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風吹く星よ
空魔
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◇ 巫女と空の王
別れの日から月日が経ちました。
長い時間の中で多くの変化がありました。
双子の女の子もすっかり大人の女性になりました。
姉は老若男女から好かれる村の人気者です。
その明るさは一緒にいる人たちに元気を与えていました。
妹も好かれていましたが、彼女は特に男性から人気がありました。
月日は彼女に美貌を与えたのです。
その美貌は他の島から求婚者が訪れるほどです。
ですが、妹は誰からの求婚を受けようとはしませんでした。
変化したのはそれだけではありません。
人と空の王との関係も変わっていました。
良い方ではありません。悪い方にです。
大人しい空の王たちが人を襲うようになったのです。
それによって、多くの人々が犠牲になりました。
ですが、人間になす術はありませんでした。
空の王と人では力が違いすぎるのです。人々はただ逃げるしかありませんでした。
二人の住む村は平和でしたが、その平和は終わりを告げました。
空の王が村に襲い掛かってきたのです。
村人たちは逃げ惑います。
村人たちに更なる絶望が襲い掛かりました。
空の王がもう一体現れたのです。
村人たちが終わりを意識しました。ですが双子は違います。
双子にはそれが誰なのか一目で分かりました。
何故なら、彼女たちは親友だからです。親友を見間違えるわけはありません。
新たに現れた空の王は村を襲っている空の王に体当たりをしました。
空の王同士の戦いは激しく、村も巻き込むほどでした。
勝ったのは新たに現れた空の王でした。
村を襲った空の王は黒い靄を撒き散らしながら、逃げていきました。
◇
僕らの目標は脳や心臓にあたる器官だ。
この巨体をどうにかするには、それしかない。
今のところ通路は分かれておらず、ずっと一本道だ。
免疫能力のような体内に入り込んだ体に悪影響を及ぼすものを排除する機構があると思っていたが、今のところ遭遇していない。
色々と気になることがある。
この生き物に生命力レーダーが全く反応を示さない。
これほど強大な生物でそれはありえない。
そもそも生物かどうかも怪しい。
もしかしたら、生物ではなく、ゴーレムのようなモンスターなのかもしれない。
ヴィニアちゃんに教えてもらった昔話では、このモンスターはちゃんと意思を持っている。
非生物でも、意思を持った存在は珍しくはない。
例を挙げると、作業ロボたちだ。
彼らも意思がある。そういう風に作った。
周囲に注意を払いながら、先を急ぐと、通路が終わり、開けた空間があった。
「開けた空間がある」
『こっちもよ』
空間の広さは向こうの方が広い。
通路と比例していた。
中に入る前に危険がないかを確かめる必要がある。
使うのはカジノでもお世話になったおもちゃだ。
役に立つので、また仕入れておいた。
開けた空間に向けて走らせる。
中に入っても、攻撃されることはなかった。
数秒後、おもちゃは止まった。
タイヤが溶けてなくなったからだ。
通路と同じく酸があるみたいだ。
鑑定してみると、酸の強さは通路の肉壁から流れ出ている物と大差ない。
これなら入っても大丈夫そうだ。
まだ安全が確定したわけじゃないので、警戒しつつ中に入る。
黒い球体があり、そこから黒い靄のような物が吹き出していた。
『こっちにも同じのがあるよ』
紅霞のカメラ映像を確認すると、同じ物を捉えていた。
ただし、サイズは向こうの方が大きいみたいだ。
それに向こうには心臓らしきものがあった。
どうやら、あちらが正解のルートだったらしい。
『とりあえず調べて……』
「ユラさん?ユラさん!?」
通信が切れた。
再接続を試みてみたが、何度やっても不可能だった。
妨害されているみたいだ。
同時にインベントリも使えなくなっていた。
その時、背筋に強烈な悪寒が走った。
「……何か来る」
戦闘態勢を取り、敵に備える。
悪寒の原因は黒い球体だ。
黒い球体が激しく脈動し、形を変え始めた。
最初は肥大化。
次に手、そして足が生えた。
「させるか!」
あちらの準備が整うのを大人しく待っているつもりはない。
手榴弾のピンを外し、投擲した。
爆発はピンを外してから三秒後。
返信途中の球体が爆風に包まれる。
「あっ!やっちゃった」
手榴弾を選んだのは失敗だった。
手榴弾は強力だが、爆風で敵の姿が見えなくなってしまう。
威力は低くても銃を使っておくべきだった。焦っていたせいで、選択をミスしてしまった。
爆風が晴れると、そこには異形の怪物がいた。
変身を阻止することはできなかったみたいだ。
「こいつが真の空魔か!」
