51 / 61
45 撫子
しおりを挟む「あ、あの! とりあえず説明して貰ってもいいですか? 理由も分からず殺されるのはごめんです!」
「ふん! 撫子を連れていかなければそんなことはしない」
「……そう言うところが嫌われる要素なのでは? 俺様系が好きじゃない人にはモラハラでしかないですよ?」
「モラハラ?」
「精神的いじめ?」
「……モラハラか。懐かしい言葉ね」
美しい撫子は花の言葉に郷里を思い出したのか、少し落ち着いたようだ。
「私はね田中撫子。都心でお金無いから激安事故物件を借りて生活してたの。あっ、事故物件といっても殺人現場とか自殺があったとかじゃなくて住むと行方不明者になる人が多いとかの不気味系だったの」
(それ心当たりしかない! 家の借家です! 本当にすいません!!)
「そこで毎晩お経が聞こえて寝れないからある日うるさい扉を明けて苦情を避けんだのよ。そしたらそこは神殿で何かの儀式をしている最中だったからとても焦ったわ」
「儀式ですか」
「雨乞いの聖女を呼ぶ儀式だ」
「そう、そこで殿下とも初めて会ったわ。勿論笑われてね。でもそのお陰で私はお咎めがないと分かって安心したの。その時は心の広い方で良かったと思っていたけどね」
「…………」
殿下の手が強く握り締めすぎて微かに震えている。
「でも違ったの。確かに私は雨を降らせる能力みたいなものがあったけど後は普通の人間。非力な女性なのよ」
「えっ、まさか……」
そっと殿下の方を伺うと苦虫を噛み潰したような顔でうつ向いている。
「聖女の形が同じか確かめたかったそうよ」
「それって、こちらの女性と同じように孕むかってことですか?」
「聖女の血が入った子供が欲しかったのはそうなんでしょうけど、彼は興味本意だけで私の身体「ちがう!!!」
「遊びたかっただけでしょ!! 嗤ってたじゃない!! 愛してる? レイプ犯が何いってんのよ!!」
「本当に愛してるんだ!!」
「免罪符のように言わないで!! 強姦魔!! もう子供も出来ないって分かったんだから用済みとして解放してよ! 功績は十分なはずだわ!」
撫子はそのまま顔をおって号泣してしまった。殿下はすぐさま撫子の元に駆け寄ろうとしたが、それを花は制する。
流石に今は火に油を注ぐ行為だ。
「殿下、彼女を失いたくないのならば今だけそっとして貰えませんか? 扉に護衛を置いて少しでもいいので二人きりで話させて下さい」
「……分かった……」
そうして殿下は泣いている撫子を何度も振り返りながら出ていってくれた。
「……撫子さん。殿下はもういないので大丈夫ですよ」
「うん。 うん……」
そっと背中を撫でて落ち着かせると、こちらの世界に来てから今までの事をポツリポツリ話してくれた。
内容を要約するとシンデレラと美女と野獣をミックスしたような体験をして、そこで今の殿下に本気で気に入られて皇太子妃にされたそうだ。
そこには勿論聖女の血が欲しいと言う思惑もはらんでいて今まで逃げることが出来なかったが、今回着物の花を見つけて希望を胸にここに来たと言うことだった。
「なるほど……」
「……私は鳥籠からずっと抜け出せなかった。やっとなの。やっと帰れる希望があなたなの!!」
カサッ、いつの間にかテーブルに1枚の紙が置いてある。そこには離婚を願う嘆願書。
「……どうしてここに……捨てられたと思った……」
そっと紙を拾うともう1枚正式な離縁届けの用紙があった。それを見ると撫子は顔をくしゃりと歪めて胸にそっと抱いた。
「ありがとう。ありがとう。受理されなくても私の意思は表明出来る……」
涙を拭うと撫子は花にペンを要求する。周りを見渡してもそれらしいものはない。なので花の鞄に入っているボールペンを渡した。
「懐かしいわね……」
渡したボールペンを愛しそうに眺めた後、撫子は用紙に必要事項を書いて最後に自分の名前を書いた。こちらの文字と日本語で……。
書き終わると扉をノックする音と共にこちらの皇太子が現れた。まるで見ていたかのようだ。
「ノックをしたのなら返事を待ってから開けるものでは?」
「そうだね。では次からはそうするよ。それよりその用紙を貰えないかな?」
「……何故です?」
「くれるのなら転移魔法を2人にかけてあげるよ。屋敷に帰りたいだろ?」
「オリバーはどうするつもりですか?」
撫子をそっと後ろに庇いながら皇太子をじっと見つめる。
「そうだった。君のパートナーもいたよね。すっかり忘れてたよ。ごめん、ごめん。書類に集中し過ぎて頭から抜けてた。害のないものは眼中になくてね」
「それはある意味良かったです」
「では、改めて。3人一緒に屋敷まで転移させてあげるからその書類を頂戴」
「そんな簡単に信用「いいわ! だからすぐにでもして!」
「な、撫子さん?!」
驚く花を無視して撫子は書類を皇太子に渡した。それを確認すると笑顔で「ありがとう」と一言告げる。
次の瞬間気付けば屋敷の玄関に3人まとめて立っていた。
「「えっ?」」
「……」
驚いた花、状況が飲み込めないオリバー、落ち着こうとしている撫子がそっと屋敷をみている。
「……やっと帰れるのね……」
0
あなたにおすすめの小説
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
【完結】灰かぶりの花嫁は、塔の中
白雨 音
恋愛
父親の再婚により、家族から小間使いとして扱われてきた、伯爵令嬢のコレット。
思いがけず結婚が決まるが、義姉クリスティナと偽る様に言われる。
愛を求めるコレットは、結婚に望みを託し、クリスティナとして夫となるアラード卿の館へ
向かうのだが、その先で、この結婚が偽りと知らされる。
アラード卿は、彼女を妻とは見ておらず、曰く付きの塔に閉じ込め、放置した。
そんな彼女を、唯一気遣ってくれたのは、自分よりも年上の義理の息子ランメルトだった___
異世界恋愛 《完結しました》
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる