木漏れ日の中で

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兄と父の来訪からどのくらい寝ていたのか。外はとっくに暗く、扉の外を見てみてもご飯は無い。代わりに当てつけかのように捨てられた僕が食べるはずだった物が落ちていた。

夜ご飯は諦めるしかないか。
扉を閉め振り返ると父が置いていった本が目に入る。
兄に踏まれた足をかばい、パラパラとすべてに目を通して見る。
内容はマナーや教養に関して。分かることもあれば分からないものもある。というか、分からない方が大半か。このまま勉強もせずに学園に入っても、苦労するのは自分自身になるのでやることの無い役立たずの僕は1日中テキストに向かい合った。

それから1年、思ったよりも勉強をすることに楽しさを感じた僕はテキストを無事終わらし一応学園に入っても恥はかかないレベルになったと思う。
途中、父の命によりいろいろな分野の家庭教師にお世話にもなった。しかし彼らもやはり、兄同様僕を鬱憤晴らしの対象としてみているようで、指導に紛れて私的な怒りから罵り、手を挙げてくる。

それでもなんとか耐えた。学園に行けば卒業するまでの5年間は寮生活となり、この家から離れられるからだ。

17歳になった僕は貴族の子なら誰でも通う学園へ行く準備をしている。通常は12歳までが家で家庭教師によって知識を蓄え、13歳から16歳までの3年間でスクールに通う。これは家からの通学になるが目的はその後の学園生活に向けて。学校の制度に慣れるため、人脈を簡易に形成するためである。

僕は出遅れているし、魔力はないし、社交界には兄や母による吹聴のせいでかなりの悪評が流れている。
きっと、楽な生活にはならないだろう。
でも、この狭い部屋で兄や母の訪問におびえる事から暫く解放されるのだ。それだけで今すぐにでも行きたくなる。

この部屋につれてこられた時点で僕の大切なものは全て無くなったし、何を持っていけばいいのか分からない。大人しくベッドに腰掛けていると扉が開かれる。
「・・・準備は。」
「終わりました。」
「荷物は。」
「・・・ないです。」
どちらがメイドなのか分からない会話だな。なんて思いつつ答える。
制服は既に各々の部屋に置かれているようだし、教科書や筆記用具なども初めは用意されているらしい。
ならそれで十分だ。

メイドは僕を一瞥すると、ついてこいと言うように顎をクイッとする。慌ててついていくと裏門に侯爵家とわかる馬車が。体裁を気にする父だ。いつもは乗せてもらえない馬車を使わせてくれるらしい。
見送りには誰も来ない。メイドももういなくなっていた。送迎者が早くしろよと言いたげな顔をしていたので急いで乗り込んだ。
馬車は何も言わずに出発したようで、突然の揺れにつんのめりそうになる。

馬車の乗り心地は思ったよりも悪く途中から気持ち悪くなってしまった。しかしそんな事を言っても止めてもらえないので何とか耐える。ついたのは日が落ちてから。ポイと学園に捨てられるかのように馬車から降ろされ、何も言わずにまた馬車は行ってしまった。

おそるおそる門をくぐり何とか寮へ辿り着く。受付に名を告げるとにこやかな顔が一変し説明もなしに鍵だけ渡されて追い払われてしまった。
トボトボと鍵についている番号の部屋を探す。
30分かけて探し出し、たどりついたのは、3階の一番奥の部屋。明らかに他の部屋から離されていて、廊下の照明も途中から僕の部屋にかけてはついてない。
「暗いのは、怖いな」
呟きながら急ぎ足でこれから5年間過ごすことになる部屋へ向かった。
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