僕たちが今まで空魔だと思っていた者、あれは空魔ではないのだ。
別れの日から月日が経ちました。
長い時間の中で多くの変化がありました。
双子の女の子もすっかり大人の女性になりました。
姉は老若男女から好かれる村の人気者です。
その明るさは一緒にいる人たちに元気を与えていました。
妹も好かれていましたが、彼女は特に男性から人気がありました。
月日は彼女に美貌を与えたのです。
その美貌は他の島から求婚者が訪れるほどです。
ですが、妹は誰からの求婚を受けようとはしませんでした。
変化したのはそれだけではありません。
人と空の王との関係も変わっていました。
良い方ではありません。悪い方にです。
大人しい空の王たちが人を襲うようになったのです。
それによって、多くの人々が犠牲になりました。
ですが、人間になす術はありませんでした。
空の王と人では力が違いすぎるのです。人々はただ逃げるしかありませんでした。
二人の住む村は平和でしたが、その平和は終わりを告げました。
空の王が村に襲い掛かってきたのです。
村人たちは逃げ惑います。
村人たちに更なる絶望が襲い掛かりました。
空の王がもう一体現れたのです。
村人たちが終わりを意識しました。ですが双子は違います。
双子にはそれが誰なのか一目で分かりました。
何故なら、彼女たちは親友だからです。親友を見間違えるわけはありません。
新たに現れた空の王は村を襲っている空の王に体当たりをしました。
空の王同士の戦いは激しく、村も巻き込むほどでした。
勝ったのは新たに現れた空の王でした。
村を襲った空の王は黒い靄を撒き散らしながら、逃げていきました。
◇
僕らの目標は脳や心臓にあたる器官だ。
この巨体をどうにかするには、それしかない。
今のところ通路は分かれておらず、ずっと一本道だ。
免疫能力のような体内に入り込んだ体に悪影響を及ぼすものを排除する機構があると思っていたが、今のところ遭遇していない。
色々と気になることがある。
この生き物に生命力レーダーが全く反応を示さない。
これほど強大な生物でそれはありえない。
そもそも生物かどうかも怪しい。
もしかしたら、生物ではなく、ゴーレムのようなモンスターなのかもしれない。
ヴィニアちゃんに教えてもらった昔話では、このモンスターはちゃんと意思を持っている。
非生物でも、意思を持った存在は珍しくはない。
例を挙げると、作業ロボたちだ。
彼らも意思がある。そういう風に作った。
周囲に注意を払いながら、先を急ぐと、通路が終わり、開けた空間があった。
「開けた空間がある」
『こっちもよ』
空間の広さは向こうの方が広い。
通路と比例していた。
中に入る前に危険がないかを確かめる必要がある。
使うのはカジノでもお世話になったおもちゃだ。
役に立つので、また仕入れておいた。
開けた空間に向けて走らせる。
中に入っても、攻撃されることはなかった。
数秒後、おもちゃは止まった。
タイヤが溶けてなくなったからだ。
通路と同じく酸があるみたいだ。
鑑定してみると、酸の強さは通路の肉壁から流れ出ている物と大差ない。
これなら入っても大丈夫そうだ。
まだ安全が確定したわけじゃないので、警戒しつつ中に入る。
黒い球体があり、そこから黒い靄のような物が吹き出していた。
『こっちにも同じのがあるよ』
紅霞のカメラ映像を確認すると、同じ物を捉えていた。
ただし、サイズは向こうの方が大きいみたいだ。
それに向こうには心臓らしきものがあった。
どうやら、あちらが正解のルートだったらしい。
『とりあえず調べて……』
「ユラさん?ユラさん!?」
通信が切れた。
再接続を試みてみたが、何度やっても不可能だった。
妨害されているみたいだ。
同時にインベントリも使えなくなっていた。
その時、背筋に強烈な悪寒が走った。
「……何か来る」
戦闘態勢を取り、敵に備える。
悪寒の原因は黒い球体だ。
黒い球体が激しく脈動し、形を変え始めた。
最初は肥大化。
次に手、そして足が生えた。
「させるか!」
あちらの準備が整うのを大人しく待っているつもりはない。
手榴弾のピンを外し、投擲した。
爆発はピンを外してから三秒後。
返信途中の球体が爆風に包まれる。
「あっ!やっちゃった」
手榴弾を選んだのは失敗だった。
手榴弾は強力だが、爆風で敵の姿が見えなくなってしまう。
威力は低くても銃を使っておくべきだった。焦っていたせいで、選択をミスしてしまった。
爆風が晴れると、そこには異形の怪物がいた。
変身を阻止することはできなかったみたいだ。
「こいつが真の空魔か!」
僕たちが今まで空魔だと思っていた者、あれは空魔ではないのだ。
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