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51(完)
しおりを挟む成人済まで成長してるから青年って書かなきゃなと思いつつ少年表記してます。
身体は大きくなってます。
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すぐ傍で聞こえる水音に、少年の意識がゆっくりと浮上する。
「……ぅ、んん……」
全身を温かい何かに包まれている。
なんだろうと、まだハッキリとしない頭で考えながら、少年は静かに瞼を開けた。
微かに靄がかっている視界に、自分は今、浴室に居るのだと悟った。
眠っている間に運ばれたらしい。
温かなものの正体は、湯船一杯に張られた湯と、背後から包み込むように回された男の逞しい太い腕だった。
「レ、スター……?」
ここの湯船は軽く泳げるぐらい広い。
男と少年が二人並んで入っても十分余裕があるが、今は男に背後から抱きしめられて、少年が男にもたれかかっている格好で湯に浸かっていた。
「気がついた?」
「ん……」
少年のこめかみに背後から男が口づけてくる。
男の声に曖昧に返事をしながら、少年はまた瞼を閉じた。
全身を包み込む温度がちょうどいい。
疲れ切った身体に心地よい温かさは、すぐに少年を眠りの世界へと誘おうとする。
「眠かったら寝てていいぜ。後はやっとくから」
男が湯の中から右手を引き上げて、頬にかかった少年の髪を後ろへ梳く。
腰まで伸びた長い髪は緩くまとめられ、横に流されている。
水分を含んで少し重い。
だがその重さを言い訳に、顔を傾けて髪を梳く男の手に、少年が頬を擦り寄せた。
「アンタ……寝ぼけてるだろ」
少年の甘えた仕草に、男から苦笑が漏れた。
後ろから少しだけ強めに抱きしめられ、少年は大人しく身体を預ける。
本当は意外に少年の意識はしっかりしていて、けれど寝惚けているふりをしなければ、恥ずかしくて素直に男に甘えられなかった。
きっと背後の男は気づいている。
けれどこの敏い男は、気づきながらも、知らないふりをしてくれているに違いなかった。
普段は恥ずかしいのと、素直じゃない性格が邪魔をして、男に甘えた態度はとれていない。
それでも男が存分に甘やかすから。
意地っ張りな少年は、余計に素直になれない。
どんなに我儘をいっても、暴言を吐いても、粗雑に扱っても、男は一度も怒ることなく、逆に仕方がないなと全てを許してくれる。
まるで手のかかる子供を持った親のように。
深い慈愛に満ちた眼差しで見つめられると、それが子ども扱いされているように思えて、余計に反発してしまう。
可愛くないことを言っている自覚は、もちろん少年にもあった。
だから最近は少しぐらい素直になってみようかと思っている。
長い間時が止まり、成長しなかった身体を、男が元に戻してくれたこともあるし。
そう自分に言い訳して、こういう状況を利用して、少しだけ甘えた態度をとってみることにした。
立てたひざの上に乗せてある男の左腕に、寄りかかる様にして頭を預けた。
露わになった項に、男が背後から触れるだけの口づけを落とした。
「ん……っ」
ぴくりと小さく少年の身体が湯の中で跳ねた。
首が弱い事は今日初めて知った。
いや、首だけではなく、男が触れるところ全てに感じてしまう。
背後から顎を取られ、後ろを振り向かせられる。
すると男が唇を重ねてきた。
次第に深くなる口づけに、少年は息が荒くなるのが分かった。
これはもう寝惚けているなんて言い訳は通用しない。
「あ……はあ……んっ……」
明確な意図をもって侵入してきた舌に絡められ、口腔を蹂躙されて、少年は何も考えられなくなっていた。
ようやく唇が離されると、少年は潤んだ瞳で背後の男を見上げた。
「アンタ、誘うなよ」
「誘ってなんか……ッ!」
背後から回されている男の手が下肢へと伸び、軽く立ち上がりかけていた少年のものに触れた。
ゆるゆると動かされて、少年は思わず声を飲み込んだ。
「ホント、アンタには敵わねえよ」
初めての少年のことを思って、一度でやめてやろうと思っていたのに。
その意思が脆くも崩れ去ってしまう。
