実の父に隣国へ死にに行けと言われた王女は、隣国の王に溺愛される。

曼珠沙華

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初めてロゼリアージュ様を、いえロゼ様を見た時、なんて美しい人なのかしらと思った。

今度エメラルド国に帰った時、人相画を描かせたあの従者は即刻処刑ね。
わたくしに偽りを見せたのだから。

だってロゼ様はあの人相画よりはるかに美しい。

彼こそわたくしの伴侶にふさわしい相手。

オリビアがロゼ様の花嫁なんてとんでもない。
何故ロゼ様はオリビアを受け入れているのかしら。
あんな醜い娘ではわたくしの代わりになるはずもないのに。

王の間に案内され、しばらく待たされたが、姿を見せたロゼ様はわたくしの顔を見て首を傾げ、訝しげな表情をしていた。

もっと歓喜の表情を見せてくれると思ったけれど、すぐ納得できた。

どうして今わたくしと会えているのか分からないという顔。
わたくしが目の前にいる奇跡に戸惑っているんだわ。

綺麗な顔立ちをしているのになんて可愛らしいの。

こんな美しい方がわたくしを想って婚姻を申し入れてきたなんて、すごく興奮しちゃう。

わたくしを前にそんな戸惑った姿をお見せになるなんて、わたくしへの気持ちがだだ漏れですわ。
抱き締めて、愛を囁かれるのと同じこと。

でも妹のオリビアという存在のせいでそれができないでいるのね。

可哀想。
早くオリビアから解放してあげなきゃ。

「私はロゼリアージュ。エメラルド国の姫、この国へ来た理由はオリビアに会いにきたということでいいのかな」

声もとても素敵。

本当はあなたに会いに来たのよ。
そう言えばあなたは泣いて喜ぶのでしょうね。

でも、まだだめ。
まだ言ってあげない。

だって男の人というものは焦らされれば焦らされるほど夢中になっちゃう生き物だから。
すぐに手に入る女と思われてはだめ。

駆け引きが大事よ。

「はい。可愛いオリビアが元気にしているのか気になっていてもたってもいられず、こうしてサファイア国まで来てしまいました」

「そう。できれば事前に連絡してほしかったところだけど」

わざと連絡しなかったに決まっているじゃない。

恋焦がれている相手が突然会いに来てくれたら、より愛しさを感じるでしょ?

気持ちの整理をして落ち着く時間が欲しかったのに、わたくしにサプライズされて、わたわたしちゃって。

本当可愛らしい。

魔の国だってお父様たちが言うから少しだけ不安だったけど、全ては杞憂だった。
サファイア国もエメラルド国とさほど変わらない。

みんな、わたくしの虜になる。



「あ、あの……」

せっかくロゼ様を思い出していい気分だったのに、か細い声がそれを邪魔した。

じろりとそちらを見る。

「なによ」

視線の先には、朝食を食べることを許さず、床に正座させたオリビアがいる。

そっちから話しかけてきたくせに、返事をすればびくりと体を震わせる。
そしてなかなか次の言葉を口にしない。

あぁ、本当にイライラする。
こんな醜い妾の娘が「ロゼ様」と口にするなんて忌々しい。

ロゼ様が優しいから自分が本当の花嫁になれたような気がして、勘違いしているのね。

これで死ぬことを躊躇われでもしたら厄介だわ。

優しいロゼ様のことだからオリビアを拒絶できずにそのまま結婚してしまうかも。

ロゼ様はまだ知らないけれど、わたくしとロゼ様は既にもう両想い。
愛し合っている。

そんなわたくしたちを引き裂こうとするなんて、許さない。

これからきっちり身の程ってものを教えてあげなくちゃ。

絶対に悲恋になんてさせなくてよ。

「い、いつエメラルド国へお帰りになられるのですか?」

今にも消え入りそうな声でオリビアが問う。

あら。
オリビアにしてはいい質問するじゃない。

「あぁ、それね。帰らないわよ」

「え……」

絶望した表情が本当にたまらない。

「あなたも異国の地で独りっていうのも寂しいでしょう?わたくしが傍にいてあげるわ。嬉しいでしょう?」

オリビアの本音は分かっている。
けれど、それを言葉にする勇気がこの娘にあるはずがない。

微笑んで「それがいいわよね?」と言えば、オリビアは了承することしかできない。

本当に、つくづく惨めな女ね。
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