助けてを求めたいけど、こう言うことが分かっててもしかしたら離したの?)
修羅場に巻き込まれて命の危機まで曝されるとは聞いてない。あの皇太子は何を考えているのか。
一瞬生け贄を頭に浮かべた。奴は皇太子妃を溺愛している。あり得なくないと言えないのが怖い。
(とりあえず、ど、どうしよう……)
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