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暇つぶし(3)
「ちょっと、動かないでよ」
「ん?動いてないよ」
「……あとちょっとなんだから我慢して!」
「はいはい。ふふ、口をとがらせながら描いてるんだもん、かわいいね」
「は?もう、うるさい。集中してるんだから喋りかけんな」
「はーい」
絵のモデルとして動けずただ退屈なはずなのに、鼻歌混じりに楽しそうに僕を見つめるクオーツの視線がだいぶ鬱陶しかった。
「ふぅっできた!結構いいんじゃない!?」
「見せて?」
「ほれ!どうよ!」
思いのほか上手く描けた完成品を満足気にむふんっとクオーツに渡し、さぁ思う存分褒め讃えよ、とにまにま待つと、そんな僕の斜め上を行くクオーツの反応が返ってきた。
「―――嬉しい、宝物にするね」
「お、おぉ……そんなに気に入った?」
「うん、早急に額縁に入れて飾らせよう」
「や、そんな大袈裟な…なんか恥ずかしいからそれはやだ」
「これはもう私のものでしょ?私の好きにさせて」
「えー……」
「ふふ、ラズが描いてくれた私……ふふ」
「……そんな喜ぶ?きも」
心底嬉しそうなクオーツを横目になんだか照れくさくなってきて、誤魔化そうとガチャガチャ道具を片付ける。
「さ、さっ約束だからな!明日からは解禁だから止めないでよね!」
「はいはい、その代わり」
「?―――っわ!?」
変に含みを持たせるクオーツを怪しい、と思う暇もなく、気付いた時には腕を引かれ、座っていたクオーツの膝の上に乗り上げる体勢になっていた。
降りようにもガッシリ腰をホールドされ、全く身動きが取れない。
「は!?なに!?なにっ!?」
「明日ベッドから起き上がれたら、ね」
「はぁぁぁ!?おまっ、話が違―――んぐぅっ、」
僕の必死の抗議はぱっくり塞がれた口の中に消えていく。
「ラズ……しよ」
どこでそんなスイッチが入ってしまったのか、戯れレベルのキスでは無いキスをたっぷりお見舞いされ、あっという間に足腰が立たないグズグズ状態になれば向かうはベッド一直線。
夕食の準備が遅れてしまうと出ていったマリンの心配をよそに、食べる側の準備が整ったのはそれからゆうに数時間は後の事だった。
とある日の昼下がり。
国王陛下が一日の大半を過ごす絢爛豪華な調度品に囲まれた書斎の一番目立つ壁一面に、とある一枚の絵がポツンと飾られた。
立派な金の額縁に入れられたその絵は、王城内で見受けられるどの絵よりも群を抜いてお粗末で、お世辞にも上手いとは言えない殴り書きのような似顔絵。
そんな絵を国王はそれはそれは愛おしそうに眺めては私の宝物だ、と未来永劫大切にし続けた。
暇つぶし-END-
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