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「ねぇ、ラビンス。どうしてエメラルド国とサファイア国の戦争は始まったの?」
私は、部屋に飾られていた花の手入れをしているラビンスの背中に問いかけた。
突然の問いに目を丸くするラビンス。
作業する手を止め、ティータイムの途中だった私の傍までラビンスは来てくれた。
「知りたいの。本当のこと。ここでなら、本当のことを知ることができそうだから」
「ここでなら」という言葉にラビンスは引っかかったようだった。
「……エメラルド国ではどのような理由でしたか?」
「サファイア国は魔の国だからって。だからエメラルド国は正義の戦いをしたんだって」
おおかた予想はできていたのだろう。
ラビンスの顔に驚いた表情はなく、ただ切なさを感じさせた。
「ごめんなさい。気分悪くさせたよね」
「いえ、どの国からも思われていることですので。お気になさらないでください」
「ロゼ様も同じようなこと言ってた。魔の国と思っているのはエメラルド国だけじゃないって」
「魔の国であることの理由は聞かれないのですか?」
ラビンスの問いに少し悩んだが、首を横に振った。
「うん。それはロゼ様がいつか話してくれるのを待つよ」
ロゼ様の言葉を思い出す。
彼のことを思い出しただけで、顔が自然とほころんだ。
「勇気がいるんだって。だからロゼ様が話してくれる時まで待ちたいの」
「勇気ですか。それは私も同感です。オリビア様にサファイア国を、私たちを嫌いになってほしくはありませんので」
私が、サファイア国を嫌いになる?
そんなことがありえるのかな?
どんな理由があったら、この国を嫌いになれるというんだろう。
この国は、私に幸せな日々しか与えていないのに。
でも、今はそれよりも……。
「教えて。戦争の本当の理由を」
本当のことが知りたい。
その覚悟を感じ取ってくれたのか、ラビンスは「かしこまりました」と了承してくれた。
そして、話してくれた。
エメラルド国とサファイア国が何故戦争をすることになったのか。
エメラルド国は豊かな土と水に恵まれ、豊富な農作物で栄えてきた国だった。
自然と共に生きるこの国は穏やかで、とても平和だった。
だが、それはラファエル王の時代までの話だった。
その息子である皇太子が王になると、その政策は全く違うものになった。
何を思ったのか、新たな王は突然軍事力の強化に打ち出たのだ。
強欲な王は他国の物を欲しがり、侵略するための力を欲したのだ。
軍事施設のためにそれまで大切にされてきた自然はないがしろにされ、兵器の開発のために土や川は汚染されていった。
エメラルド国の愛すべき自然はどんどん破壊されていった。
すると今度は農作物にも影響が出るようになった。
作物が育たず、育っても病にかかり、実りが悪い。
力のために、侵略のためにと始めたことが、逆にエメラルド国を貧しい国へと追い詰めていった。
新たな王はより他の国が欲しくなった。
貧しい国なんて要らない。
もっと大きい国が欲しい。
そこで目をつけたのが隣の大国、サファイア国だった。
他国からも気味悪がられているサファイア国を攻めれば、きっと他の国からの増援も得られる。
身の程を知らない小さな国の王は、エメラルド国は魔と戦う正義の国だと主張し、サファイア国へ攻め入った。
だが、どこからも援軍を得られなかったエメラルド国はあっけなく敗戦した。
当然だ。
“魔の国”なんて、ただの噂に過ぎないから。
そんなことで大国に戦いを挑む無謀な国は他にない。
サファイア国はただ言いがかりをつけられ、それに応戦しただけだった。
ラビンスから戦争の本当の理由を聞き、オリビアはため息をついた。
そんなことだろうと思った。
エメラルド国の塔に閉じ込められていた頃だったら、父の言葉をそのまま受け入れるしかなかった。
洗脳だってきっと容易かった。
でも今ならどちらが真実か分かる。
オリビアはラビンスを下がらせて窓の外を見た。
決してここからは見ることができない遠い隣国に思いをはせる。
自分たちの行いで国が瘦せたにもかかわらず、他国に侵攻するなんて。
どこまで幼稚で身勝手なのか。
王の稚拙な振る舞いで、私もお母さんも長年苦しめられてきた。
お母さんを殺した彼らが憎い。
そして、こんな優しい人たちが住む国を魔の国と忌み嫌う彼らが許せない。
きっとこの先もエメラルド国はサファイア国へ悪い影響を与え続ける。
アリスが王妃になるならなおさらだ。
エメラルド国の思惑を知っているのは私しかいない。
オリビアは数少ない荷物の中に入っていたある物を取り出した。
それは自害するようにと持たされた毒の瓶と一緒に入っていた物。
革の鞘に収められたそれは、小さな短剣。
鞘から出せば、それは銀色の輝きを放った。
おおかた、毒で死ねなかった時のために持たせたのだろう。
これで心臓を貫いて死ね、と。
私は絶対に、彼らを許さない。
彼らの好きにはさせない。
もちろんアリスを王妃になんて絶対させない。
なにより私が死ぬことによって、サファイア国の立場を悪くするわけにはいかない。
お母さんは命を懸けて私を守ってくれた。
私もお母さんのように生きたい。
私は、私の命を大切なサファイア国のために使う。
私は、部屋に飾られていた花の手入れをしているラビンスの背中に問いかけた。
突然の問いに目を丸くするラビンス。
作業する手を止め、ティータイムの途中だった私の傍までラビンスは来てくれた。
「知りたいの。本当のこと。ここでなら、本当のことを知ることができそうだから」
「ここでなら」という言葉にラビンスは引っかかったようだった。
「……エメラルド国ではどのような理由でしたか?」
「サファイア国は魔の国だからって。だからエメラルド国は正義の戦いをしたんだって」
おおかた予想はできていたのだろう。
ラビンスの顔に驚いた表情はなく、ただ切なさを感じさせた。
「ごめんなさい。気分悪くさせたよね」
「いえ、どの国からも思われていることですので。お気になさらないでください」
「ロゼ様も同じようなこと言ってた。魔の国と思っているのはエメラルド国だけじゃないって」
「魔の国であることの理由は聞かれないのですか?」
ラビンスの問いに少し悩んだが、首を横に振った。
「うん。それはロゼ様がいつか話してくれるのを待つよ」
ロゼ様の言葉を思い出す。
彼のことを思い出しただけで、顔が自然とほころんだ。
「勇気がいるんだって。だからロゼ様が話してくれる時まで待ちたいの」
「勇気ですか。それは私も同感です。オリビア様にサファイア国を、私たちを嫌いになってほしくはありませんので」
私が、サファイア国を嫌いになる?
