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【5話】
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「皇太子殿下にあのような手厳しい態度で宜しかったのですか国王様?」
「あやつは自分が聖女を連れて来たと慢心しておる。本当に私の身体を思うなら、聖女を探す前に出来た事も色々あろうて…幼い頃は覚えが良く神童かと思ったが、育て方を間違えたな………」
「国王様、負の気からも病は悪くなります。お心を強くもって下さい」
「ほっほっほっ、大丈夫だアプローズ。其方のお陰で私は回復して来ておる。まさか法術でもなく医術でもなく薬学のみで私の身体を回復する術があったなんて考えもしなかった。
其方には感謝しておる。
勿論其方をこれ程の術を仕込んでくれた其方の師にもな」
「はい、御師様は凄い人ですから!」
ぱぁぁ、とアプローズの顔が輝く。
本当に心から師が好きなのだろうと分かる無垢で無邪気な笑顔だ。
普段ほとんど表情が変わらないアプローズだけに、たまに見せる笑顔の破壊力は半端ない。
幸いピエールカルダン国王はもう生殖能力を病の末に失っているので、アプローズに対して邪な心は抱かないが、普通の男ならその笑顔に魅了されるだろう。
「さて今日の夕餉のメニューは何だ?」
「はい、今日は鯖のターメリック揚げ、血を補い巡らせる働きのある鯖、更に血を巡らせる働きのあるターメリック、白井田七粉末を衣に混ぜることによって、効果が高まります。白井田七のほろ苦さがよく鯖に合い、大人の美味しさが楽しめる揚げものです。
鈴かぼちゃとサラダ玉ねぎと鶏ささみのサラダ、かぼちゃは胃腸の働きを促し、元気をつけてくれます。
鶏肉も、やさしく胃腸の働きをいたわりながら元気をつけてくれます。
このように「気」を補い、「りんご甕酢(かめず)」の力で温め「血」も巡らせることによって、体に「気」を送り届けてくれます。
貝柱とエリンギのお粥、貝柱のうまみたっぷりの、陰を補うエリンギと貝柱のお粥です。
陰を補ったら、少しの陽の食材を加えることによって、動き出すので浅月を添えています。お粥は消化も良いので、陰を補いながら元気もつけてください」
「ほうほう美味しそうだ」
「無理はしなくて良いので食べれる量だけ召し上がって下さい」
「ほっほっほっ、私が其方の料理を残したことがあったか?」
「そうですね、最初の1週間以降、残さず全てお召し上がりになって下さいました」
「それに食事の介助なしに自分で食べられる程に回復もした。口から入るエネルギーと言うものは本当に凄いものなのだな」
「はい、薬神様も食の大切さを説いてらっしゃっています」
「ほうほう、アプローズが信仰しているのは薬神マロン様なのかい?」
「はい、薬神マロン様と豊穣の神ルーシュ様を信仰しております。でもそれ以上に御師様を崇拝しております」
「其方にソレだけ言わせる其方の師に一目お目にかかりたいものだ」
「私も会いたいのですが、御師様は気紛れなのです。たまにふらりと現れて私に菓子を強請って話をしたら帰られるんですよ。もう十年以上御師様とは交流がありますが、年老いることも無く、何時までも美しい姿です」
「では天上人なのかもしれんな」
「本人曰く「天使よりも上等なもの」らしいです」
「それは、何時かお目に書かれたなら是非拝ませて貰わねば」
「はい、私も早くまた御師様と会いたいです」
話しながらも匙を口に運んでいたピエールカルダン国王の膳の中身は8割近く減っていた。
体に良いだけでなく、アプローズが作る料理はどれも美味しいのだ。
アプローズは食に拘っている。
食事は飢えを満たしてくれて、美味しければ幸せをもたらしてくれる。
それを御師様は教えてくれた。
だからアプローズは他者に振舞う料理に手を抜いたりしない。
食べやすいよう、美味しいよう、体に良いよう、全てを考慮して食事を作り茶を淹れる。
それは聖女の祝福よりもはるかに癒しの効果があった。
