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46 皇太子はマザーグースを唄う
しおりを挟む「花?! えっ? これってどういう「花! 早く案内して!!」
オリバーの声に被せて撫子は花に扉の場所への案内を急かした。ゴールまで気を抜きたくないのだ。ここはまだ彼女にとっては敵陣でしかない。
「付いてきてください。オリバーは皆に帰ってきたことを伝えてくれる?」
「わ、分かった」
花は撫子を連れて扉の前まで行くと彼女は躊躇なく扉を開けて中に飛び込んでいった。そして扉の向こうから「ありがとう!!」と笑顔で伝えるとそのまま振り返らずに玄関方面へと行ってしまった。
その頃異変を察知した隣国の国王陛下が花たちのいた部屋に再び入室してきた。
「撫子!!」
そこにはこの国の皇太子しかいなかった。
「おのれ……あの娘……殺してやる……」
「ぷっ。あはははははは!!!!」
急に笑いだした皇太子に驚いてそちらへ睨みを効かせると不敵に口元を上げて1枚の書類を国王陛下に渡した。
「離縁届けです。よっぽどしたかったのでしょう。自国の文字でも名前が書かれている」
かっさらうように書類を手にした国王陛下の顔は真っ青だ。
「戦争だ。撫子を返せ!! これは立派な誘拐だぞ!」
「ですが私は何もしておりませんよ? 花を迎えには来ましたがご覧のようにもぬけの殻です」
「あの娘だ! あの娘が撫子を拐ったんだ!!」
「それはおかしい。どうやってしたんです? ここは領事館の屋敷です。しかも王妃様にお願いされ私は花を送り届けただけですよ?」
「ま、窓から……」
「……無理だと分かっているのでしょう? ここの窓はすべて鉄格子が嵌めてある。それに内鍵はかかったままのようですよ?」
王妃が逃げないように囲い込み、安全に安全を重ねた場所だ。それは他国の人間より国王自身がよく分かっている。ただの小娘が王妃を連れて逃げることなど不可能だと言うことが……。
「そうそう、私でも無理ですよ? 護衛に聞けば分かります」
チラッと国王陛下は扉にいた護衛へと目を向けた。
「入っていったのは皇太子殿下しかおりませんでした。他の人間は誰もいません! そして殿下が入ってから陛下が来るまで3分程度しか時間は空いておりませんでした!」
「私がしたのはテーブルの上にあった書類を取って内容を読んだくらいですよ」
皇太子が転移魔法を使えることは自国の人間でも少ない。なので完全犯罪は成立してしまう。
「では、私も花たちを探さねばならないので失礼します」
そうして皇太子は領事館を後にする。
「諸悪の根元が……愛するものを無理やり奪われる苦痛をもっと味わうがいい。お前なんかが愛されるはずないだろう! 愛を知って孤独のままもがき死ねばいい……生まれてきたことを後悔して何度も苦しめ!!」
馬車の中で宿根の思いを吐露するとガラス窓に写る自分の顔が見えた。
「ふっ、やっとここまできたな……花、君には感謝しかないよ……」
その顔は嗤っている。駒が正しく想い描くように進んでくれているからだ。
「君たち親族は本当によく働いてくれて助かってるよ。どの臣下よりも私の願いを叶えてくれる……」
懐からだした古びた日記の1頁にキスをする。そして愛おしそうにその紙を撫でる姿は皇太子妃と一緒にいる時を思い出させた。
「後少しだよ。待っていてね」
城に戻ると皇太子は花とオリバーに暫く自宅謹慎を告げる手紙を飛ばす。
そして何もなかったように政務に戻ると内ポケットが震えだした。そしてポケットから小さな鉄板を取り出してそこに書かれた内容を読んで微笑む。
「本当に勇治郎は仕事が早くて助かるよ」
鉄板をまた内ポケットに仕舞うと皇太子は手紙をしたため始める。
「チェックメイトだ。国王陛下。私たちが苦しんだ地獄をお前も死ぬ前にとくと味わうがいいさ」
今、日本では撫子さんが30年振りに発見されたことで話題になっていた。海外で拉致されていたことになっており奇跡の生還ともいわれている。
私は申し訳ない気持ちでいるとある日覚えのない市役所から手紙が来た。とりあえず開けてみるとそれは撫子さんからの手紙だったので驚いてしまう。
『花さんへ
助けてくれてありがとう。いきなり知らない市役所から手紙が来て驚いたでしょう? 私の住所で送りたかったけど何かあったら困るのでつてを使いました。
これを書いたのはもしかしたら花さんが自責の念にかられてないか不安だったので筆を取りました。花さん、借りたのはあなたの伯父さんからであなたではないの。それに伯父さんだってこんな現象があったなんて知らなかったと思うわ。
だから思い詰めないで! それに私は帰って来れたの。あなたのお陰よ。運が良かったのかもしれないけど帰してくれたのは間違いなくあなたなの! だから良いことをしたと胸を張って!
私はあなたに感謝はしても恨んだりなんかしないわ! 恨むべき相手はあいつなの! あなたじゃない! そこだけは間違えないで!
本当にありがとう花さん。落ち着いたらまたあなたと話したいわ。
撫子』
伯父さんはグズだったけど入居者さんは皆、いい人たちだった。運だけは良かったようだね。
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