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第47話 『凪咲と純美、午前と午後の初詣』
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1986年(昭和61年)1月2日(木) <風間悠真>
ずいぶん前からだが、美咲はもちろん、他の女もオレがどこで何をしているのかを聞かなくなっていた。
・ギターの練習(自宅・祐介宅・ホール全部含む)
・学校
・自分以外の女といる(6人)
いろんなことを詮索して面倒くさい女と思われたくないらしい。
もっともそれは、オレがある意味誘導したというのもある。
いい感じの雰囲気になった男女、もしくは付き合っている男女。またはそうなる前の段階で、一方が一方に対して好意を抱いている場合。こういう時のあるあるだが、出てくる質問がある。
それは『~くん(さん)ってどんな女(男)がタイプなの?』という質問である。
そこでオレは、こう答えるようにしている。
『相手のことを尊重して、あまり詮索しない人。自分の(オレの)時間を大事にしてくれる人』
なぜか?
おまえのいない時のオレを詮索してほしくはないからだ。おまえ以外の女とデートしたりキスしたり、いろんなことをしている時のことを詮索されたくはない。
だから、『タイプ』という質問に対して、オレは常に『詮索しない人』という答えを用意している。これは一種の洗脳であり、誘導だ。それに加えて、『協調性のある人』も付け加える。
ハーレム状態をつくるにあたって、これは重要だ。
私だけを考えてほしい、自分だけを見てほしい、というのは自然な感情だが、それは2人っきりの時にしてほしい。なぜならそれでギスギスしてしまってハーレム崩壊になりかねないからだ。
だからオレも2人の時は、別の女の話はしないし、考えないようにしている。(つもり)
要するに、相手の立場に立って考えるということだ。
例えば、美咲と一緒にいる時は美咲のことだけを考える。凪咲と一緒にいる時は凪咲のことだけを考える。その場その場で、相手を大切にする。
「悠真くんって、他の子とも仲が良いよね」
ときどき、こんな感じで探りを入れてくる子もいる。その時はこう返す。
「うん。でも今は○○といる時間だから」
こう答えることで、オレが相手のことを大切に思っているということが伝わる。そして、それは嘘じゃない。
ハーレムというと、どうしても後ろめたさや罪悪感を感じてしまいがちだが、そんなもんはくそ食らえだ。
オレは違う。
みんなを大切にしたい、幸せにしたいという思いは本物だ。
いや、きれい事言いすぎた。単純に全員とセックスしたいだけだ。
だから『協調性のある人』という条件も大事なんだ。お互いを認め合える関係。そういうものがないと、ハーレムは成立しない。
ただし、それは一種のテクニックでもある。
建前と本音の使い分けだ。建前は『大切な存在』で本音は『ヤリたい』。でも、その2つは決して矛盾しない。むしろ両立できる。
もちろん、ただヤリたいだけじゃない。それぞれの女の子に魅力がある。美咲の可愛らしさ、凪咲の知的な雰囲気、純美の爽やかさ……。
みんな違って、みんないい。そして、みんなとヤリたい。
時計を見る。そろそろ凪咲との待ち合わせの時間だ。
■10:00
境内の下の階段で待っていると、凪咲が元気よく駆けてきた。
「悠真ー! 待った?」
クリーム色のダッフルコートの下は水色のセーターのワンピース。膝下丈のスカートからのぞく白いハイソックス。普段の制服やバレー部のウエアとは違う可愛らしい装いだ。黒髪が朝の光を受けて輝いている。
「いや、今来たとこ」
「嘘でしょ。絶対早く来て待ってたじゃん」
いつもの明るい調子で凪咲が笑う。よく見ると唇が少しツヤツヤしている。
「あ、そうだ。クリスマスにお母さんがメイクセットくれてね。リップだけ、ちょっと塗ってみたんだけど……」
照れくさそうに言う凪咲。普段はあまり興味がなさそうなのに、美咲のキスミーリップの影響なんだろうか。
「でも、やっぱり悠真には隠し事できないよね」
意味ありげな笑みを浮かべる。こいつはいつも、ちょっとだけ計算高いところがある。きっと今日という日を、何か特別な日にしようと考えているんだろう。
階段を軽やかに上りながら、凪咲が振り返る。いつもの制服姿とは違う、休日の装いが新鮮だ。
「ねぇ、今年も頑張ろうね」
「あ、それと……今日は特別な日だから」
言いかけて止まる凪咲。
ん? なんの特別な日だ?