そんなことがありえるのかな?
どんな理由があったら、この国を嫌いになれるというんだろう。
この国は、私に幸せな日々しか与えていないのに。
でも、今はそれよりも……。
「教えて。戦争の本当の理由を」
本当のことが知りたい。
その覚悟を感じ取ってくれたのか、ラビンスは「かしこまりました」と了承してくれた。
そして、話してくれた。
エメラルド国とサファイア国が何故戦争をすることになったのか。
エメラルド国は豊かな土と水に恵まれ、豊富な農作物で栄えてきた国だった。
自然と共に生きるこの国は穏やかで、とても平和だった。
だが、それはラファエル王の時代までの話だった。
その息子である皇太子が王になると、その政策は全く違うものになった。
何を思ったのか、新たな王は突然軍事力の強化に打ち出たのだ。
強欲な王は他国の物を欲しがり、侵略するための力を欲したのだ。
軍事施設のためにそれまで大切にされてきた自然はないがしろにされ、兵器の開発のために土や川は汚染されていった。
エメラルド国の愛すべき自然はどんどん破壊されていった。
すると今度は農作物にも影響が出るようになった。
作物が育たず、育っても病にかかり、実りが悪い。
力のために、侵略のためにと始めたことが、逆にエメラルド国を貧しい国へと追い詰めていった。
新たな王はより他の国が欲しくなった。
貧しい国なんて要らない。
もっと大きい国が欲しい。
そこで目をつけたのが隣の大国、サファイア国だった。
他国からも気味悪がられているサファイア国を攻めれば、きっと他の国からの増援も得られる。
身の程を知らない小さな国の王は、エメラルド国は魔と戦う正義の国だと主張し、サファイア国へ攻め入った。
だが、どこからも援軍を得られなかったエメラルド国はあっけなく敗戦した。
当然だ。
“魔の国”なんて、ただの噂に過ぎないから。
そんなことで大国に戦いを挑む無謀な国は他にない。
サファイア国はただ言いがかりをつけられ、それに応戦しただけだった。
ラビンスから戦争の本当の理由を聞き、オリビアはため息をついた。
そんなことだろうと思った。
エメラルド国の塔に閉じ込められていた頃だったら、父の言葉をそのまま受け入れるしかなかった。
洗脳だってきっと容易かった。
でも今ならどちらが真実か分かる。
オリビアはラビンスを下がらせて窓の外を見た。
決してここからは見ることができない遠い隣国に思いをはせる。
自分たちの行いで国が瘦せたにもかかわらず、他国に侵攻するなんて。
どこまで幼稚で身勝手なのか。
王の稚拙な振る舞いで、私もお母さんも長年苦しめられてきた。
お母さんを殺した彼らが憎い。
そして、こんな優しい人たちが住む国を魔の国と忌み嫌う彼らが許せない。
きっとこの先もエメラルド国はサファイア国へ悪い影響を与え続ける。
アリスが王妃になるならなおさらだ。
エメラルド国の思惑を知っているのは私しかいない。
オリビアは数少ない荷物の中に入っていたある物を取り出した。
それは自害するようにと持たされた毒の瓶と一緒に入っていた物。
革の鞘に収められたそれは、小さな短剣。
鞘から出せば、それは銀色の輝きを放った。
おおかた、毒で死ねなかった時のために持たせたのだろう。
これで心臓を貫いて死ね、と。
私は絶対に、彼らを許さない。
彼らの好きにはさせない。
もちろんアリスを王妃になんて絶対させない。
なにより私が死ぬことによって、サファイア国の立場を悪くするわけにはいかない。
お母さんは命を懸けて私を守ってくれた。
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