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オリビアが狂った。ついに、おかしくなった。
この国が惜しくて。
ロゼ様が欲しくて。
短剣を突き付けたオリビアがじりじりと距離を詰めてくる。
「あ、あんたまさか……わたくしを殺そうっていうの」
何も答えないオリビアの瞳はこれがたちの悪い冗談ではないことを語っていた。
振り返って出口に逃げる?
貧弱なオリビアだもの。わたくしの方が速く走れるはず。
でも、もし、オリビアの方が速かったら?追いつかれたら?
鋭い短剣に背中を貫かれる想像がありありと浮かんだ。
どうしたらいい。いつも傍にいて盾になる者たちが今はいない。
わたくしが、オリビアに殺される……。
そしてまんまとこの国でロゼ様と幸せに……?
そんなの、そんなの……ふざけんじゃないわよぉ!!
オリビアが覚悟を決めたようにこちらに走ってくる。
振り下ろされる短剣。
その手首を無我夢中で掴み、捻り上げた。
痛みに声を上げ、オリビアの手から短剣が離れる。
カランッと音を立てて地面に落ちたそれを、すかさず拾い上げた。
今度はこちらが短剣をオリビアに突き付けてやる。
「馬鹿にするんじゃないわよ!育ちが悪くて学のないあんたと違って、わたくしは王宮で護身術を一通り学んでいるのよ!」
短剣を持つ手に力がこもる。
オリビアの無礼な発言の数々。
それだけでは飽き足らず殺意を向けてくるなんて。
オリビアがこちらを見て、馬鹿にしたようにふっと笑った。
怒りで目の前が赤く染まる。
「お前ごときがわたくしを殺そうとするなんて!お前が死ね!」
立ちすくむオリビアの腹に刃を突き立てた。
ずぶりの皮膚を破る感覚。
「あぁっ……」
オリビアが血を吐き、短剣を握りしめたままの手に滴る。
その生温かさ。
なにより、人の体を貫く生々しい感触。
ぞわっと鳥肌がたった。
思わずカッとなってオリビアを刺してしまったが、今まで幾人もの罪人の処刑を命じたことはあっても、自らの手で人を殺めたことはなかった。
「ひぃっ……」
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!
短剣から手を離し、血に染まった両手を見つめる。
「あはは、ははは……」
膝をつき、俯いたオリビアは口から血を流しながら笑っている。
気持ち悪い……。
本当に気が触れたのね。
けれど、顔を上げたその瞳にははっきりとした意思があった。
「愚かなお姉様。人殺しのあなたを誰も王妃にしようとはしないわ」
ヤケになったとは思えないその冷静な口調。
ハッとした。
もう一度血に染まった両手を見て、オリビアの思惑を察する。
はめられた。
「あんた最初からこれが目的で……」
「私は命を懸けて、この国を守る。薄汚い私の母国から」
鋭い眼光がこちらを射抜く。
「この国の平和を邪魔するな。あなたはもう終わり。さよならね、アリス」
「こざかしい真似してっ!」
再び怒りが脳を焼く。
オリビアの髪を鷲掴みして、屋上の塀まで引きずった。
「あんたなんて!あんたなんて、この世から消えちまえ!」
引きずられるオリビアを無理やり立たせ、塀の向こうへ思い切り突き飛ばした。
「さよならは、あんたよ!」
抵抗する素振りも見せず、オリビアの体は目の前から消えていく。
その時、何かが目の前を横切った。
一瞬、視界を埋め尽くすほどの巨大な何か。
それがオリビアを追い、急降下していく。
急いでオリビアが落ちていった先を見下ろせば、それはオリビアが地面に激突するよりも早く、ばくんと口のようなものでその体内におさめてしまった。
食われた……。
巨大なそれは再び浮上し、目の前を横切り、そのままどこかへ飛び去ってしまった。
巨大な体。全身を覆う黒い鱗。
鋭い牙と爪。
青い双眸が一瞬だけこちらをぎろりと睨んだような気がした。
「ひぃっ……い、いや……いやぁぁああああっ!!」
それは、おぞましく恐ろしい闇色の竜だった。
化け物!化け物!!
怖い!食べられた!食べられた!
無我夢中で出口の扉へ向かった。
階段をひたすら下り続ける。
長い長いその時間、オリビアが化け物に食われた光景が頭の中で繰り返される。
何度も、何度も……。
食べられた……オリビアが、食べられた……。
そのうち恐ろしさよりも、言い知れぬ高揚感が生まれた。
「食べられた!ははっ!あの娘が食べられた!馬鹿な娘!惨めな娘!」
無駄死にだ!!
「やっと死んだわ!オリビアが死んだ!ロゼ様は、この国はわたくしのものよ!」
地上にたどり着き、待たせていた馬車に乗り込む。
御者はオリビアがいないことを特に詮索するわけでもなく、黙って城に向かって走り出した。
ほら見なさい。
オリビアの存在なんてそんなものよ。
城に到着し、すぐさまエメラルド国の従者たちに命じた。
「お父様たちに知らせて!オリビアが死んだわ!」
この国が惜しくて。
ロゼ様が欲しくて。
短剣を突き付けたオリビアがじりじりと距離を詰めてくる。
「あ、あんたまさか……わたくしを殺そうっていうの」
何も答えないオリビアの瞳はこれがたちの悪い冗談ではないことを語っていた。
振り返って出口に逃げる?