「ねえ、何お願いしたの?」
「オレ? うん。凪咲と今年も仲良くできますようにってね」
うそ。今年こそはセックスできますようにってお願い。ん? 不謹慎かな? いや、願いは願いだ。
「もー、そういう無難な答えばっかりなんだから。悠真ってば」
意外とずぶとい凪咲が、初詣の時だけは妙に控えめになっている。そんな感じも新鮮だ。
「あ、そうだ。この後、お母さんとお昼ご飯の約束があるから、すぐに帰らないといけないんだ。ごめんね」
「え……もう帰るの?」
あああ、オレの帰りにグラウンドによって×××しちゃう予定が……崩れた。新年の×××初めが!
「うん。でも、お詣りだけはちゃんとしていきたくて。悠真と一緒に」
凪咲の方から賽銭を投げて、鈴を鳴らした。オレも隣でお詣りをする。
二人とも深々と頭を下げる。なんだか、この瞬間だけは神聖な気分になってしまう。日本人なら仕方ないのか? 外国人もそうなのか? いや、本当はこうあるべきなのかもしれない。
お詣りを終えて、階段を下りながら──。
「ねぇ、私のお願い事、当ててみて?」
「え? それは、凪咲がさっき言ったみたいに、無難な答えしか出てこないよ」
「もー! そうじゃなくてね……」
「悠真と……」
凪咲が顔を赤くして言いかける。その時、ちょうど参道を歩いてきた中年の夫婦とすれ違う。
「あ、もういいや!」
照れくさそうに、凪咲が話を切り上げた。
「そろそろ行かなきゃ。お母さん、待ってるし」
「そうだね。じゃあ、また学校で」
「うん。またね~♡」
オレの嫌な予感が当たった。
午後3時に純美と待ち合わせをしていたんだが、凪咲で5時間取ってたのに、4時間近く時間つぶしをしなくちゃならなかった。
しかも純美も凪咲と同じく家族と約束があるらしく、お詣りしたらすぐに帰っていったのだ。
あれ? あれあれどうした?
オレの×××初めは?
なんだか今年の運気を疑うような1日だった。
次回 第48話 (仮)『新メンバーなんだが方向性の違い』
ずいぶん前からだが、美咲はもちろん、他の女もオレがどこで何をしているのかを聞かなくなっていた。
・ギターの練習(自宅・祐介宅・ホール全部含む)
・学校
・自分以外の女といる(6人)
いろんなことを詮索して面倒くさい女と思われたくないらしい。
もっともそれは、オレがある意味誘導したというのもある。
いい感じの雰囲気になった男女、もしくは付き合っている男女。またはそうなる前の段階で、一方が一方に対して好意を抱いている場合。こういう時のあるあるだが、出てくる質問がある。
それは『~くん(さん)ってどんな女(男)がタイプなの?』という質問である。
そこでオレは、こう答えるようにしている。
『相手のことを尊重して、あまり詮索しない人。自分の(オレの)時間を大事にしてくれる人』
なぜか?