今まで相手の事を考慮したことなど無い。
自分のやりたいようにやって、相手の気持ちなどお構いなしだったのに、この少年だけは男を翻弄する。
こんな風に誰かを、行為の後に手ずから湯船につけて、甲斐甲斐しく清めてやったことなどなかった。
硬くなってきた少年のものから手を離し、指をその奥へと忍び込ませる。
つい先ほどの行為でほぐれたそこは、男の指を難なく飲み込んだ。
「やっ……ああっ……」
「掻きだしておかないと、後で辛いのはアンタの方だぜ」
たっぷり注ぎこんだからな、と男は、からかう様に少年の耳元で付け加えた。
すぐに指がもう一本増え、明確な意思をもって内側を荒らされる。
男の指が動くたびに、湯が中に入ってきて、少年は頬を上気させながら、いやいやと首を横に振った。
快楽を知ったばかりの身体に火がつくのは早い。
「あ、あ、あっ、れ、れすたぁ……やぁ、そ、それ……んんっ……」
「掻きだしてるだけだろ、じっとしてろよ」
中のモノを掻きだすように動かすその指が、時々少年の感じるところを抉っていく。
快感を呼び起こすその動きに、少年は呆気なく屈服した。
「れす、たぁ……」
「ん? どうした」
「……やっ……もぅ…いじわる…し…ない……で……っ!」
目に涙をためて、少年は男を睨みつけた。
それが少年の精一杯の反抗だ。
けれど、その手は、少年の身体を抱きしめる男の腕に縋りつくように握りしめられていた。
「仕方がねえなぁ」
ワザと煽ったくせに、さも少年のわがままに付き合ってやるとでも言いたげに、男は小さく笑う。
指を抜き、少年の腰を背後から持ち上げると、指の代わりに男の太く硬いものを、すっかり蕩けているそこに突きいれた。
「あああ……っ」
男の肩に頭を預け、少年は頤を仰け反らせ、悲鳴に似た声を上げた。
背後から貫かれ、少年の中に自重でさっきよりも奥へ深々と入り込んでくる。
びくびくと身体が軽い痙攣をおこし、自身の腰を掴む男の腕に無意識に爪を立てた。
「や、あ、あ、ああぁ!」
さきほどの一度目の交わりで覚えさせられた中の感じるところを、とん、とん、とんと教え込むように男が何度もついてくる。
そのたびに少年の口からは絶えず喘ぎ声が漏れた。
「アンタが気持ちいいの、ここだろ?」
「ひゃぁ、あ、あ、ああぁっ……!」
男が動くたび、湯が波を打つのが少年の視界に映った。
強すぎる快楽に少年の目に涙がたまる。
喘ぎ声を漏らすことしかできない少年の、露わになっている無防備なうなじを、男が背後から軽く噛む。
痕を残すようにきつく吸いつけば、少年の中がきゅっと締まった。
「れす、たぁ……れ、すたぁ……」
「ん? どうした?」
思考が溶けだした少年が縋るように男の名前を何度も呼ぶ。
手で支えている少年の腰を少しだけ落として奥へと入り込めば、少年はいやいやをするように何度も首を横にふった。
男の腕に爪を立てている少年の指に、さらに力が入る。
「ひぃ、あ、あ、あぁっ、む、むりぃ……むりぃ……んんっ……!」
「無理ってなにが?」
「あ、あ、あぁぁ……!」
「気持ちいいだろ? なにが無理なんだ?」
「い、いい……っ! き、もち、いぃ、けどぉ……むりぃ……お、おくっ、それ、いじょう、はいらな……あ、ああっ!」
「ああ、わかってる……まだ入れねぇよ。ちょっとずつ慣らしていこうな」
「あ、ああっ、あぁ……っ!」
がくがくと揺れた頭を、勝手に同意の頷きと受け取って、男は少年の頬に口づけを落とす。
湯が波打つ音と、少年が上げる嬌声がやけに大きく聞こえる。
理性がほとんどなくなりかけている少年は、それでも恥ずかしさに身をよじろうとした。
けれど背後から抱きしめられた腕に逃れる事は出来ない。
「もぅ、やだぁ……」
弱いところばかりを攻められ、少年は潤んだ瞳で男にねだった。
口元に笑みを浮かべて、男は少年に応えるように動きを早めた。
「ああッ!」
中の感じるところを強く突かれ、弓なりに背中をそらせて少年が果てる。
きつい締め付けを堪能しながら、その首筋に噛みつくような口づけを与えて、男は少年の中へと精を注ぎこんだ。
