皇太子から婚約破棄を言い渡されたので国の果ての塔で隠居生活を楽しもうと思っていたのですが…どうして私は魔王に口説かれているのでしょうか?

高井繭来

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第2章

27話

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 今日は魔国の王都中心部にある神殿に魔王と従者さんや私付のメイドのエーデルを連れて訪問です。
 この訪問は前々から決まっていたようで、何ももめることなく神殿内に入ることが出来ました。
 神殿内の応接間のようなところで教皇様とお話中。

 何と言うかバンリウ帝国の贅肉教主と違って、根から優しそうなお爺さんです。
 丸眼鏡の奥の瞳は優しさに満ちています。
 長い真っ白い顎髭を蓄えています。
 三つ編みにして顎髭をくくっているのがキュートです。

 何でも教皇様は魔国建国当初から居るとか。
 魔国は出来たのが何十万年も前なのでかなりの長生きです。

 そんな教皇様でもミヤハルさんより年下らしいです。
 ミヤハルさんの年齢て何歳なんでしょうか?
 怖いもの見たさで聞いてみたい気がするのですが、レディに年齢を訪ねるのは失礼ですよね?
 後でこっそり魔王に聞いてみましょう。

 話が飛びました。
 今日神殿に来たのは、何と私と魔王の結婚式の打ち合わせについてなんです。

 結婚式!!

 魔国でのんびり1ヵ月過ごさせて貰いましたが、もうそろそろ国に慣れただろうと言うことで結婚式の話が進められることになりました。

 私本当に魔王のお嫁さんになるんですね。
 緊張して話が頭に入ってきません。

「と、言うことで良いかリコリス?」

「ひゃいっ!?」

 思わず変な声が出ました。
 すみません、ちゃんと話聞いてなかったです。

「陛下、リコリス様はご緊張なさっているようです。宜しければ緊張を解すためにハーブティーでも淹れて来ても良いでしょうか?」

 エーデル、ナイスです!

「我としたことがリコリスが緊張している事にも気づかなかった。よほど浮かれていたみたいだ。気づいてやれなくてすまなかったリコリス。エーデル、茶と軽く摘まめる菓子を頼んでよいか?」

「承知しました陛下。すぐに用意しますので、その間リコリス様の緊張を解き解いてあげて下さいませ」

 メイドとして完璧な礼をしてエーデルが部屋を出ていきました。

「手が冷たいな。そんなに緊張していたのか?」

 魔王が私の手を握り込みます。
 珍しく私より魔王の手が温いです。
 いや反対ですね。
 私の手が魔王より冷たいです。
 魔王はそんな私の手に体温を与えるように優しく手をさすってくれます。
 有難いのですか…何かそれだけで色気がある仕種になる魔王て問題がある気がします……。
 お陰ですぐに私のては温もりを取り戻しましたが。

「いきなり結婚式の話だったんで頭が付いていかなかったんです。今朝まで今日のスケジュール知りませんでしたし…お話ちゃんと聞いていなくて済みませんでした……」

「フォッフォッフォッ、王妃様は可愛らしいお方ですな。陛下も幸せ者です」

「教皇様に分かって頂けると我も嬉しい限りです」

 さすがの魔王も教皇様には敬語です。
 物凄く年上ですもんね。
 建国当時からずっと教皇をしてこられたそうですし。

 ちなみに魔国は王族世襲制ではないので”王家”と言うものがありません。
 新たに魔王を決める時に1番向いている者が魔王となるそうです。
 なので魔王には国王としての権力はあれど王家としての権力はありません。

 逆に神殿は教皇様が何万年も今の地位にいるので権力と言うより発言権があるとの事です。
 国民はいきなり魔王に直談判できないので神殿で話を聞いてもらい、その意見を纏めたものを神殿側が発言するそうです。
 確かにこの優しそうな教皇様がトップの神殿なら緊張せずに話を聞いて貰えそうです。 

 それにしても兄弟揃って魔王と宰相をしているこの魔王とエントビースドさんは珍しいそうです。
 しかも2人は魔族の中でもかなり年若いそうです。
 寿命の観念が崩壊しそうです。
 私も長生きしなくてわ!!

 トントントン

 ドアがノックされます。
 教皇様が声をかけるとエーデルがハーブティーとクッキーのセットをワゴンに乗せて入ってきました。

「皆さまお茶を淹れさせて頂きます」

 優雅な仕種でエーデルが皆さんにお茶を淹れていきます。
 さすがメイド長さんに認められているだけあってエーデルの所作は完璧です。
 私が誇らしくなってしまいます。

「リコリス様、緊張を解すカモミールティーです。それと疲れた頭には甘いものが良いので用意していたクッキーを出させていただきました。どうぞ召し上がって下さい」

 エーデルが優しい声で私にお茶の用意をしてくれました。
 どうやらカモミールティーとクッキーはエーデルが持ち込んだようです。
 私の事をよく理解してくれていて嬉しい限りです。

「流石は王妃様付の侍女ですな。これは美味しい」

 ニッコリと笑いながら教皇様がクッキーを頬張ります。
 顔の皺がくしゃっとなって凄く優しそうな表情をなされます。
 凄く癒されます。

 お茶とクッキーも美味しいですし、すっかり私の緊張は解れました。

 なので私もちょっとばかり質問とかさせて貰います。

「教皇様、神殿では魔族の神様を祀っているのですか?」

「そうじゃな。魔族の神を祀っていますぞ。この世界に最初に誕生した魔族が神として祀られておりますのじゃ」

「そして神の育ての親が姉上だ」

「はいっ!?」

 何かとんでもないことを魔王の口から聞いたような。

「姉上ってミヤハルさんですよね?ミヤハルさんが神様になった最初の魔族さんの育ての親なのですか?」

 スケールが大きすぎてもう意味が分かりません。

「姉上はそう言う生き物らしい。何でも世界を創る者たちを育てるのが使命なのだそうだ。神よりも長く生きているから”古代種”と呼ばれている」

 ミヤハルさんは私が思っている以上にとんでもない存在だったようです。
 でも私にとってミヤハルさんは優しくて一緒にいて楽しい”お義姉さん”です。
 凄く長生きでも、一緒にいて楽しいなら問題は無い気がしました。

「普段は姉上も隠しているからな。リコリスは姉上が何者でも気にせぬだろうから話したが」

「はい!ミヤハルさんは私の”お義姉さん”です!どんな存在でも私がミヤハルさんを好きな事に変わりはありません」

「リコリスならそう言ってくれると信じていた」

 あ、魔王の優しい笑顔です。 
 最近色気を垂れ流しの笑顔ばかり見せられていたので新鮮ですね。

「でも何かもうミヤハルさんが神様でいい様な気がするのですが」

「いや、姉上に信者を加護させるのは無理だろう…」

 あ、魔王の目が死んでいます。
 リアルに想像してしまったようです。
 言った私が言うのもなんですが確かに愉快犯なミヤハルさんは自分の楽しみ優先ですものね。
 たしかに神様には向いていません。

「陛下、良い番を見つけられましたな」

 ニコニコと眼鏡の奥で目を細めて笑う教皇様がおっしゃられました。

「はい、リコリスは最高の番です」

 あ、また色気垂れ流しの笑顔です。
 その笑顔されると顔が熱くなるので止めてほしいのですが。

 でも魔王の口から”最高の番”と言う言葉が聞けて、とても幸せな気分になりました。
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