貧弱なオリビアだもの。わたくしの方が速く走れるはず。
でも、もし、オリビアの方が速かったら?追いつかれたら?
鋭い短剣に背中を貫かれる想像がありありと浮かんだ。
どうしたらいい。いつも傍にいて盾になる者たちが今はいない。
わたくしが、オリビアに殺される……。
そしてまんまとこの国でロゼ様と幸せに……?
そんなの、そんなの……ふざけんじゃないわよぉ!!
オリビアが覚悟を決めたようにこちらに走ってくる。
振り下ろされる短剣。
その手首を無我夢中で掴み、捻り上げた。
痛みに声を上げ、オリビアの手から短剣が離れる。
カランッと音を立てて地面に落ちたそれを、すかさず拾い上げた。
今度はこちらが短剣をオリビアに突き付けてやる。
「馬鹿にするんじゃないわよ!育ちが悪くて学のないあんたと違って、わたくしは王宮で護身術を一通り学んでいるのよ!」
短剣を持つ手に力がこもる。
オリビアの無礼な発言の数々。
それだけでは飽き足らず殺意を向けてくるなんて。
オリビアがこちらを見て、馬鹿にしたようにふっと笑った。
怒りで目の前が赤く染まる。
「お前ごときがわたくしを殺そうとするなんて!お前が死ね!」
立ちすくむオリビアの腹に刃を突き立てた。
ずぶりの皮膚を破る感覚。
「あぁっ……」
オリビアが血を吐き、短剣を握りしめたままの手に滴る。
その生温かさ。
なにより、人の体を貫く生々しい感触。
ぞわっと鳥肌がたった。
思わずカッとなってオリビアを刺してしまったが、今まで幾人もの罪人の処刑を命じたことはあっても、自らの手で人を殺めたことはなかった。
「ひぃっ……」
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!
短剣から手を離し、血に染まった両手を見つめる。
「あはは、ははは……」
膝をつき、俯いたオリビアは口から血を流しながら笑っている。
気持ち悪い……。
本当に気が触れたのね。
けれど、顔を上げたその瞳にははっきりとした意思があった。
「愚かなお姉様。人殺しのあなたを誰も王妃にしようとはしないわ」
ヤケになったとは思えないその冷静な口調。
ハッとした。
もう一度血に染まった両手を見て、オリビアの思惑を察する。
はめられた。
「あんた最初からこれが目的で……」
「私は命を懸けて、この国を守る。薄汚い私の母国から」
鋭い眼光がこちらを射抜く。
「この国の平和を邪魔するな。あなたはもう終わり。さよならね、アリス」
「こざかしい真似してっ!」
再び怒りが脳を焼く。
オリビアの髪を鷲掴みして、屋上の塀まで引きずった。
「あんたなんて!あんたなんて、この世から消えちまえ!」
引きずられるオリビアを無理やり立たせ、塀の向こうへ思い切り突き飛ばした。
「さよならは、あんたよ!」
抵抗する素振りも見せず、オリビアの体は目の前から消えていく。
その時、何かが目の前を横切った。
一瞬、視界を埋め尽くすほどの巨大な何か。
それがオリビアを追い、急降下していく。
急いでオリビアが落ちていった先を見下ろせば、それはオリビアが地面に激突するよりも早く、ばくんと口のようなものでその体内におさめてしまった。
食われた……。
巨大なそれは再び浮上し、目の前を横切り、そのままどこかへ飛び去ってしまった。
巨大な体。全身を覆う黒い鱗。
鋭い牙と爪。
青い双眸が一瞬だけこちらをぎろりと睨んだような気がした。
「ひぃっ……い、いや……いやぁぁああああっ!!」
それは、おぞましく恐ろしい闇色の竜だった。
化け物!化け物!!
怖い!食べられた!食べられた!
無我夢中で出口の扉へ向かった。
階段をひたすら下り続ける。
長い長いその時間、オリビアが化け物に食われた光景が頭の中で繰り返される。
何度も、何度も……。
食べられた……オリビアが、食べられた……。
そのうち恐ろしさよりも、言い知れぬ高揚感が生まれた。
「食べられた!ははっ!あの娘が食べられた!馬鹿な娘!惨めな娘!」
無駄死にだ!!
「やっと死んだわ!オリビアが死んだ!ロゼ様は、この国はわたくしのものよ!」
地上にたどり着き、待たせていた馬車に乗り込む。
御者はオリビアがいないことを特に詮索するわけでもなく、黙って城に向かって走り出した。
ほら見なさい。
オリビアの存在なんてそんなものよ。
城に到着し、すぐさまエメラルド国の従者たちに命じた。
「お父様たちに知らせて!オリビアが死んだわ!」
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