おまえのいない時のオレを詮索してほしくはないからだ。おまえ以外の女とデートしたりキスしたり、いろんなことをしている時のことを詮索されたくはない。
だから、『タイプ』という質問に対して、オレは常に『詮索しない人』という答えを用意している。これは一種の洗脳であり、誘導だ。それに加えて、『協調性のある人』も付け加える。
ハーレム状態をつくるにあたって、これは重要だ。
私だけを考えてほしい、自分だけを見てほしい、というのは自然な感情だが、それは2人っきりの時にしてほしい。なぜならそれでギスギスしてしまってハーレム崩壊になりかねないからだ。
だからオレも2人の時は、別の女の話はしないし、考えないようにしている。(つもり)
要するに、相手の立場に立って考えるということだ。
例えば、美咲と一緒にいる時は美咲のことだけを考える。凪咲と一緒にいる時は凪咲のことだけを考える。その場その場で、相手を大切にする。
「悠真くんって、他の子とも仲が良いよね」
ときどき、こんな感じで探りを入れてくる子もいる。その時はこう返す。
「うん。でも今は○○といる時間だから」
こう答えることで、オレが相手のことを大切に思っているということが伝わる。そして、それは嘘じゃない。
ハーレムというと、どうしても後ろめたさや罪悪感を感じてしまいがちだが、そんなもんはくそ食らえだ。
オレは違う。
みんなを大切にしたい、幸せにしたいという思いは本物だ。
いや、きれい事言いすぎた。単純に全員とセックスしたいだけだ。
だから『協調性のある人』という条件も大事なんだ。お互いを認め合える関係。そういうものがないと、ハーレムは成立しない。
ただし、それは一種のテクニックでもある。
建前と本音の使い分けだ。建前は『大切な存在』で本音は『ヤリたい』。でも、その2つは決して矛盾しない。むしろ両立できる。
もちろん、ただヤリたいだけじゃない。それぞれの女の子に魅力がある。美咲の可愛らしさ、凪咲の知的な雰囲気、純美の爽やかさ……。
みんな違って、みんないい。そして、みんなとヤリたい。
時計を見る。そろそろ凪咲との待ち合わせの時間だ。
■10:00
境内の下の階段で待っていると、凪咲が元気よく駆けてきた。
「悠真ー! 待った?」
クリーム色のダッフルコートの下は水色のセーターのワンピース。膝下丈のスカートからのぞく白いハイソックス。普段の制服やバレー部のウエアとは違う可愛らしい装いだ。黒髪が朝の光を受けて輝いている。
「いや、今来たとこ」
「嘘でしょ。絶対早く来て待ってたじゃん」
いつもの明るい調子で凪咲が笑う。よく見ると唇が少しツヤツヤしている。
「あ、そうだ。クリスマスにお母さんがメイクセットくれてね。リップだけ、ちょっと塗ってみたんだけど……」
照れくさそうに言う凪咲。普段はあまり興味がなさそうなのに、美咲のキスミーリップの影響なんだろうか。
「でも、やっぱり悠真には隠し事できないよね」
意味ありげな笑みを浮かべる。こいつはいつも、ちょっとだけ計算高いところがある。きっと今日という日を、何か特別な日にしようと考えているんだろう。
階段を軽やかに上りながら、凪咲が振り返る。いつもの制服姿とは違う、休日の装いが新鮮だ。
「ねぇ、今年も頑張ろうね」
「あ、それと……今日は特別な日だから」
言いかけて止まる凪咲。
ん? なんの特別な日だ?
「ねえ、何お願いしたの?」
「オレ? うん。凪咲と今年も仲良くできますようにってね」
うそ。今年こそはセックスできますようにってお願い。ん? 不謹慎かな? いや、願いは願いだ。
「もー、そういう無難な答えばっかりなんだから。悠真ってば」
意外とずぶとい凪咲が、初詣の時だけは妙に控えめになっている。そんな感じも新鮮だ。
「あ、そうだ。この後、お母さんとお昼ご飯の約束があるから、すぐに帰らないといけないんだ。ごめんね」
「え……もう帰るの?」
あああ、オレの帰りにグラウンドによって×××しちゃう予定が……崩れた。新年の×××初めが!
「うん。でも、お詣りだけはちゃんとしていきたくて。悠真と一緒に」
凪咲の方から賽銭を投げて、鈴を鳴らした。オレも隣でお詣りをする。
二人とも深々と頭を下げる。なんだか、この瞬間だけは神聖な気分になってしまう。日本人なら仕方ないのか? 外国人もそうなのか? いや、本当はこうあるべきなのかもしれない。
お詣りを終えて、階段を下りながら──。
「ねぇ、私のお願い事、当ててみて?」
「え? それは、凪咲がさっき言ったみたいに、無難な答えしか出てこないよ」
「もー! そうじゃなくてね……」
「悠真と……」
凪咲が顔を赤くして言いかける。その時、ちょうど参道を歩いてきた中年の夫婦とすれ違う。
「あ、もういいや!」
照れくさそうに、凪咲が話を切り上げた。
「そろそろ行かなきゃ。お母さん、待ってるし」
「そうだね。じゃあ、また学校で」
「うん。またね~♡」
オレの嫌な予感が当たった。
午後3時に純美と待ち合わせをしていたんだが、凪咲で5時間取ってたのに、4時間近く時間つぶしをしなくちゃならなかった。
しかも純美も凪咲と同じく家族と約束があるらしく、お詣りしたらすぐに帰っていったのだ。
あれ? あれあれどうした?
オレの×××初めは?
なんだか今年の運気を疑うような1日だった。
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