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俺が訓練場の扉を開けて入ると声をかける前に遠くから「リッカ隊長!」と俺を見つけた声がした。その声がそのまま「集合っ!」と号令をかけ、訓練場にいた皆が俺の前に整列した。
ウィレムの声だ。
ウィレムは献身的な戦士でよく気が効く。戦士としても優秀で何度か組んで討伐をしたこともあるぐらいだ。
特別に役職を与えたり、指示をしたりしたわけではないのに、こうやって皆を統率しているのを見ると、それだけ皆に認められている存在なのだろう。
「リッカ隊長!お疲れ様です!めずらしいですね、こんな時間に。何かありましたか?」
部隊の出動だと思ったのだろう。いつでも行けますと言わんばかりの勢いだ。
「いや、出動ではない。明日からこいつ…イオリが俺の側近として働くようになる。武術も嗜んでいるらしいからここにも通うようになるだろう。………ほら、イオリ、挨拶しろ。」
普通に頭下げるくらいの挨拶でいいぞと小声で言い背中を押す。部隊のほとんどのものがイオリよりはるかに体格も良く、背も高いためか彼らを見上げて呆けていたイオリがハッとして挨拶をした。
「イオリといいます。これからお世話になります、よろしくお願いします。」
元気にいい、ガバリと勢いよく頭を下げて挨拶をした。…ちょっと元気が良すぎるが、普通の挨拶だな。
イオリが挨拶すると怪訝な表情をしてウィレムが尋ねてきた。
「側近って戦闘で組むということですか?こいつもこの部隊に?言ってはなんですが、体格も力も不十分なように見えます。」
献身的で真面目なウィレムにしては棘のある言い方だな。俺がこれまで連れてきた奴らに対しても歓迎している姿しか見たことなかったが。
「なにか引っかかるようなことがあるか?ウィレムにしては厳しい言い方だな。まぁ、体格が小さいのは種族のせいだろう。小鬼族はこんなもんらしい。」
ウィレムの方を見ながら続けて言う。
「この部隊に入るのではなく、俺の側近として時間が空いた時に訓練場に鍛えにくるという感じだ。戦闘時に組むというのも、後々固定で組めれば楽だなとは思っているがまだ実力もよく知らないからな。すぐにと言う話ではない。」
俺が説明するとウィレムは驚いたように目を見開いて言ってきた。
「なっ!?実力もよく知らない奴と今後協同しようと!?…は、反対です。いくらリッカ隊長といえど性急すぎではありませんか!」
いつになく感情的だな。他の奴らと同じようにイオリのこともそれとなくサポートしてくれると思ったが…。
「イオリの側近としての仕事は基本的に事務仕事だ。武術に関してはその合間に鍛えてもらう。戦闘時に組むという話も、実力があればの話だ。固定で組んだ方が連携が取りやすいから俺はもともといい奴がいれば、そいつと組むつもりだが?」
もう一度わかりやすく説明してやる。するとウィレムが苦々しく口を開いてきた。
「そんな、昨日今日やってきたばかりのやつと組まなくても…。」
ウィレムは俯き、声が小さくなっていく。
いったいどうしたんだ?
真向から否定されているイオリの方もチラと見れば両手を握り締めて俯いている。
「ウィレム、どうしたんだ?お前らしくもない。別にイオリと組むのが決定というわけではないし、イオリの実力をみて、今、部隊にいる者の方が良しと判断すれば俺はそいつと組むぞ。もともとそういう話だっただろう。」
俺は最初から部隊の者たちには一緒に組む者を探していることは伝えている。ウィレムは一体何が気に食わないんだと言ったふうに言えば、ハッとした風に顔を上げてきた。
「では、決定というわけではないのですね?」
「さっきからそう言っているだろう。回りくどい説明だったか?今日は新しく俺の側近ができたから、挨拶に回らせているだけだ。」
簡単な挨拶回りのつもりだったが、何故かいろいろ話しが長くなるな。…面倒くさい。などと思っているとウィレムがホッとしたような顔をして言ってきた。
「そうだったんですね。すみません、私の早とちりでした。では、今後はイオリもここを使うことがあるもいうことですね。承知しました。」
「そういうことだ。あとは緊急の用で俺が見つからないときはイオリに伝言してもらっても構わない。俺も今後細々としたことはイオリに頼むようになるからそのつもりで。」
「「「はいっ!」」」
部隊の者たちののぶとい返事が返ってくる。
「じゃ、今日はそれだけだから。イオリ、行くぞ。」
軽く済ますつもりがなんだか疲れたな。今日はせっかくの休みだ。もう自室に戻って休んでしまおう。
俺はイオリを連れて早々と訓練場を後にすることにした。
「「「お疲れ様でしたっ!」」」
