全てを識る指先

SF

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第6章

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約束の日、フラヴィオは意気揚々とセシリオの工房まで馬車を走らせた。
白く日焼けした木の扉の前に立ち呼び鈴を鳴らす。杖で床を穿つ音が近づき、セシリオがフラヴィオを出迎える。

「何もないところですが」

とセシリオが言う通り、彼の家の中は寝台と2人がけのテーブルセットしかなかった。
作品は地下の工房で作っているという。
地下に降りる階段を下れば埃っぽいような、砂のような臭いが鼻をつく。地下室にセシリオが先に降りて行ったが、まるで見えているかのようにスムーズに歩き回っている。そして蝋燭の明かりがセシリオの顔や地下室を内装を浮かび上がらせた。
無数に浮かぶ胸像たちの顔に一瞬ギョッとするが、自分の顔も探し始める。しかし見当たらない。セシリオに告げれば

「こちらになります」

と大きな岩の塊を見せられた。まだ人の姿すらしていない。眉を顰めるフラヴィオを見透かしたように

「時間がかかるものなのですよ」

とセシリオは苦笑した。

「さあ、続きをしましょう」

セシリオは髪を括る。フラヴィオに触れる前の動作だ。フラヴィオの心臓が跳ねる。
しかし心の揺れを悟られまいと高圧的な口調が飛び出す。

「今日も僕を裸に剥くのか?」
「そうしていただけると助かりますが、無理には」

言うが早く、パサリと布の落ちる音がした。続けてその音が重なり、ひたりと湿った足音がした。セシリオはふいに体温を胸元に感じ、淡白な果物のような香りが鼻先を掠めた。思わず見えぬ目の視線を落とす。
一矢纏わぬフラヴィオが、セシリオの胸元に寄り添っていた。

「今日は、全部お前に教えてやるよ」

挑発的な指先が、セシリオの首から顔の輪郭を撫であげる。セシリオは息を呑み、そして腹を括ったように真っ直ぐフラヴィオに顔を向ける。

「本当によろしいのですね?」
「ああ」

フラヴィオはニヤリと口角を上げる。セシリオは真剣な顔つきのまま、フラヴィオの腰を抱き寄せた。

「貴方の美と淫らの奥にある真まことを、私も知りたいと思っております」

フラヴィオはその言葉を聞いた瞬間、勝ったと優越感に溺れた。
セシリオは香油の入った小さな壺を持ち出す。そして足を開いて椅子に座り、フラヴィオはその間に膝立ちにさせ身体に毛布をかけた。

「いらないだろう」

と床に落とすも

「身体が冷えますから」とまた肩にかけられる。おかしいと思いながらも香油の纏った指で後孔を撫でられ期待に体が震えた。浅く指を入れ、肉輪をゆっくり解される。錐で木に穴をあけるよう、じわじわと指が浸食していった。異物感を感じるが、フラヴィオはやがてそれが快楽に変わることを知っている。欲に腰が揺れた。
だがセシリオの手はフラヴィオの顔に添えられ、表情筋の動きをつぶさに追うばかりだ。

「あ」

とフラヴィオから声があがる。セシリオの指はフラヴィオの中に栗の実ほどの大きさのしこりを探り当てた。丁寧に形をなぞればフラヴィオの身体は小鳥のように震え上擦った声で啼いた。
セシリオの指は根元まで埋まりフラヴィオの体内でうねる。それに合わせてフラヴィオは身をくねらせ喘いだ。花芯は立ち上がりすでに蜜を溢してセシリオのシャツを濡らす。

「んっ、ねえ、もういいでしょう」
「やめるのですか」
「違っ、もう欲しい」

フラヴィオの指がセシリオの中心を伝う。まだ芯の通っていないそこは柔らかかった。
大した自制心だとセシリオの顔を見れば、鉱物のような金と緑が無機質な光を放っていた。
それがフラヴィオの胸を冷たく突き刺す。体から熱が引いていく。自ら腰を振って強請る様も、乱れて法悦の声をあげる様も、冷徹な観察者の目は
さぞ滑稽に映っているに違いないと羞恥に赤く染まる。

「・・・もうやめる」
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