やめて!お仕置きしないで!本命の身代わりなのに嫉妬するの?〜国から逃亡中の王子は変態悪魔に脅される!?〜

ゆきぶた

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一章 本命じゃないくせに嫉妬はやめて!

70、ホッと一息

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今の俺は足がガクガクで歩けないため、ウルに持ち上げられてバスタブの前にいた。

「悪いんだけど、俺もデオと一緒にお風呂に入りたいんだ、狭くなるけど許してね?」
「それぐらい別に……俺も一緒に入りたいから大丈夫」
「そう?なら遠慮なく入るからね~。それじゃあ抱えたまま入るけど、デオは俺の上に座るように同じ向きに座って?」

そう言われた通り、俺はウルを背にするように座る。やはり2人入ると狭いため、お湯が少し溢れ出てしまう。
それを眺めつつ、オレは湯船に浸かる事でようやくホッと落ち着けた気がしたのだ。

お風呂に浸かってから、俺達は暫く無言だった。
でも水の音がチャプチャプと心地いい。そんなゆっくりした時間が流れ始めたとき、突然ウルがギュッと後ろから俺を強く抱きしめた。

「ウル?」
「……ごめんね、デオ。本当にごめん」

いきなり何を謝られたのかと思った。
でもそういえば、俺のを舐めたあれは誓約を試すためにしていた事を思い出す。
そしてウルがわざわざ謝るということは、やっぱり……。

「そうか、俺のを舐めても誓約できなかったんだな……?もとよりそんな簡単に上手くいかない事はわかっている。だからそこまでショックじゃないから安心してくれ」
「いや確かに誓約できなかったし、その事も謝りたいけどさ……。でも今俺が謝ったのは、デオに何かあったらすぐ助けに行くって約束したのに、間に合わなかった事を言ってるんだよ?」
「……え?」

そう言ったウルの声は少し震えていた。
しかし俺はそんな約束をした事なんて覚えていない。
でもウルの様子から、もしかすると俺が落ち着くまでずっと謝るタイミングを窺っていたのかもしれない。

「俺がもっと強ければあいつを倒せたかもしれないのに、それ以前にもっと早くデオのもとに駆けつけれたら、誓約されるのを防げたかもしれないのに……それなのに、俺は間に合わなかった!」
「いや、ウルのせいじゃ!?ウルは何も悪くない!寧ろあれは全部俺が悪いんだ……」

俺がガリアなんかに気を許してしまったから……。

「ごめんデオ、そんな顔させたくて言ったわけじゃないんだ」
「ううん。俺が悪いんだ。それに俺はもう大丈夫だから……ウルが気になる事、何でも聞いてくれよ」
「……わかったよ。でも辛くなったら途中でやめていいからね?」

嘘をつく気なんて全くないと言う気持ちで、俺はウルの手をギュッと握るとしっかり頷いた。

「それじゃあ聞くけど、俺がいない間に一体何があったのか教えてほしい」
「……ああ、あれは三日前ぐらいの事だったかな、俺が偶然アイツと出会ったのは───」


そして、俺はポツリポツリとウルに全てを話していた。
ガリアに出会った当初は警戒していたのに、気がついたら絆されてしまった事。
その後酒を飲みに行き、ベロベロに酔ってしまったところに魔法をかけられた事。
そして俺を追う騎士達を手引きし、わぞわざ相打ちにさせた後に、倒れた騎士達に見せつけるように俺を犯し始めた事……。

「それとアイツは、ウルに復讐すると言っていた」
「そんな事言ってたの?……その理由は何か言っていたのかな?」
「確かウルに手を潰された事と、夢魔の俺をコケにした事が許せない。みたいなこといってたけど……本当にそれだけなのか、俺は信じられない」
「ん~、どうだろう?まあ、悪魔は基本的に皆プライドだけは高いからね~。俺みたいに強さを求めなくても最初からある程度強いせいで、何もしないやつの方が多いくせに文句だけは一人前なんだよね」

