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18 ラキアの誇り(イファのお遊戯)
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迷宮の第五層には必ずセーフルームが設けられている。
セーフルームではシャワーを浴びたり食事を作ったりすることができる。
僕たちは第五層のセーフルームに入り、温かい食事を取りながらダンジョンの攻略について意見をかわしていた。ダンジョンの攻略は長丁場になることが多く、半日かけて第五層まで上がったあと、いったん配信枠を閉じて翌朝から再開するパターンも少なくない。
今までは平均6時間くらいで第五層に達し、いったん枠を閉じてから翌日の朝に攻略を開始するパターンが多かった。しかし、今回は魔物が少なかったこともあり、3時間と経たずに第五層へ到達してしまった。
このペースなら今日中に十層へ到達することもできそうだ。
「配信的には面白くなるかもだけど、無理することはないと思うんだよね」
「家のベッドで寝たい気もするけどなー」
「わたくしもさっさと攻略してヒロト様に可愛がっていただきたいですわぁ」
「下品なこと言わないでください」
「セックスが下品だとでも仰いますの? そういう考えならヒロト様は独り占めさせていただきますわ」
「ふざけないで! セックスにも上等なモノと下賤なモノがあるのよ。私と兄さんのセックスはちゃんと綺麗よ」
「馬鹿な話はやめてくれよ。兄貴が引いてるだろ」
「違います! 私はイファに乗せられただけです! この魔物!」
「はいはい、皆仲良くね」
ヒカリは乗せられやすいしイファは乗せるのが上手い。
ある意味、相性が良さそうだ。
「じゃあこのまま攻略しちゃおうか。僕の魔力も温存できてるし」
「ヒロト様、シャドーは禁止ですわよ?」
「分かってるよ。僕もリーダーとして仕事したいしね」
脚光を浴びる役目を三人にだけ押しつける気はない。
じゃあ、少し派手にいこうか。
第六層、僕は『共有』の呪符を使いイファ、ヒカリ、ミアの力を借りた。
三人分の身体能力、魔力、その他諸々を借りた僕は、階層の全魔物を対象とした攻撃魔法、ラグナロクを使い、世界を滅ぼす光の照射によって僅か三秒で階層をクリアした。
「終わったね」
「「「………………」」」
誰も何も言わない。
絨毯爆撃でもされたような階層に僕ら以外の生き残りはいない。
「ににににに、兄さん、何をしたんですか?」
「共有したヒカリの記憶から一番強そうな魔法を取り出して使ってみたんだけど」
「私はあんな魔法知りません!」
「そうなの? でもヒカリの記憶には確かにあの魔法の記憶が眠ってたみたいだよ? 勇者の力と関係があるのかもね」
「……つーか、こんな攻略の仕方ありなのか?」
「今回の相手はハイドカンパニーですもの。やり過ぎるくらいで丁度いいのですわ。ヒロト様に敵対するような行為を取るのがいけないんです」
「そうそう。盤外戦術でクビにされた恨みもあるからね。この調子でクリアしてくよ」
宣言通り、僕は第七層、第八層、第九層をラグナロクで焼き払った。
そして、第十層である。
そこにはビビり散らかして土下座する魔人の姿があった。
というか、誰かと思えばラキアだった。
「あれ、ラキアさんじゃない。久しぶり。また嫌がらせしにきたの?」
「どうか、ラグナロクは使わないでください」
「なんで?」
「こんなの配信に乗せられません! ハイドカンパニーで三番目に強い魔人が一瞬で蒸発するところなんて……!」
「イファ、どう思う?」
「そうですわねえ。でしたら少し十八禁的な罰を与えたいですわね」
イファが足元を蹴ると、触手を生やした巨大なオークが召喚された。
豚と人間と触手が合体した奇妙な生物みたいだ。
