33 / 36
【32話】
しおりを挟む
ポーン!
ポポ―――――ンッ!!!
青空に色とりどりの煙幕弾が上がる。
王都は何時もの倍以上の人が居る。
隣国や属国の者も居るのだろう。
何せ今日は待ちに待った《建国祭》だ。
通りにズラリと並んだ屋台が美味しそうな匂いをさせている。
その匂いに惹かれサイヒは先程からフラフラと屋台を覗きに行く。
「サイヒ、まだ食べるのか?試合に差し支えないか?」
心配そうにルークがサイヒの翡翠色の瞳を覗き込む。
そう、今のサイヒは何時もの色合いで無い。
長い黒髪は空色になり、三つ編みにされ背中で跳ねている。
瞳は翡翠色。
いつもとは違う色合いなのに、何故か随分とサイヒの容貌に似合っていた。
「食い足りんくらいだ。試合が終わったら屋台の商品を喰らいつくすとするか」
「屋台のモノを食べずとも優勝したら王宮の晩餐会に招待される。そこでご馳走ならたんまり出るぞ?」
「本当か!?うむ、だが…王宮の晩餐会か。あの2人も居るのだよな……会いたいが今の暮らしが無くなるのも勿体ない…悩むな、途中で適当に負けるか?」
「サイヒが会いたくない人物がいるのか?それなら呼ばないよう陛下にお伝えして排除させて貰えるが」
「いや、会いたいと言えば会いたいのだが、はたから見るだけで充分なんだ。だが間違いなく見つかる。そうすると実家に連れ戻されかねん……」
「サイヒが実家に?それはダメだ!?サイヒは私の半身だろう?私を置いて行かないでくれ……」
ルークのエメラルドの瞳が潤む。
「あぁ私はルークの半身だ。決して置いて行ったりはしない。約束しよう」
ギュウ、とルークはサイヒに抱き着いた。
ここが裏道で良かった。
この2人をゲイに間違えるのはクオンだけで充分である。
「では途中でわざと負けるのか?私はサイヒの負けるところは見たくないのだが…」
「そうだな、勝利をルークに捧げると言ったしな。あの2人に関しては何か対策を考えよう。どうせ捧げるなら優勝がルークも嬉しいだろ?」
「あぁサイヒの優勝を信じている。マロンには悪いがサイヒの勝利は私が捧げて貰う。代わりにクオンをコーンとして出場させたから、クオンがマロンに勝利を捧げればよい。その方がマロンも喜ぶだろう。まぁ優勝はサイヒのモノだがな」
「ふふ、楽しみにしておけ。ではこれからは私はサイヒでなくリリー・オブ・ザ・ヴァリーだ。言い間違えてはいかんぞ」
サイヒが人差し指をルークの唇に当てる。
その仕種にルークは頬を上気させる。
唇を抑える手を取って、ルークはサイヒの甲に口付けた。
「応援してる、リリー・オブ・ザ・ヴァリー」
「ルークからのご褒美も期待しているよ」
ルークの耳元で甘いアルトの声で囁いて、サイヒは控室へと向かって行った。
「どうしよう、ご褒美?やっぱりこう言う時は”私をプレゼント”と言うヤツが良いのだろうか!?クオンに止められているから拡張はまだしてないし!今からでも間に合うか!?でもクオンが”初めての初々しさが男心を擽る”とも言っていたし!?」
顔を真っ赤にしたルークは、大会開始の銅鑼が鳴るまで1人で路地裏でパニックに陥るのだった。
ポポ―――――ンッ!!!
青空に色とりどりの煙幕弾が上がる。
王都は何時もの倍以上の人が居る。
隣国や属国の者も居るのだろう。
何せ今日は待ちに待った《建国祭》だ。
通りにズラリと並んだ屋台が美味しそうな匂いをさせている。
その匂いに惹かれサイヒは先程からフラフラと屋台を覗きに行く。
「サイヒ、まだ食べるのか?試合に差し支えないか?」
心配そうにルークがサイヒの翡翠色の瞳を覗き込む。
そう、今のサイヒは何時もの色合いで無い。
長い黒髪は空色になり、三つ編みにされ背中で跳ねている。
瞳は翡翠色。
いつもとは違う色合いなのに、何故か随分とサイヒの容貌に似合っていた。
「食い足りんくらいだ。試合が終わったら屋台の商品を喰らいつくすとするか」
「屋台のモノを食べずとも優勝したら王宮の晩餐会に招待される。そこでご馳走ならたんまり出るぞ?」
「本当か!?うむ、だが…王宮の晩餐会か。あの2人も居るのだよな……会いたいが今の暮らしが無くなるのも勿体ない…悩むな、途中で適当に負けるか?」
「サイヒが会いたくない人物がいるのか?それなら呼ばないよう陛下にお伝えして排除させて貰えるが」
「いや、会いたいと言えば会いたいのだが、はたから見るだけで充分なんだ。だが間違いなく見つかる。そうすると実家に連れ戻されかねん……」
「サイヒが実家に?それはダメだ!?サイヒは私の半身だろう?私を置いて行かないでくれ……」
ルークのエメラルドの瞳が潤む。
「あぁ私はルークの半身だ。決して置いて行ったりはしない。約束しよう」
ギュウ、とルークはサイヒに抱き着いた。
ここが裏道で良かった。
この2人をゲイに間違えるのはクオンだけで充分である。
「では途中でわざと負けるのか?私はサイヒの負けるところは見たくないのだが…」
「そうだな、勝利をルークに捧げると言ったしな。あの2人に関しては何か対策を考えよう。どうせ捧げるなら優勝がルークも嬉しいだろ?」
「あぁサイヒの優勝を信じている。マロンには悪いがサイヒの勝利は私が捧げて貰う。代わりにクオンをコーンとして出場させたから、クオンがマロンに勝利を捧げればよい。その方がマロンも喜ぶだろう。まぁ優勝はサイヒのモノだがな」
「ふふ、楽しみにしておけ。ではこれからは私はサイヒでなくリリー・オブ・ザ・ヴァリーだ。言い間違えてはいかんぞ」
サイヒが人差し指をルークの唇に当てる。
その仕種にルークは頬を上気させる。
唇を抑える手を取って、ルークはサイヒの甲に口付けた。
「応援してる、リリー・オブ・ザ・ヴァリー」
「ルークからのご褒美も期待しているよ」
ルークの耳元で甘いアルトの声で囁いて、サイヒは控室へと向かって行った。
「どうしよう、ご褒美?やっぱりこう言う時は”私をプレゼント”と言うヤツが良いのだろうか!?クオンに止められているから拡張はまだしてないし!今からでも間に合うか!?でもクオンが”初めての初々しさが男心を擽る”とも言っていたし!?」
顔を真っ赤にしたルークは、大会開始の銅鑼が鳴るまで1人で路地裏でパニックに陥るのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
69
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる