VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第173話 マヨイは話を逸らせない。

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⚫︎マヨイ

「私のフレンドを1人呼んでもいいか?」

「理由によるかな」

 テコの南門近くにある宿屋の一室に移動してすぐジャスティからそう提案された反射的に理由を聞いた。

「その子は商人の素質を持っていてな。何か約束をすることになれば契約書にしておくのが手っ取り早いだろ?」

 確かに何らかの約束をすることになった時に契約技能を持っているプレイヤーがいれば助かる。僕の知り合いの中ではクレアが契約技能を持っているけど、今日は暁や織姫と同じように学校の登校日でログインしていない。ログインしていても頼むことはないだろうけどね。

「そうだね。僕は構わないよ。クオンたちはどう?」

「……契約書って何だ?」

「クオンには前にそういう技能もあるんだって前にも教えたじゃない!ジャスティさん、私が契約書を作れるのでフレンドさんを呼ばなくても大丈夫です」

 そういえばカナタは商人の素質を持っていたな。

「ならお願いするよ。ただ私としては受け取った鱗の相場から交換した素材──私の場合はワイバーン1匹分だな──の相場を引いた金額をマヨイに渡せば解決だと思っているんだ」

 僕としては1度納得して終わった取引を不平等だったからと遡及そきゅうしてまで平等な取引にしようとする理由が分からないものの、ここで文句を言っても平行線になるだけというのは分かる。損する話でもないし諦めて差額のRを受け取ることにした。

「分かった。えっと龍鱗が1枚で6万Rらしいから100枚で600万R、ワイバーンは丸々1匹分の素材で15万Rだっけ?」

「いや、それは少し前の話だよ。今はレベリングや装備を整えるために乱獲されたから12万くらいになるはずだ」

 ジャスティは曲がったことが嫌いなのか、それとも馬鹿正直なだけなのか、自分が不利になるような情報を何の躊躇いもなく教えてくれた。

「588万Rって結構な大金だと思うんだけど……」

「所持金ギリギリだけどイベントで稼いだ分があるからね」

 僕らもイベントではかなり所持金が増えた方だけど、それでも1人当たり500万Rくらいだ。ランキング1位の僕らよりも稼いだプレイヤーが少ないと思うんだけど、それをここで聞いて話が拗れるのも面倒くさい。僕は若干の違和感を覚えながらもジャスティからお金を受け取った。

「それで? クオンがジャスティと同じ方法を使うなら59万くらいになると思うけど……」

「……無理だ。俺たち2人合わせても足りねぇ」

「私たちイベントが終わってすぐに騙されてお金や装備を取られちゃったんです……」

「「はい?」」

 クオンとカナタに許可を貰ってから装備の性能を見せて貰った。確かに2人の位階を考えると弱い。具体的にはアルテラの武具屋で買えるという装備の中でも最も安価なものと同程度だ。しかし、見た目だけはアルテラの武器屋で売られている高級品と瓜二つだ。
 2人の装備の製作者の名前はヘンリー。おそらく意図して作られた贋作だろう。ご丁寧に鑑定偽装なんて効果が付与されていた。

「これは酷いな」

「そうなのか?」

「ご丁寧に鑑定偽装なんて効果が付与されてるよ。最初から騙す気でないとこんな装備は作らないと思うよ」

「誰だ!こんな子どもを騙すような真似をした屑は!」

「高位鑑定には製作者よ名前にヘンリーって出てる」」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。この装備を俺たちに渡してきたのはアントニウスって奴だったぞ。なぁカナタ?」

「うん。確かにアントニウスって人でした」

 考えられるパターンは2つだ。
 1つは製作者であるヘンリーとアントニウスが同一人物であるパターン。前にアルテラの組合で合ったクズノハのように犯罪者プレイヤーにはパーソナルに表示される名前を偽装する手段がある。
 もう1つはヘンリーとアントニウスが別人であるパターンだ。組織だった詐欺行為とでも言えばいいのかな。クズノハたちのようなPKの集まりが存在していることを考えれば詐欺グループが存在していても不思議じゃない。

「詳しく話を聞かせて貰えないかな?」

「……俺たち、イベントで上の難易度に挑むために新しい装備が欲しくてPiCっていう大きなギルドに行ったんだ。でも同盟っていうギルド同士の約束があって朱桜會っていうギルドの人の装備を優先的に作らないといけないから無理だって断られたんだよ」

「そうしたらPiCの人が優秀な加工プレイヤーがいるっていう小規模ギルドを紹介して貰ったんです」

「……そのギルドの名前は?」

「道具箱ってとこだぜ。アルテラの北門近くにギルドホームがあったんだけど、そこに言ったらアントニウスって奴が『君たちの装備とイベント素材があれば強い装備が作れるから君たちの装備を俺たちに渡してくれないか』って言ってきたんだ」

「私たちも最初は装備を全部預けるのは怖かったんですけど、そう言ったら今の装備を代わりに使っていいと言われて……」

 この見た目だけの装備に簡易鑑定を使うと鑑定偽装の効果で凄い優秀な装備に見える。ちなみに僕の場合、ステータスが鑑定偽装の効果を無視してしまうのか偽装された内容までは確認できない。
 2人はまんまと騙されてしまったんだろう。

「この装備を装備してイベントに行ったらすぐに死んじまってさ。おかしいと思って道具箱のギルドホームに行ったんだけどよ……」

「道具箱のギルドホームには誰も居なくて……」

「その件について組合には言った?」

 クオンとカナタの話を聞く限りアントニウスは2人を騙してはいるが嘘は言っていない。運営が動いてくれるかは微妙なところだろう。しかし、組合なら悪質なギルドに対して何らかのアクションを起こしてくれるはずだ。

「それが……道具箱という名前のギルドは存在しないと言われてしまったんです」

「でもアントニウスって奴のパーソナルには所属の欄に道具箱って書いてあったんだ」

「どう言うことだ?」

「所属欄に書いてあるギルドが実際には存在しない、か」

 それはいったい、どういうことなんだ?
 クズノハのようにパーソナルを偽装していたのか、それとも僕が知らない何らかの仕組みが存在しているか。これはクオンたち以外の被害者が増える前に知っておいた方がいいかも知れない。

「それでよ、俺たちに金がないからジャスティみてぇには払えねぇ。だから借金というか分割払いというか、そんな感じにしたいんだ。ダメか?」

「いいよ」

 上手く話を逸らせたかと思ったんだけど、そう上手くは行かなかった。僕とクオンたち3人はお互いにフレンド登録をした後、クオンと僕で契約書を交わしてから解散した。
 ちなみに契約書の内容はクオンが僕に対して58万Rの借金を1ヶ月以内に返すといった利子も罰則もないものだ。僕としては守られなくても問題がないのだから別にかまわないよね。


───────────────
お読みいただきありがとうございます。
※パーソナルの所属欄に関する謎解きは読者の方でも現時点で正解に辿りつけるようになっています。

早いもので今月の12日で初投稿から1年になります。
この作品がここまで続いたのはひとえに読者様のおかげです。ありがとうございます。
これからも拙作をよろしくお願いします。
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