「これの相手ができたらラグナロクは回避させてあげる、というのはいかがでしょう」
「えげつねーけど、兄貴に嫌がらせしてたんだし、こんくらいはいいんじゃね?」
「召喚は禁止と言ったばかりですが、これくらいの罰が妥当でしょうね」
「この鬼畜共め!」
ラキアが雷の魔法を使う。
しかし、無駄だ。
「このキメラオークには雷の完全耐性がついてますのー。キメオちゃん、たっぷり可愛がってさしあげて?」
キメオの背中から伸びた触手がラキアの四肢を拘束する。
「やめてください!」
「ジ・エンドですわぁ」
ラキアの雷はキメオに全く効果を与えなかった。
四肢を拘束された彼女は泣き叫んだ。
「許してヒロト様! 何でもしますからぁ!」
「憐れですわー。ヒロト様、どうします?」
「そうだね。リタイアするなら許してあげるよ?」
「リ……リタイア。それだけはできません。ハイドカンパニーに所属する者として、最後の誇りがあります」
「なるほど。じゃ、頑張ってね」
お茶の間にお届けできないような処刑シーンが始まりそうだ。
「わたくし、昔からお人形遊びが大好きでしたの」
ゴキッと嫌な音が聞こえる。
「全身の骨をバキバキにしてから種づけショーを開始しますわぁ」
「やめろぉぉぉー!」
まったく、やれやれだよ。
――ラグナロク。
ダンジョンもろとも消し去る程の閃光が発生し、ハイドカンパニーが生み出したあらゆる物体、命を消滅させていく。
ラキアのエーテル体も消滅し、イファのお人形遊びも中断された。
「ふふ、優しいんですのね。自分をクビに追い込んだ仇でしょう?」
「あんなクズの為にイファを汚したくない。それだけだよ」
「……す・き」
甘えてくるイファを受け止め、抱きしめる。
本当ならここでインタビューが始まるはずだったけど、期待できそうにないので帰ることにした。
あとで聞いた話だけど、ラキアは休暇届けを出してそのまま街を離れたらしい。
こうして、僕は復讐の一つを無事完遂した……のかもしれない。
セーフルームではシャワーを浴びたり食事を作ったりすることができる。
僕たちは第五層のセーフルームに入り、温かい食事を取りながらダンジョンの攻略について意見をかわしていた。ダンジョンの攻略は長丁場になることが多く、半日かけて第五層まで上がったあと、いったん配信枠を閉じて翌朝から再開するパターンも少なくない。
今までは平均6時間くらいで第五層に達し、いったん枠を閉じてから翌日の朝に攻略を開始するパターンが多かった。しかし、今回は魔物が少なかったこともあり、3時間と経たずに第五層へ到達してしまった。
このペースなら今日中に十層へ到達することもできそうだ。
「配信的には面白くなるかもだけど、無理することはないと思うんだよね」
「家のベッドで寝たい気もするけどなー」
「わたくしもさっさと攻略してヒロト様に可愛がっていただきたいですわぁ」
「下品なこと言わないでください」
「セックスが下品だとでも仰いますの? そういう考えならヒロト様は独り占めさせていただきますわ」
「ふざけないで! セックスにも上等なモノと下賤なモノがあるのよ。私と兄さんのセックスはちゃんと綺麗よ」
「馬鹿な話はやめてくれよ。兄貴が引いてるだろ」
「違います! 私はイファに乗せられただけです! この魔物!」
「はいはい、皆仲良くね」
ヒカリは乗せられやすいしイファは乗せるのが上手い。
ある意味、相性が良さそうだ。
「じゃあこのまま攻略しちゃおうか。僕の魔力も温存できてるし」
「ヒロト様、シャドーは禁止ですわよ?」
「分かってるよ。僕もリーダーとして仕事したいしね」
脚光を浴びる役目を三人にだけ押しつける気はない。
じゃあ、少し派手にいこうか。
第六層、僕は『共有』の呪符を使いイファ、ヒカリ、ミアの力を借りた。