男に身体を預けるようにぐったりと力の抜けた少年の中から己を引き抜き、今度はそこへ指を差しいれた。
「……んっ……」
「じっとしてろ。すぐ終わる」
手早く中に注ぎこんだものを掻きだすと、少年の身体を抱え上げ、湯船から出た。
「レスターのばか、レスターのばか、レスターのばかぁ……」
ベッドの上で力なく横たわる少年は、男への恨み言を繰り返し口にしていた。
「悪かったって。そう怒るなよ」
「うるさい、うるさい! ばか、ばか、レスターのばかぁ!」
長時間湯に浸っていた少年は、そこでの慣れない運動に、湯あたりしていた。
首筋に氷の魔法でよく冷えたタオルをあてられ、少年はベッドの上に横たわっている。
逆に男は至極平気そうで、それが余計に少年の癪に障った。
「ホント、悪かったって。初心者相手にさすがにやりすぎた」
「~~ッ!!」
顔を真っ赤にした少年は、勢いよく近くにあった使っていない枕を男に向かって投げつける。
それを男は余裕で受け止め、少年の足元に置いた。
「アンタがあんまり可愛いことするから、調子に乗りすぎた」
いつものからかいの表情ではなく、真面目な顔をしていうから、少年は頬を赤くしてプイっと横を向いた。
魔法ですっかりと乾いた少年の髪を男が撫でる。
それは少年にも自覚のある事だ。
寝ぼけてるふりを装って男に甘えた態度をとってしまったのは少年だ。
それが男を煽る結果につながるのを考えなかったと言えば、それはそれで嘘になる。
「機嫌直せよ」
少年の顔を挟むように、男がベッドに両手をついて少年を見下ろした。
「……身体、元に戻してくれたら考える」
「しょうがねえなあ。もうちょっとアンタの体調が戻ったらな」
苦笑しながらも、元々そのつもりだった男は、素直に少年の言葉に従う。
けれどただでは引き下がらない。
「ツァイト」
甘い声で名前を呼ばれ、渋々といった様子で少年が男の方へと視線を移した。
「愛してるぜ」
さっきは意識を飛ばしていた為に届かなかった言葉を、今度は少年の深緑の瞳を真正面から見ながら告げた。
驚き固まる少年に、男は笑みを浮かべるとゆっくりと唇を重ね合わせた。
おわり
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みんなの感想(5件)
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初めまして
随分前から大好きでブクマして繰り返し読んでいたのですが、消えてしまっていてもう読めないのかと嘆いていましたがまた出逢えて良かったです😊
感想ありがとうございます(*´▽`*)
以前から読んでくださっていたのですね。また巡り合えてうれしいです。
そのうちに小話新作をUPできたらいいなーと思っていますので、またその時は読んでやってください。
昨日こちらの作品を見つけ最終話まで読まさせていただきました。
ツァイトとレスターが恋人になるまでの模様がなんだかリアルでとっても引き込まれました😊
2の方も読まさせていただきますね🙇♀️
感想ありがとうございます。
楽しんでいただけたようでよかったです(*´▽`*)
甘々がすきなのでこんな感じになりましたー
2の方もお気に召すとうれしいです!
めちゃくちゃ大好きでした!
可愛いツァイトとツァイトにデロデロなレスター……
本当に堪らなかったです…!!!
毎日の更新本当にありがとうございました!!!
完結しちゃったのは正直めちゃくちゃ寂しいですが、2として番外編や後日談あげて頂けるとのことでしたので、引き続き楽しみにさせていただきます!
まだまだ暑い日が続きますが、ご自愛ください!!
感想ありがとうございます。
大好きとおっしゃっていただきうれしいです(*´▽`*)
デロ甘な溺愛目指して頑張りました!
楽しんでいただけたようでよかったですー。
本編はこれにて完結です。
次からは2の方で番外編とか後日談とかこぼれ話とか、ストックが尽きるまでUPしていくので、また読んでくださるとうれしいです。
お気遣いありがとうございます。
早くすずしくなってほしいです!
ふらにゃ様もどうぞ体調には気を付けてお過ごしください。