全てを識る指先

SF

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第9章

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セシリオのベッドは硬かった。木でできた寝台に毛布を何重にも重ねただけのものだ。
フラヴィオはそこに降ろされる。繊細なガラス細工を仕舞い込むように毛布をかけられ、服を脱いだセシリオに抱き締められる。肉の鎧を纏ったようなゴツゴツした体躯は、見た目に反して暖かく弾力を持っていた。
セシリオの大きな手がゆるりと動いた。フラヴィオの顔や首の付け根、腰のくびれなどを丁寧になぞる。対象を写しとる無機質な動きではなく、まさしく愛と慈しみが込められた愛撫だ。
胸の飾りや蟻の門渡など敏感な場所ばかりではなく、内腿や背骨の浮き出た皮膚などに触れられれば、フラヴィオも知らなかった性感帯が目覚めていく。感じる場所ばかり攻め立てたれ、フラヴィオは堪らず声をあげ続けた。声が掠れてくると、セシリオが口づけてきて口を潤す。

「はっ・・・待って・・・」

フラヴィオは息を乱しながら、腰骨を親指でさするセシリオの手を掴む。

「どうされました?」

セシリオの呼吸も、興奮から浅く速くなっていた。だが「嫌でしたか?」とフラヴィオを気遣うことを忘れない。

「お嫌なら、やめてもよろしいのですよ」

嫌ではない。むしろこれまで寝た誰よりも巧みで優しかった。しかし、過ぎた快感についていけなかったということなど、誰もを魅了し翻弄してきた自負のあるフラヴィオに言えるわけがない。

「フラヴィオ様、沈黙が一番困ります。私は貴方のお顔が見えません。嫌なら嫌とはっきりおっしゃってください」 
「・・・嫌、じゃない。続けろ」

追い立てられるような快感からしばし解放され少し落ちついた。セシリオの少し咎めるような口調にフラヴィオはふてくされ唇を結ぶ。が、セシリオの唇に食まれ、フラヴィオの可憐な唇に分厚い舌が割って入る。
上顎の襞をセシリオの舌が往復する。ぞくぞくと背中を羽根でなぞられるような快感が走った。

「ここ、お好きですか」

セシリオの指がフラヴィオの唇を押す。フラヴィオから少し口を開きセシリオの指を迎え入れる。

「前に触れた時も、こんなふうに」

セシリオの人差し指と中指が口蓋をくすぐると、白い肩が微かに跳ねた。触られていた時の反応がセシリオに筒抜けだったことを知り、羞恥に顔を焼かれた。

「お前っ、よもや最初から邪な」
「とんでもない。ただ、覚えていますよ。ここも」
「・・・あっ・・・」
「ほら、そうやって震えて」

セシリオは、フラヴィオの形を写し取りながらも、触れると彼が微かに声をあげたり背中を浮かせたりした場所を覚えていた。そこを手のひらや指先で巡回する。フラヴィオの形を感じとっていたのとは反対に、セシリオの手の感触を刻み込むように。
フラヴィオはあっという間に快楽の渦に飲まれていった。
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