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15 ルーミア、完全に失望する
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「よく来てくれましたね。ジューク様」
「ラキア! てめえ舐めた真似しやがって!」
ジュークが吼える。
最上層に辿り着いた私たちは、竜魔人ラキアと対峙した。
ベストを着て男装したラキアは、穏やかに微笑んでいる。
その背中からは翼が生え、雷のように荒々しい魔力を纏っていた。
第十層は岩肌が剥き出しになったような足場の悪い地形だ。
空を飛べた方が有利だが、パーティ内で飛行の魔法が使えるのは私だけだ。
飛んだところで狙い撃ちされるのは目に見えている。
「ふふ、今回は荷物持ちさんはいないみたいですね」
「だからどうした。あんな野郎いてもいなくても何も変わらないんだよ」
「あはっ……あははははは! いてもいなくても何も変わらない!? これだけ落ちぶれててまだそんなこと言えるとか、スゴイですねジューク様。もはや才能ですよ。本当にあなたは最高ですっ!」
言いながら、ラキアが『サンダーボール』の魔法を飛ばしてきた。
雷をまとった小さな球が無数に放出される。
前回はジュークが魔剣で弾いて攻略した魔法だ。
ジュークは『身体強化』で加速すると、足場の悪いダンジョンをものともせずにラキアに接近戦を仕掛けようとした。迫りくる魔法を魔剣で薙ぎ払い――
「うああああああぁぁぁ!!!!」
雷撃を弾こうとしたジュークが魔剣を弾かれて蹲る。
痛みはカットされるが、魔法を受ける恐怖から解放されるわけではない。
頭では分かっていても、身体が勝手に痛みを再現することもある。
幻痛に襲われたジュークは痛みに膝をついた。
その目には激しい怒りが渦巻いていた。
「あら……。その魔剣、ちゃんと手入れしてないから効果が発揮できなくなってますね。もしかしてヒロト様が守っていたのですか? あなた自身も、その魔剣も」
「そんなわけねえ! そんなわけねえんだ! あいつの面倒を見てたのは俺だ!」
「はぁ……。こんな馬鹿に攻略されたとか、一生の恥ですね。恨みますよ、ヒロト様……」
「ジューク、一人で先走るな……!」
ロイが『状態異常』の魔法をラキアに放つ。彼女はそれを避け、空に逃げた。
「そういえばあなたがいましたね」
「ジューク、温存していた魔法を使って可能な限り戦闘力を底上げする。それなりには戦えるはずだ」
「遅いんだよ。なんでもっと早く魔法を使わねえ!」
「覚えておけ。大きな魔法は用意に時間も掛かる。呪符のように一瞬で起動できるものなどない」
「さっさと俺を強化しろ。そうすりゃあんな竜モドキ落とせる!」
「ラキアを舐めるなよ。それと、魔剣はもう使うな。予備の剣に切り替えた方がいい。さっきの攻撃で亀裂が入ってる」
「俺に指図するな! ルーミアとタカもしっかり動けよ!」
ラキアは滞空した状態から『サンダーボルト』の魔法を使用した。
空から雷が降り注ぎ、私は『シールド』の魔法で仲間を守ろうとした。
「くっ……」
ハッキリ言って私たちとラキアの間には倍以上もステータスの開きがある。
レベルが違いすぎるんだ。
「二重シールド!」
「竜爪撃」
上空から急降下したラキアが私の展開したシールドを砕く。
「いい気になってんなよ!」
『フライ』の魔法を付与されたジュークがラキアの攻撃に割り込んだ。
「くたばれ! 魔断剣!」
「二度目の――竜爪撃」
ジュークの剣とラキアの爪が激突する。
激しく火花が散り、最後に笑ったのはラキアだった。
「あはは、ロイ様のおかげでだいぶ良くなりましたが、まだまだ全然ダメですね。やはり彼がいないと勝負にならないようです」
「なんだとぉ……っ!」
「ライトニングエッジ」
ラキアの爪が輝き、世界が白く染まった。
次の瞬間、私の視界に入ったのは砕けた剣の破片だった。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」
目を押さえて蹲る。
「私の眼がぁぁぁぁ!!!!」
「攻略は中止する。リタイアだ」
「ロイ様、攻略中止の判断はジューク様にしかできませんよ。リーダーである彼が倒れているならまだしも、まだ諦める気はなさそうですからね」
「馬鹿な……。よせジューク! もうリタイアするんだ!」
「は? ルーミアが落ちただけだろ。まだやれるって」
痛い痛い痛い……痛い!
