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Q4 赤点くらい回避できるよね?(強めの笑顔)
しおりを挟む学校生活にも慣れてきた。
そろそろ学生にとっての大イベントがやってくる。
……中間テストだ。
さきちゃんは楽しい高校生活をエンジョイしていたせいで、すっかりその存在を忘れてたみたいで、そろそろ中間テストだねーと言ったら、
「チュウカンテスト? ナニソレ?」
と片言になって、目を泳がせていた。そんなに嫌か?
僕はテストがそんなに嫌いじゃない。頑張れば頑張るだけ、点がもらえるのがゲームみたいで面白いし、自分が今どのくらいの立ち位置にいるのか結果を見れば一瞬でわかるからだ。
そう言うと、さきちゃんには意味のわからないものを見るような目で見られる。
「ゆうちゃんのことは大好きだけど、その思考はマジでわけわからん」
そう言って、虚な目でこちらを見てくるさきちゃんはちょっと怖い。
しかーし! 僕はさきちゃんママとさきちゃんをちゃんと卒業させる、と約束してるのでさきちゃんに勉強をさせなければならない。
高校受験の時は、受かれば一緒にいられる時間が長くなるよ~と行って煽てたが、今度は何を餌にすればいいのだろう。さきちゃんは高校生活がすごく楽しそうだから、もうそんな簡単なものじゃつられてくれないかもしれない。
僕は一人自分のクラスの机に座って、うーんと考える。考えても特にいい案はこれといって浮かばない。
どうしようかな、と半ば途方にくれていた。
すると、うるさい外野が入ってきた。
「何何? 夕日なんか悩んでる? 恋? 恋わずらい?」
「違う」
飛鳥は握った両手を顎の下に添えた、気持ち悪いぶりっ子ポーズをしてこちらにきた。
そのポーズをする男のどこに需要があるのだろうか。
僕のことをさきちゃんと付き合えない哀れな男だと思っている飛鳥は、さきちゃんのことを少しでも考えていると、何かの電波を受信したように近寄ってくる。
そして、茶化すように無理やり、会話に参加しようとしてくるのだ。
「えっ! もしかして、ギャル子ちゃんに振られっ!」
飛鳥はわざとらしく、ハッと息を飲む音を立てて、口元を覆う。演技かかった仕草が余計にイラつく。
「違う! なんで物事を一つの面からしかみようとしないんだよ! はあ~。もう……」
「何があったんだよぅー! 言ってみろって!」
ここで本当のことを言わないと、変な噂を流されそうな気がする。
本当は関わりたくなかったが、僕は仕方なく飛鳥に内容を告げた。
「中間テストが終わった後のさきちゃんへのご褒美を考えてただけだって。
何をあげれば、やる気出してくれるか検討もつかなくって」
なんだって! と大きな声で言った飛鳥は一瞬まを開けた後、素早く片目を瞑って言い放った。
「そりゃデートでしょ! 絶対ギャル子ちゃんそれ一択だと思う!」
それは飛鳥がしたいことだろ。
……飛鳥に相談した僕がバカだった。
僕はやっぱり、さきちゃん本人にご褒美を選ばせようと心に決めた。
放課後、さきちゃんに勉強をさせようと、僕はさきちゃんを図書館に誘った。
「さきちゃん! 勉強するよ!」
「え! や!」
「2文字で拒否しないの‼︎」
勉強する、と言うことにアレルギーがあるらしいさきちゃんはすぐに拒否をして、首をぶんぶん横に降っている。
それでもどうにか引きずるようにして、図書館に連れてくることができた。
図書館の窓際の席に座った僕たちは、それぞれのテキストを机に広げた。
さきちゃんはすぐ遊ぼうとして「あ、あっちに雑誌コーナーがあるー」とどっかいこうとするけどそれを笑顔で抑止する。
「さきちゃん? 入試もギリギリだったのに、勉強しなくて大丈夫なのかな?」
「うっ‼︎」
さきちゃんは涙目でこちらを見てくる。そんな顔したってダメなものはダメだ。
「赤点くらい、勉強すれば回避できるよね?」
僕はにっこりと笑顔を強めて言った。
「ううう……。ひゃい……」
さきちゃんは、涙ながらに渋々、テキストを開いた。
まずはさきちゃんの苦手部分を潰して行こう。高校入試の時も躓きに躓いた、英語から解いて行く。
目の前に広がった文章題の問題を見て「ナニコレ?」と言っていたさきちゃんに一つづつ問題のヒントを渡していく。
「あなたはエミリーに何を伝えたら良いでしょうって言うこの問題、ほら! この文章のここの部分に答えがあるでしょ?
エミリーの恋人のマークスから明日の予定はキャンセルしたいと伝えてくれってここで言ってる!」
答えを見つけたさきちゃんは子供みたいにキラキラ輝いた目で僕を見る。
「あーこれはアタシでもわかったわ! 楽勝~」
「でしょ!? さあ答えは!」
「エミリーにそいつと別れた方がいいって言う」
「違う‼︎ どうしてそうなるの!?」
さきちゃんは何が間違えなのか本気でわからない顔をしている。
「え? だって人づてにデート行かねって言うのを言わせる男とかなくない?」
「ないけど! な・い・け・れ・ど‼︎ 今、この文章で求められているのはそこじゃない!」
いや、でも人間の選択としてはそれが一番正しいかもしれない。さきちゃんの答えも馬鹿にできない。
「あー! もう国語とか英語とかの文章題の答えがよくわかんないもの得意じゃない!
