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薔薇の毒(3)
しおりを挟む「丁度良かった、わたくし今から中庭でお茶をしようとしていたところですの。よければラズ様もご一緒にいかが?」
「い、いえ……あの…」
「申し訳ありませんローズ様、ラズ様はこれからご予定が――」
「使用人風情が口を挟まないでくださる?」
「……失礼致しました」
相変わらず典型的な身分差別の意識を持つローズ様は昔からこれだ。自分より下のものを見下し、下手したら人間とも思わない扱いを平気でする。
今となったら僕の方が身分は上で多少態度を改めているように見えるが、久しぶりに目の前にする彼女の視線に完全に萎縮してしまっていた。
それでも、マリンが不当な扱いを受けるのは嫌だった。
「マリン、大丈夫、下がってて」
「……ラズ様」
心配そうに伺ってくるマリンにこくりと頷き、大丈夫なことを伝えたかったのだが、浮かべた笑顔は失敗に終わり余計心配させてしまったかもしれない。
さりげなくギュッと握ってもらった手から伝わる小刻みな震えが情けなかった。
そんな僕の様子をわかっていて彼女は容赦なく言葉を畳みかけてくる。
「あらあら、別にわたくしただお喋りしているだけなのにそんなお顔をされるといじめていると勘違いされてしまうわ。ねぇ、ラズ様、わたくしとラズ様の仲でしょ?もうとっくに家族ですのに陛下の意地悪でなかなかお会い出来なくて寂しかったんです、この機会にもっと仲良くなりたいわ」
「っ……」
『初めましてラズ様、ローズと申しますぜひ仲良くしてください』
『初めまして…ローズ様、こちらこそ、よろしくお願いいたします』
『ふふ、クオーツ様から聞いていた通り可愛らしいお方。こちらラズ様に用意した花ですぜひ受け取ってくださいな』
王城に来て初めてローズ様と対面し挨拶を交わしたあの日の記憶と重なる。
優しそうで綺麗な人だと思って油断した。
ローズ様の従者の手から渡された色とりどりの綺麗な花の中に紛れていた、猛毒を持つ小型な蛇が突如として顔を出し噛まれそうになったあの恐怖。
泣き叫ぶ僕を見てにまぁと笑っていたあの悪魔のような顔が頭から離れなかった。
「ラズ様」
「っ」
名前を呼ばれ、はっと気付く。
未だ繋がったままのマリンの手を無意識のうちに軋むほど強く握りしめていた。
「……ごめ、マリン……クオーツ、呼んで」
「はい、既にトールを通して呼んでます」
今日クオーツが公務で忙しいのはわかっていた。昨夜ベッドの中でしつこい程充電させてと長時間粘着されたから。
それでも、頭の中で警鐘がなるほど、ストレスがピークに達していた。
呼吸が浅く、息がしずらい。
今すぐ番のフェロモンに包まれたい、安心したい、抱きしめて欲しい。
早く、早く、早く―――
みるみるうちに脚の力が抜けていき立っているのも限界でマリンに支えられる僕を見つめるローズ様の口元は扇子で隠れているものの目が嘲笑っている。たとえ違ったとしても長年の経験から僕はそう感じてしまう。
嫌だ…怖い……誰か……助けて
誰か―――
「ラズ様?」
「っ、―――ラルド、様……」
天の声ならぬ、推しの声
耳と頭がそれを認識した途端、必死に張っていた緊張がぶわっと解ける感覚に視界は一気に水の膜で覆われた。
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