実の父に隣国へ死にに行けと言われた王女は、隣国の王に溺愛される。

曼珠沙華

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大理石の柱がそびえ立ち、無数の燭台が光を投げかける王宮の大聖堂。
彩り豊かなステンドグラスから差し込む陽光は、まるで祭壇の前に立つ私たちを祝福してくれているみたいだった。

けれど眩しさよりも強く私を包み込んでくれるのは、隣に立つロゼ様の視線。
優しい瞳で見つめるその人が自分の未来を明るく照らしてくれている。

身に纏うのは美しい純白のドレス。
髪にはロゼ様から頂いたクリスタルの花の髪飾り。

信じられないほど幸せだった。

私たちの前に立つ神父様の朗々たる声が響く。

「サファイア国の王ロゼリアージュ。汝は生涯をかけ、この女性を愛し、守り抜くことを誓いますか?」

「命を懸けて誓おう。オリビアを愛し、守り抜くと」

低く、若さを帯びた声が堂内に響いた。
その目は威厳を超えて熱を帯び、ただひとり私だけを見つめてくれる。
胸が苦しいほどに甘く、頬が熱くなった。

神父様は私の方を向き、厳粛に問いかける。

「エメラルド国の眠り姫オリビア。汝は王を支え、その愛に応え、共に王国を照らす光となることを誓いますか?」

震える唇を開き、私は迷わず答えた。

「誓います。どんな時も、共に……ずっとロゼ様と一緒に……」

想いが込み上げ、最後は言葉になっていなかったかもしれない。
けれどロゼ様の指が私の指に触れ、目を細めるその表情に想いはきちんと伝わったことが分かった。

「それでは誓いの口づけを」

ロゼ様が一歩近づき、紺碧の瞳で私を見つめる。
その視線に心臓が壊れてしまいそうになる。

唇が触れる直前、ロゼ様の鼓動が私の同じ速さで高鳴っているのが伝わった。

あぁ、きっと同じ気持ちなんだ。
私がお慕いしているのと同じくらいきっとロゼ様も愛してくれている。
一瞬であるはずの誓いのキスが永遠のように感じた。

唇を離したロゼ様の顔も心なしか赤い。

「この契りは国の未来であり、永遠の繁栄の証となります」

先ほどまでの荘厳な雰囲気から一変、神父様の表情が柔らかくなった。

「心から祝福します」

同時に起こる拍手喝采。
大聖堂の外からも国民たちの声援が聞こえる。

ぶわっと目頭が熱くなった。
かつて冷たい視線と侮蔑の言葉に晒されていた自分が今、王国中から祝福されている。

ロゼ様の隣に立つ自分がいまだ信じられず、足が震えた。

「オリビア、これからは俺が必ず幸せにする。絶対に。今まで辛い思いをしてきた分、これからはそれ以上に幸せになるんだ」

胸が高鳴った。
それは、いつか夢に見たお母さんの言葉だった。

せっかくお化粧をしてもらったのに、涙が溢れた。

「もう充分、幸せ過ぎますよ」

お母さん、見てるかな?
私、幸せになれたよ。
この優しい竜の国で。

ふっと暖かい風が吹き抜けた。
それがお母さんからの「おめでとう」の言葉のように感じた。
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