53 / 61
47 茶番
しおりを挟む皇太子にいきなり現れた手紙から「暫く2人は自宅謹慎ね。今外出したら隣国の王妃誘拐犯にされて殺されちゃうから気を付けてね」と言う脅迫文を貰った。
(転送したのお前だろ!! 何してくれてんねん!!)
撫子さんを日本へ帰すことが出来たのは良しとしてもこの状況は予想外すぎる! 私はいいとしても巻き込まれたオリバーが可哀想すぎて謝罪しても足りない。
なので謝罪の気持ちを込めてオリバーがこの家でしたいことを最優先にさせてみた。
「なら、花ともっと一緒にいたい!!」
「えっ?」
「恋人としてもっと……その……ふ、踏み込みたい……」
花の顔が真っ赤に染まっていく。別に清い交際のままでいいなんて思っていない。オリバーとならいつかそうなりたいと願っていたこともある。
「……う、うん。オリバーならいいよ。こ、恋人だもん……」
「……いいの? 花?」
花は小さく頷く。するとオリバーの手がそっと頬を触り、気が付くと2人は甘いキスをしていた。
「大好きだよ。花」
「……私も大好き、オリバー……」
優しく微笑むオリバーはそっと花を抱きしめてもう一度キスをするとそのまま押し倒したのだった。
(……朝か……いや、昼だね。オリバーは?)
重い下半身に起き上がろうとすると、後ろから引き戻された。
「いっちゃダメ花。起きたのならもう少しイチャイチャさせて……」
耳元でオリバーがキスをしながら甘えて来る。恥ずかしい。
「自宅謹慎中は我が儘言っていいんでしょ? なら花をいっぱい愛してもいいよね?」
(何だ、何だ?!! この色気ムンムンのオリバーは!! こんなの勝てないよ! 無理!!)
「ふふ。可愛い花! 好きだよ。初めてで身体痛いでしょ? 無茶はもうしないから……」
そう言って背中へキスの雨を降らせていくオリバー。淫らな生活を謹慎中ずっとするのだろうか? まぁそれも悪くないかもしれないと花は甘えた。
再び皇太子が屋敷に訪れた。共も連れずに1人でだ。
「おや? 2人とも夫婦になったんだね。おめでとう。赤ん坊はまだのようだから先に式なのかな?」
「「えっ?」」
「自宅謹慎中にかなり子作りしたんだろう? オリバーの魔力が花の下半身を中心に渦巻いてるよ? まるで第2のオリバーみたいだ」
「「?!!」」
「まぁ気持ちは分かるよ。好きな女を自分の魔力に染める事は男の夢だからね」
「も、もう、その話はいいので、用件を言ってください!」
2人の性事情が皇太子に筒抜け過ぎて花は穴があったら入りたい気持ちになっていた。
「では着替えて芝居をうってもらおうか!」
「何に着替えるんですか?」
「王妃が誘拐された日と同じ服だよ」
「えっ? 着物ですか?!」
「大丈夫。深く汚れないようにするから」
「は?」
皇太子の笑顔がなんだか恐ろしい。
「今、北と南で淀みの討伐をしている。そこの近くに幾つもの泥沼があるんだ」
「ま、まさか……」
「転送するから気が付いたらそこにいたと言ってね!」
「待ってください! 俺は良いとしても花にそんな危険なことさせられない!!」
「大丈夫! 君たちに死なれて困るのは私も同じだからちゃんと防御魔法かけといてあげるよ」
何で拒否権なく従わなければならないのかと思った。すると皇太子は花を見て嗤う。
「ヤム兄妹のことは勿論黙っててあげるよ? それに私もメークイン男爵は潰したくないんだ」
(脅迫か……。いくら王弟に気に入りられていても派閥としては弱いし何より皇太子に逆らえば簡単に潰されるのは分かってる)
「……髪型までは覚えてないです」
「花?!!」
「そこは適当でいいよ。どうせ沼地から這い出てくるんだから分からないよ」
「「沼地?!」」
予想外にハードモード設定だ。割に合わないような気がする。
「着物をわざわざ沼地に沈める気はないわ!」
「なら似たような物をこちらで用意するよ。それでいい?」
「分かりました」
「じゃ、それが出来しだいよろしくね」
こうして花たちは皇太子に命令されたまま沼地に落とされそれぞれの兵士たちに助けられると茶番を遂行した。
「でもビックリしたぜ! まさかうちのシッターがこんな沼地で見つかるなんてな!」
「……ここは何処でしょう?」
「南の沼地だ。近くに淀みもあるからさっさと退散するぞ!」
「はい。ありがとうこざいます」
「でも何であんなとこにいたんだ?」
「私もさっぱりです。さっきまで領事館にて王妃様とお話をさせてもらっていたのですが、目眩かと思ったらここにいました」
「なんだそりゃ?」
「私も聞きたいくらいですよ」
まさかカルロスと再開するなんて思わなかった。討伐に出ているとは効いていたが何と言う偶然。
「とりあえず屋敷に戻りますね」
「あぁ。じゃ、汚れ落としたら声をかけろよ」
「? はい」
泥を落として着替えるとカルロスが団長と何か話していたが、花に気付くとそそくさとこっちに来た。
「よし、準備出来たな! 帰るか!」
「えっ?」
「団長からは許可を貰ったから平気だ」
「??」
「はぁ。護衛だよ! 言っただろう? ここは淀みの最前線だって! 魔物に殺されたくねぇだろ? それに他の護衛より俺が最適だろ? 自分の屋敷に帰るんだからよ」
「……確かに……」
かくして花たちは北と南でそれぞれ発見され、この事はすぐに王家へ報告がいった。そして王妃もどこかで淀みや泥沼にて見つかる確率があることから大規模な捜索が始まった。
10
あなたにおすすめの小説
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
【完結】灰かぶりの花嫁は、塔の中
白雨 音
恋愛
父親の再婚により、家族から小間使いとして扱われてきた、伯爵令嬢のコレット。
思いがけず結婚が決まるが、義姉クリスティナと偽る様に言われる。
愛を求めるコレットは、結婚に望みを託し、クリスティナとして夫となるアラード卿の館へ
向かうのだが、その先で、この結婚が偽りと知らされる。
アラード卿は、彼女を妻とは見ておらず、曰く付きの塔に閉じ込め、放置した。
そんな彼女を、唯一気遣ってくれたのは、自分よりも年上の義理の息子ランメルトだった___
異世界恋愛 《完結しました》
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる