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俯きながら周囲の視線を感じる。
あの離れに閉じ込められてからは人前に出たことはない。
食堂での周囲の態度を思い出し、これからさらに大人数の前に晒されることを想像すると、向けられるであろう冷たい視線や悪意のある陰口に恐怖を覚える。
緊張から冷たくなった手をそっと握りしめていると、移動を伝える旨の指示が通る。
他の生徒が立つのに合わせて僕も立ち上がる。
この学園でのクラス分けは1年生は成績関係なしに魔力量で決められる。なので、僕のいるクラスは必然的に魔力量が少ない子達だと分かるが、少ないと言っても貴族の子達なのだからその量は膨大である。
今年は4クラスに分けられているようだ。
僕は4クラス目の一番最後。
最後だと席に着くまでの行動も視線で追われてしまう。そんな事を考えて、さらに憂鬱になる。
その間に既に他のクラスは講堂に入場しているらしい。僕たちのクラスも動き始めている。
僕はあまり目立たないように前の生徒に隠れるように歩こうかな。なんて思っていると、前の生徒が振り返ってきた。
「ねぇ、君と距離が近いなんて思われたくないから近づかないでよ?」
初めて学園に入り直接言われた言葉がこれ。
僕がどんな顔をしているかは自分では見れないがきっと少しだけ傷ついた顔をしてるはず。
だって思ったよりもショックだったから。
何も言えず俯き少しだけ後退してみる。
すると彼は満足したのか鼻を鳴らし前を向いて歩き出した。
僕は彼より数歩遅れて歩くことに。
貴族の列に数歩の遅れ。それだけでもやはり目立ってしまうものだ。その原因を作っているのが僕だから余計に。
上級生の近くを通るとクスクス嘲笑う声。
周囲なんて怖くて見れず俯きながら歩くしか無かった。
(早く席につかないかな。)
そう思いながら嘲笑と好奇心の目に晒されることになった。
それからなんとか席まで着いた僕は安心したのもつかの間、杖が置いてある事に気づく。
わけもわからずそれを取り、他の子に習って席に着く。それから学園長や代表生徒などのあいさつを終え、式も終盤になっていた。
「今年入場した生徒の皆さん。不慣れなことや戸惑うこともあるかもしれませんが、私たち教員もしっかり向かい合って貴方達をサポートします。安心して過ごしてください。では、手元にある杖を持ってください」
式を進行していた教員が締めくくりの言葉を言い始める。しかし僕はその言葉にピンチに落ちてしまう。
どうやらこの学園ででは伝統として入学生にこれから魔法を使うためにサポート道具となる杖を配るらしい。そして、式の終わりに入学生が天井に向かって魔法を放つと。普通に考えると、一斉に放つので僕が目立つことはないはずだ。でも状況が違う。僕は一番最後のクラスで最後に入場した。つまり、講堂の席は一番端なのだ。そして新入生をコの字で囲むように上級生は座っている。
つまり、僕が魔法を放たないのを目撃する人が多く出るのだ。
元々魔法が使えないことは知られているのでその事実がここで改めて認識されるのは構わないが、僕が恐れているのは魔法が使えないのに杖を天に向ける行為や魔法を放てず立ち尽くす事を笑われることだ。
他の生徒が立ち上がる中、僕は杖を握りしたものの立ち上がることはできず、座ったまま俯いていた。
・・・その手は震えていたと思う。
僕と席の近い上級生達は少しザワついていたと思う。「あり得ない」「何してるの?」という声が聞こえた気がしたから。
隣の生徒も嫌そうな顔で僕を見ていた。
他の生徒が立ち上がるまでの時間は一瞬のはずなのにすごく長く感じて怖い。
ぐるぐると頭の中で今からでも立ち上がったほうがいいのかな。と考えるも僕にはその度胸はない。
「スタートダッシュ失敗したなぁ」
なんて泣きそうにりながら思っていたら大きな歓声が上がった。驚き続きも反射で上を見てみると色々な魔法が天井に向かって伸びキラキラと散っていった。
「・・・きれい」
思わずでた言葉に慌てて口を塞ぐ。
幸い、隣の席の子は立ち上がっているので気づいていないようだ。上級生にも小声は拾われなかったようで安心した。
それからは新たに資料を配られ、教科書の配布や時間割などこれからの学園生活に必要な事項などに目を通した。
そしてようやく解散となりみんなスクールの時から関係のある子や同室の子などを誘って次々と講堂を出ていく。
僕はもう疲れ切っていて今人混みを歩く体力はない。ゆっくりと配布された資料を鞄に入れる。
ふと、杖をどうしようか迷う。だって僕は魔法使えないし。でも、置いていくのも違う。それに授業で使うのなら形だけでも持っておかないといけないはず。
僕が杖を持ってもいい理由を考えながらそっと鞄に閉まった。
そして出入り口が落ち着くまで鞄を抱きしめながら俯いて待っていた。