「ルーミア、しっかりしなさい。あなたの眼はもう癒えたわ」
「破片が残ってるの!」
「ごめんなさいね」
サク……と何かが突き立てられる音がして、私の意識はそこで落ちた。
「あなたはよく頑張ったわ。最低なリーダーのもとでね」
クリスの声が遠くに聞こえた。
「ラキア! てめえ舐めた真似しやがって!」
ジュークが吼える。
最上層に辿り着いた私たちは、竜魔人ラキアと対峙した。
ベストを着て男装したラキアは、穏やかに微笑んでいる。
その背中からは翼が生え、雷のように荒々しい魔力を纏っていた。
第十層は岩肌が剥き出しになったような足場の悪い地形だ。
空を飛べた方が有利だが、パーティ内で飛行の魔法が使えるのは私だけだ。
飛んだところで狙い撃ちされるのは目に見えている。
「ふふ、今回は荷物持ちさんはいないみたいですね」
「だからどうした。あんな野郎いてもいなくても何も変わらないんだよ」
「あはっ……あははははは! いてもいなくても何も変わらない!? これだけ落ちぶれててまだそんなこと言えるとか、スゴイですねジューク様。もはや才能ですよ。本当にあなたは最高ですっ!」
言いながら、ラキアが『サンダーボール』の魔法を飛ばしてきた。
雷をまとった小さな球が無数に放出される。
前回はジュークが魔剣で弾いて攻略した魔法だ。
ジュークは『身体強化』で加速すると、足場の悪いダンジョンをものともせずにラキアに接近戦を仕掛けようとした。迫りくる魔法を魔剣で薙ぎ払い――
「うああああああぁぁぁ!!!!」
雷撃を弾こうとしたジュークが魔剣を弾かれて蹲る。
痛みはカットされるが、魔法を受ける恐怖から解放されるわけではない。
頭では分かっていても、身体が勝手に痛みを再現することもある。
幻痛に襲われたジュークは痛みに膝をついた。
その目には激しい怒りが渦巻いていた。
「あら……。その魔剣、ちゃんと手入れしてないから効果が発揮できなくなってますね。もしかしてヒロト様が守っていたのですか? あなた自身も、その魔剣も」
「そんなわけねえ! そんなわけねえんだ! あいつの面倒を見てたのは俺だ!」
「はぁ……。こんな馬鹿に攻略されたとか、一生の恥ですね。恨みますよ、ヒロト様……」
「ジューク、一人で先走るな……!」
ロイが『状態異常』の魔法をラキアに放つ。彼女はそれを避け、空に逃げた。
「そういえばあなたがいましたね」
「ジューク、温存していた魔法を使って可能な限り戦闘力を底上げする。それなりには戦えるはずだ」
「遅いんだよ。なんでもっと早く魔法を使わねえ!」
「覚えておけ。大きな魔法は用意に時間も掛かる。呪符のように一瞬で起動できるものなどない」
「さっさと俺を強化しろ。そうすりゃあんな竜モドキ落とせる!」
「ラキアを舐めるなよ。それと、魔剣はもう使うな。予備の剣に切り替えた方がいい。さっきの攻撃で亀裂が入ってる」
「俺に指図するな! ルーミアとタカもしっかり動けよ!」
ラキアは滞空した状態から『サンダーボルト』の魔法を使用した。
空から雷が降り注ぎ、私は『シールド』の魔法で仲間を守ろうとした。
「くっ……」
ハッキリ言って私たちとラキアの間には倍以上もステータスの開きがある。
レベルが違いすぎるんだ。
「二重シールド!」
「竜爪撃」
上空から急降下したラキアが私の展開したシールドを砕く。
「いい気になってんなよ!」
『フライ』の魔法を付与されたジュークがラキアの攻撃に割り込んだ。
「くたばれ! 魔断剣!」
「二度目の――竜爪撃」
ジュークの剣とラキアの爪が激突する。
激しく火花が散り、最後に笑ったのはラキアだった。
「あはは、ロイ様のおかげでだいぶ良くなりましたが、まだまだ全然ダメですね。やはり彼がいないと勝負にならないようです」
「なんだとぉ……っ!」
「ライトニングエッジ」
ラキアの爪が輝き、世界が白く染まった。
次の瞬間、私の視界に入ったのは砕けた剣の破片だった。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」
目を押さえて蹲る。
「私の眼がぁぁぁぁ!!!!」
「攻略は中止する。リタイアだ」
「ロイ様、攻略中止の判断はジューク様にしかできませんよ。リーダーである彼が倒れているならまだしも、まだ諦める気はなさそうですからね」
「馬鹿な……。よせジューク! もうリタイアするんだ!」
「は? ルーミアが落ちただけだろ。まだやれるって」
痛い痛い痛い……痛い!
「ルーミア、しっかりしなさい。あなたの眼はもう癒えたわ」
「破片が残ってるの!」
「ごめんなさいね」
サク……と何かが突き立てられる音がして、私の意識はそこで落ちた。
「あなたはよく頑張ったわ。最低なリーダーのもとでね」
クリスの声が遠くに聞こえた。
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