作者の気持ちを答えなさいとかマジでわかんなくね?
ぜってえ、締め切りマジやべーとか、文字いっぱい売って指疲れたーとかだって」
うーん。そうかもしれない。否定できない。
「もう数学やろー! アタシそっちならいけるわ」
「え!? さきちゃん理系!?」
「え、なんか知らんけどさらっとディスられてない?」
驚くことに、さきちゃんは理系だった。
「なんか国語とか英語とか、答えが曖昧なものって意味わかんねーけど、数学は答えが一つのことが多いからワンチャンいけるわ」
そう言って、さきちゃんはスラスラと問題を解いていく。ちゃんとあってるや……。
「僕どっちかって言うと、数学のが得意じゃないや」
どうにか頑張ってテストでは点を取れるところまでは持っていくけどね。そう言うとさきちゃんはこちらを嬉しそうな顔で見てくる。
「じゃあ、補いあえて最高じゃん!」
さきちゃんは満開の笑顔で笑った。
それぞれの勉強が捗ってきて、少し疲れたところで、僕は手を止めた。
図書館の窓からは涼しい風がさあーっと流れるように吹いてきて、カーテンを優しく揺らしている。
柔らかな光が多方向から入ってきて、僕たちを照らす。
その光はさきちゃんにも優しく当たっていて、なんだかハイライトを当てたように、さきちゃんの肌が白く、輝いて見えた。
不意に真面目な顔をしたさきちゃんと目が合う。どこか瞳には真剣さが滲んでいて、なんだか雰囲気がいつもと違う気がする。
その違いが分からなくて、僕は探るようにさきちゃんの瞳を見る。
……なんだろう。少し色が違うように感じる。カラコン新しく変えたのかな?
しばらくじいっと目があって、ぼんやりとそれを見ていると、さきちゃんが話しかけてくる。
「なんか……感じた?」
「ん……?カラコン新しくしたのかな~って考えてた」
その答えにさきちゃんはなぜか目を点にしている。そして素早く、机に突っ伏した。
「はあああああああぁぁぁ……。伝わってねええええ!」
え? どうしたんだろう?
「ん? 何が」
「なんでもないっ! もう、真面目に”べんきょ”すればいいんでしょ‼︎」
なんだかべんきょの響きが妙に幼くて笑ってしまう。小さい頃から、いやいや勉強するとき、さきちゃんはこう言うよね。
こう言う小さなところから、さきちゃんの変わっていないところを探してひどく安心をするのだ。
「じゃあ”べんきょ”をしよう。僕も今回は頑張ろうかな~」
「そういえば、ゆうちゃんってあのクラスの中でも頭いい方なの?」
多分、単純な興味だろう。さきちゃんはなんともなさげに僕に聞く。
「受験の時は次席だったらしいよ」
「うわ~、出た! 頭の良い人だ!」
さきちゃんはこの世のものでないものを見たときのような顔をしている。いつも思うんだけど、さきちゃんは頭の良い人にちょっと厳しい。
「今回は一番になりたいなあ」
「は? きもっ!」
「え、酷っ」
びっくりした。いきなりディスられた。
あまりの衝撃に目をパチパチさせていると、さきちゃんは若干申し訳なさそうな顔をしていた。
「あ、ごめん。秒で思ったことが口から出ちゃった。ちょっとは心の中で留めておけばよかった」
「いや、心の中で思ってたんだったら、どちらにせよ酷くない?」
「アタシには勉強大好き人間の思考回路が全然分からないんっすよ」
「目標達成できるの楽しくない?」
そう言うとさきちゃんは眉間にシワを寄せて、怪訝な顔をした。わけわかんねーと小声で呟いたが、聞こえてるぞ。
「ちゃんと赤点回避できたら、なんでもご褒美をあげましょう」
「なんでも!? マジで!? 何がいいかなー!」
嬉しそうに弾んださきちゃんを見て、先に餌を出せばよかったと反省する。
でも、なんでもって言ってしまったのは失敗した。無理難題を言われたら、どうしようと少し身構えていたが、さきちゃんが口に出したのはそんな類のものではなかった。
「じゃあ、二人でデートしよ!」
「え!? まさかの飛鳥案!?」
絶対にないと思っていた飛鳥案が採用されてしまった。なぜだ。
さきちゃんはキョトンとした顔をしている。
「あすかって誰?」
「A組の馬鹿」
その答えにさきちゃんは、なんだか納得していないように、ふうんと一言、言ったきりだった。
僕は何をすれば、さきちゃんがやる気を出してくれるのか、結構悩んでいたので、そんなんでいいのか、とちょっとほっとしてしまった。これを餌に、勉強をさせよう。
……でも、本当にそんなんで良いのかな?
さきちゃんは自分が僕と毎週どっかに遊びに行ってることに気がついていないのだろうか。
それじゃあ、いつもと同じだと思うけれど。
さきちゃんは自分がすごく安い対価で勉強させられていることに、気がついていない。
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