あの離れに閉じ込められてからは人前に出たことはない。
食堂での周囲の態度を思い出し、これからさらに大人数の前に晒されることを想像すると、向けられるであろう冷たい視線や悪意のある陰口に恐怖を覚える。
緊張から冷たくなった手をそっと握りしめていると、移動を伝える旨の指示が通る。
他の生徒が立つのに合わせて僕も立ち上がる。
この学園でのクラス分けは1年生は成績関係なしに魔力量で決められる。なので、僕のいるクラスは必然的に魔力量が少ない子達だと分かるが、少ないと言っても貴族の子達なのだからその量は膨大である。
今年は4クラスに分けられているようだ。
僕は4クラス目の一番最後。
最後だと席に着くまでの行動も視線で追われてしまう。そんな事を考えて、さらに憂鬱になる。
その間に既に他のクラスは講堂に入場しているらしい。僕たちのクラスも動き始めている。
僕はあまり目立たないように前の生徒に隠れるように歩こうかな。なんて思っていると、前の生徒が振り返ってきた。
「ねぇ、君と距離が近いなんて思われたくないから近づかないでよ?」
初めて学園に入り直接言われた言葉がこれ。
僕がどんな顔をしているかは自分では見れないがきっと少しだけ傷ついた顔をしてるはず。
だって思ったよりもショックだったから。
何も言えず俯き少しだけ後退してみる。
すると彼は満足したのか鼻を鳴らし前を向いて歩き出した。
僕は彼より数歩遅れて歩くことに。
貴族の列に数歩の遅れ。それだけでもやはり目立ってしまうものだ。その原因を作っているのが僕だから余計に。
上級生の近くを通るとクスクス嘲笑う声。
周囲なんて怖くて見れず俯きながら歩くしか無かった。
(早く席につかないかな。)
そう思いながら嘲笑と好奇心の目に晒されることになった。
それからなんとか席まで着いた僕は安心したのもつかの間、杖が置いてある事に気づく。
わけもわからずそれを取り、他の子に習って席に着く。それから学園長や代表生徒などのあいさつを終え、式も終盤になっていた。
「今年入場した生徒の皆さん。不慣れなことや戸惑うこともあるかもしれませんが、私たち教員もしっかり向かい合って貴方達をサポートします。安心して過ごしてください。では、手元にある杖を持ってください」
式を進行していた教員が締めくくりの言葉を言い始める。しかし僕はその言葉にピンチに落ちてしまう。
どうやらこの学園ででは伝統として入学生にこれから魔法を使うためにサポート道具となる杖を配るらしい。そして、式の終わりに入学生が天井に向かって魔法を放つと。普通に考えると、一斉に放つので僕が目立つことはないはずだ。でも状況が違う。僕は一番最後のクラスで最後に入場した。つまり、講堂の席は一番端なのだ。そして新入生をコの字で囲むように上級生は座っている。
つまり、僕が魔法を放たないのを目撃する人が多く出るのだ。
元々魔法が使えないことは知られているのでその事実がここで改めて認識されるのは構わないが、僕が恐れているのは魔法が使えないのに杖を天に向ける行為や魔法を放てず立ち尽くす事を笑われることだ。
他の生徒が立ち上がる中、僕は杖を握りしたものの立ち上がることはできず、座ったまま俯いていた。
・・・その手は震えていたと思う。
僕と席の近い上級生達は少しザワついていたと思う。「あり得ない」「何してるの?」という声が聞こえた気がしたから。
隣の生徒も嫌そうな顔で僕を見ていた。
他の生徒が立ち上がるまでの時間は一瞬のはずなのにすごく長く感じて怖い。
ぐるぐると頭の中で今からでも立ち上がったほうがいいのかな。と考えるも僕にはその度胸はない。
「スタートダッシュ失敗したなぁ」
なんて泣きそうにりながら思っていたら大きな歓声が上がった。驚き続きも反射で上を見てみると色々な魔法が天井に向かって伸びキラキラと散っていった。
「・・・きれい」
思わずでた言葉に慌てて口を塞ぐ。
幸い、隣の席の子は立ち上がっているので気づいていないようだ。上級生にも小声は拾われなかったようで安心した。
それからは新たに資料を配られ、教科書の配布や時間割などこれからの学園生活に必要な事項などに目を通した。
そしてようやく解散となりみんなスクールの時から関係のある子や同室の子などを誘って次々と講堂を出ていく。
僕はもう疲れ切っていて今人混みを歩く体力はない。ゆっくりと配布された資料を鞄に入れる。
ふと、杖をどうしようか迷う。だって僕は魔法使えないし。でも、置いていくのも違う。それに授業で使うのなら形だけでも持っておかないといけないはず。
僕が杖を持ってもいい理由を考えながらそっと鞄に閉まった。
そして出入り口が落ち着くまで鞄を抱きしめながら俯いて待っていた。
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