その口調から、ウルは他の悪魔にも妬まれた事があるのかもしれない。

「でもその話が本当ならさ、デオがあの男に狙われたのは俺のせいって事じゃない?」
「ど、どうだろう……ガリアの言葉は信用できないけど、一応は俺の事が好きになったから誓約する事にしたって言ってたような……」
「ふーん、あの男ガリアって言うのか……何処かで聞いたような名前のような?」

ここ数日の癖で、つい名前で呼んでしまった。
そういえばガリアがあのお店の持ち主である事を、俺はまだ伝えていなかった事を思い出す。

「そういえば、前に俺が唇の保湿クリームを買って貰ったお店をガリアは自分の店だって言ってたけど……」
「あぁ、それだよ!あそこは『ガリアリラ』と言う名前のお店なんだけど……そのガリアってやつは、名前的に起業者って事なのかな?」
「多分だけど……でもそれがわかっていれば、もしかしてすぐに居場所がわかるだろうか?」
「いや、『ガリアリア』ってわりと色んな国に店舗があるから、やつが何処の国にいるのかまでは流石にわからないだろうね」
「そうか……」

やはりそんな上手くはいかないということか……。
少し落ち込んで下を俯いた俺の耳に、ウルの大きなため息が聞こえてきた。
それが気になった俺は顔をあげる。

「はぁ~。それにしても、デオが魅力的過ぎるのもいけないよね」
「な、なんでだよ?俺が魅力的な訳がないだろ!その前に男同士なんだぞ!?」
「だから、俺達上位種からしたらそんなの関係ないんだって~」

そう言われても、俺の常識にはあてはまらないのだから仕方がない。

「とにかく、そのガリアって言う男を明日から一緒に探そうね?」
「あ、ああ。って、ウルはまだ俺と一緒に居てくれるのか……?」
「何でそんな話になるのかなぁ?俺達は両思いだったんだから離れる理由がないのにねぇ~」
「そ、それはわかってる。でも俺はまだ色んな事が信じられなくて不安なんだ……」
「それならデオの不安が吹き飛ぶぐらい、いっぱい愛してあげる。だから今はこの幸せを噛み締めようね?」

ウルは俺の手を包み込むようにギュッと握ると、耳へとキスを落としてきた。
その事に驚いた俺はつい声を上げてしまう。

「ぁっ!」
「あれ?デオったら~、耳も弱いのかも??」
「も、もう!いい加減にしろ~~~!!」

俺はウルの手を離し、咄嗟に耳を押さえて湯船の中に顔を半分沈めたのだ。

「ごめん、ごめん!」と言っているウルの声を聞きながら、俺は今日のことを思い出す。
本当に信じられない事が次々とおこって、ショックな事も沢山あった。
だけどウルと両思いだった事、こうして一緒にいられる時間を俺は大切にしたかった。

「あ、そうだ言い忘れてたね」
「?」

まだ何か言う事があっただろうかと、俺は湯船から顔を出す。
ニッコリといつもと変わらない笑顔でウルは言う。

「ただいま、デオ……!」
「……っ!おかえり、ウル!」

だからお俺もウルに精一杯微笑んでいた。
そして俺達は、この幸せを噛み締めるように再び長い長いキスを贈りあう。

「そうだ、こっちも言わないとね?」
「今度こそなんだよ……」
「デオが元気になったら、ちゃんとお仕置きしてあげるからね?」
「なっ!!?んんっ……!」

言い返す前にウルに唇を塞がれた俺は、今回の事は俺も悪かったし……なによりどこかでそれを望んでしまっている俺がいて、もうこれてば本当にウル無しでは生きていけない事を実感してしまう。

だから、今のこの幸せを壊さないでくれ───。

そう祈りながら、俺はウルと何度も何度もキスをしたのだった。












ー  ー  ー  ー  ー

デオ視点での一章はこちらで終わりです。
一章最後だしと、予定の3倍ぐらいの長さで慰めえっちとイチャイチャが気がついたらカーニバルしてて、ダレまくってすみませんでした!!
後少しウル視点と、ガリア視点が入ってから怒涛の二章に入りますのでよろしくお願いします!
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