と気合の入った声を背中で聞きながら、イオリが後を駆けてくる音を確かめた。
ウィレムの声だ。
ウィレムは献身的な戦士でよく気が効く。戦士としても優秀で何度か組んで討伐をしたこともあるぐらいだ。
特別に役職を与えたり、指示をしたりしたわけではないのに、こうやって皆を統率しているのを見ると、それだけ皆に認められている存在なのだろう。
「リッカ隊長!お疲れ様です!めずらしいですね、こんな時間に。何かありましたか?」
部隊の出動だと思ったのだろう。いつでも行けますと言わんばかりの勢いだ。
「いや、出動ではない。明日からこいつ…イオリが俺の側近として働くようになる。武術も嗜んでいるらしいからここにも通うようになるだろう。………ほら、イオリ、挨拶しろ。」
普通に頭下げるくらいの挨拶でいいぞと小声で言い背中を押す。部隊のほとんどのものがイオリよりはるかに体格も良く、背も高いためか彼らを見上げて呆けていたイオリがハッとして挨拶をした。
「イオリといいます。これからお世話になります、よろしくお願いします。」
元気にいい、ガバリと勢いよく頭を下げて挨拶をした。…ちょっと元気が良すぎるが、普通の挨拶だな。
イオリが挨拶すると怪訝な表情をしてウィレムが尋ねてきた。
「側近って戦闘で組むということですか?こいつもこの部隊に?言ってはなんですが、体格も力も不十分なように見えます。」
献身的で真面目なウィレムにしては棘のある言い方だな。俺がこれまで連れてきた奴らに対しても歓迎している姿しか見たことなかったが。
「なにか引っかかるようなことがあるか?ウィレムにしては厳しい言い方だな。まぁ、体格が小さいのは種族のせいだろう。小鬼族はこんなもんらしい。」
ウィレムの方を見ながら続けて言う。
「この部隊に入るのではなく、俺の側近として時間が空いた時に訓練場に鍛えにくるという感じだ。戦闘時に組むというのも、後々固定で組めれば楽だなとは思っているがまだ実力もよく知らないからな。すぐにと言う話ではない。」
俺が説明するとウィレムは驚いたように目を見開いて言ってきた。
「なっ!?実力もよく知らない奴と今後協同しようと!?…は、反対です。いくらリッカ隊長といえど性急すぎではありませんか!」
いつになく感情的だな。他の奴らと同じようにイオリのこともそれとなくサポートしてくれると思ったが…。
「イオリの側近としての仕事は基本的に事務仕事だ。武術に関してはその合間に鍛えてもらう。戦闘時に組むという話も、実力があればの話だ。固定で組んだ方が連携が取りやすいから俺はもともといい奴がいれば、そいつと組むつもりだが?」
もう一度わかりやすく説明してやる。するとウィレムが苦々しく口を開いてきた。
「そんな、昨日今日やってきたばかりのやつと組まなくても…。」
ウィレムは俯き、声が小さくなっていく。
いったいどうしたんだ?
真向から否定されているイオリの方もチラと見れば両手を握り締めて俯いている。
「ウィレム、どうしたんだ?お前らしくもない。別にイオリと組むのが決定というわけではないし、イオリの実力をみて、今、部隊にいる者の方が良しと判断すれば俺はそいつと組むぞ。もともとそういう話だっただろう。」
俺は最初から部隊の者たちには一緒に組む者を探していることは伝えている。ウィレムは一体何が気に食わないんだと言ったふうに言えば、ハッとした風に顔を上げてきた。
「では、決定というわけではないのですね?」
「さっきからそう言っているだろう。回りくどい説明だったか?今日は新しく俺の側近ができたから、挨拶に回らせているだけだ。」
簡単な挨拶回りのつもりだったが、何故かいろいろ話しが長くなるな。…面倒くさい。などと思っているとウィレムがホッとしたような顔をして言ってきた。
「そうだったんですね。すみません、私の早とちりでした。では、今後はイオリもここを使うことがあるもいうことですね。承知しました。」
「そういうことだ。あとは緊急の用で俺が見つからないときはイオリに伝言してもらっても構わない。俺も今後細々としたことはイオリに頼むようになるからそのつもりで。」
「「「はいっ!」」」
部隊の者たちののぶとい返事が返ってくる。
「じゃ、今日はそれだけだから。イオリ、行くぞ。」
軽く済ますつもりがなんだか疲れたな。今日はせっかくの休みだ。もう自室に戻って休んでしまおう。
俺はイオリを連れて早々と訓練場を後にすることにした。
「「「お疲れ様でしたっ!」」」
と気合の入った声を背中で聞きながら、イオリが後を駆けてくる音を確かめた。
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