その事に、皆が気付いていくまでにはまだ少しの時間がかかるのであった。
「あやつは自分が聖女を連れて来たと慢心しておる。本当に私の身体を思うなら、聖女を探す前に出来た事も色々あろうて…幼い頃は覚えが良く神童かと思ったが、育て方を間違えたな………」
「国王様、負の気からも病は悪くなります。お心を強くもって下さい」
「ほっほっほっ、大丈夫だアプローズ。其方のお陰で私は回復して来ておる。まさか法術でもなく医術でもなく薬学のみで私の身体を回復する術があったなんて考えもしなかった。
其方には感謝しておる。
勿論其方をこれ程の術を仕込んでくれた其方の師にもな」
「はい、御師様は凄い人ですから!」
ぱぁぁ、とアプローズの顔が輝く。
本当に心から師が好きなのだろうと分かる無垢で無邪気な笑顔だ。
普段ほとんど表情が変わらないアプローズだけに、たまに見せる笑顔の破壊力は半端ない。
幸いピエールカルダン国王はもう生殖能力を病の末に失っているので、アプローズに対して邪な心は抱かないが、普通の男ならその笑顔に魅了されるだろう。
「さて今日の夕餉のメニューは何だ?」
「はい、今日は鯖のターメリック揚げ、血を補い巡らせる働きのある鯖、更に血を巡らせる働きのあるターメリック、白井田七粉末を衣に混ぜることによって、効果が高まります。白井田七のほろ苦さがよく鯖に合い、大人の美味しさが楽しめる揚げものです。
鈴かぼちゃとサラダ玉ねぎと鶏ささみのサラダ、かぼちゃは胃腸の働きを促し、元気をつけてくれます。
鶏肉も、やさしく胃腸の働きをいたわりながら元気をつけてくれます。
このように「気」を補い、「りんご甕酢(かめず)」の力で温め「血」も巡らせることによって、体に「気」を送り届けてくれます。
貝柱とエリンギのお粥、貝柱のうまみたっぷりの、陰を補うエリンギと貝柱のお粥です。
陰を補ったら、少しの陽の食材を加えることによって、動き出すので浅月を添えています。お粥は消化も良いので、陰を補いながら元気もつけてください」
「ほうほう美味しそうだ」
「無理はしなくて良いので食べれる量だけ召し上がって下さい」
「ほっほっほっ、私が其方の料理を残したことがあったか?」
「そうですね、最初の1週間以降、残さず全てお召し上がりになって下さいました」
「それに食事の介助なしに自分で食べられる程に回復もした。口から入るエネルギーと言うものは本当に凄いものなのだな」
「はい、薬神様も食の大切さを説いてらっしゃっています」
「ほうほう、アプローズが信仰しているのは薬神マロン様なのかい?」
「はい、薬神マロン様と豊穣の神ルーシュ様を信仰しております。でもそれ以上に御師様を崇拝しております」
「其方にソレだけ言わせる其方の師に一目お目にかかりたいものだ」
「私も会いたいのですが、御師様は気紛れなのです。たまにふらりと現れて私に菓子を強請って話をしたら帰られるんですよ。もう十年以上御師様とは交流がありますが、年老いることも無く、何時までも美しい姿です」
「では天上人なのかもしれんな」
「本人曰く「天使よりも上等なもの」らしいです」
「それは、何時かお目に書かれたなら是非拝ませて貰わねば」
「はい、私も早くまた御師様と会いたいです」
話しながらも匙を口に運んでいたピエールカルダン国王の膳の中身は8割近く減っていた。
体に良いだけでなく、アプローズが作る料理はどれも美味しいのだ。
アプローズは食に拘っている。
食事は飢えを満たしてくれて、美味しければ幸せをもたらしてくれる。
それを御師様は教えてくれた。
だからアプローズは他者に振舞う料理に手を抜いたりしない。
食べやすいよう、美味しいよう、体に良いよう、全てを考慮して食事を作り茶を淹れる。
それは聖女の祝福よりもはるかに癒しの効果があった。
その事に、皆が気付いていくまでにはまだ少しの時間がかかるのであった。
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