三人分の身体能力、魔力、その他諸々を借りた僕は、階層の全魔物を対象とした攻撃魔法、ラグナロクを使い、世界を滅ぼす光の照射によって僅か三秒で階層をクリアした。
「終わったね」
「「「………………」」」
誰も何も言わない。
絨毯爆撃でもされたような階層に僕ら以外の生き残りはいない。
「ににににに、兄さん、何をしたんですか?」
「共有したヒカリの記憶から一番強そうな魔法を取り出して使ってみたんだけど」
「私はあんな魔法知りません!」
「そうなの? でもヒカリの記憶には確かにあの魔法の記憶が眠ってたみたいだよ? 勇者の力と関係があるのかもね」
「……つーか、こんな攻略の仕方ありなのか?」
「今回の相手はハイドカンパニーですもの。やり過ぎるくらいで丁度いいのですわ。ヒロト様に敵対するような行為を取るのがいけないんです」
「そうそう。盤外戦術でクビにされた恨みもあるからね。この調子でクリアしてくよ」
宣言通り、僕は第七層、第八層、第九層をラグナロクで焼き払った。
そして、第十層である。
そこにはビビり散らかして土下座する魔人の姿があった。
というか、誰かと思えばラキアだった。
「あれ、ラキアさんじゃない。久しぶり。また嫌がらせしにきたの?」
「どうか、ラグナロクは使わないでください」
「なんで?」
「こんなの配信に乗せられません! ハイドカンパニーで三番目に強い魔人が一瞬で蒸発するところなんて……!」
「イファ、どう思う?」
「そうですわねえ。でしたら少し十八禁的な罰を与えたいですわね」
イファが足元を蹴ると、触手を生やした巨大なオークが召喚された。
豚と人間と触手が合体した奇妙な生物みたいだ。
「これの相手ができたらラグナロクは回避させてあげる、というのはいかがでしょう」
「えげつねーけど、兄貴に嫌がらせしてたんだし、こんくらいはいいんじゃね?」
「召喚は禁止と言ったばかりですが、これくらいの罰が妥当でしょうね」
「この鬼畜共め!」
ラキアが雷の魔法を使う。
しかし、無駄だ。
「このキメラオークには雷の完全耐性がついてますのー。キメオちゃん、たっぷり可愛がってさしあげて?」
キメオの背中から伸びた触手がラキアの四肢を拘束する。
「やめてください!」
「ジ・エンドですわぁ」
ラキアの雷はキメオに全く効果を与えなかった。
四肢を拘束された彼女は泣き叫んだ。
「許してヒロト様! 何でもしますからぁ!」
「憐れですわー。ヒロト様、どうします?」
「そうだね。リタイアするなら許してあげるよ?」
「リ……リタイア。それだけはできません。ハイドカンパニーに所属する者として、最後の誇りがあります」
「なるほど。じゃ、頑張ってね」
お茶の間にお届けできないような処刑シーンが始まりそうだ。
「わたくし、昔からお人形遊びが大好きでしたの」
ゴキッと嫌な音が聞こえる。
「全身の骨をバキバキにしてから種づけショーを開始しますわぁ」
「やめろぉぉぉー!」
まったく、やれやれだよ。
――ラグナロク。
ダンジョンもろとも消し去る程の閃光が発生し、ハイドカンパニーが生み出したあらゆる物体、命を消滅させていく。
ラキアのエーテル体も消滅し、イファのお人形遊びも中断された。
「ふふ、優しいんですのね。自分をクビに追い込んだ仇でしょう?」
「あんなクズの為にイファを汚したくない。それだけだよ」
「……す・き」
甘えてくるイファを受け止め、抱きしめる。
本当ならここでインタビューが始まるはずだったけど、期待できそうにないので帰ることにした。
あとで聞いた話だけど、ラキアは休暇届けを出してそのまま街を離れたらしい。
こうして、僕は復讐の一つを無事完遂した……のかもしれない。
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