全てを識る指先

SF

文字の大きさ
12 / 22

第12章

しおりを挟む
冬が来た。
屋敷や森は雪の真白に閉ざされる。
フラヴィオのもっぱらの友は白の絵の具とサモワール、シルクロードから渡ってきた毛織物だ。
窓から見える白銀の景色は、朝になれば朝日に照らされて薄く青い影を作り、昼は曇り空からも貪欲に光を吸収してキラキラと光り、夜は帷の中で仄明るく存在を主張する。木の影に梟やキツネの目玉がたまにきらりと光ることもある。
毛織り物を羽織りそれらをキャンパスに筆で映していき、指が悴んでこればサモワールで淹れた茶を啜った。ボーンチャイナのカップは薄く、平素ならば茶を淹れると熱くて持てないほどであったが、氷のように冷たくなった手を手っ取り早く温めるのにちょうどよかった。フラヴィオはせっかちな性分なのだ。
そのため、セシリオが一向に訪ねてこないことに苛立っていた。完成には時間がかかると言っていたし、雪と氷で閉ざされた森の中にある屋敷に盲人の足で来るのは自殺行為に等しい。せめて手紙の一つでも欲しいところだが、セシリオは目が見えないためそれも難しい。
手が温まったところで窓を開けるが、白い雪の上をキャンパスにセシリオの顔が浮かび筆が止まる。あの醜悪とも言える傷跡から覗く鮮烈な金と緑は美しかった。分厚い唇は弧を描きいつでも優しくフラヴィオに言葉を紡いだ。
そして、あの手。あの大きく節くれだった手は驚くほど繊細にフラヴィオに触れてきた。
たった一度交わっただけだというのに、セシリオの手の感触が身体に刻み込まれている。思い出すだけでフラヴィオの中心が疼いた。
フラヴィオは再び窓を閉めた。
セシリオから送られてきた箱を取り出す。
その中には、立派な張型が詰まっていた。最初に箱を開けた時は、黒光りする男根が目に飛び込んできて驚愕した。
しかしよくよく見れば見事な作りであることが分かった。雁首の皺や海綿体に浮かぶ血管まで精巧に彫られている。肌に馴染むように滑らかな手触りで、どこを撫でても肌理の一つさえ逆立てることはない。職人技からなるもので、決して片手間には作れぬ逸品である。
フラヴィオは下履を脱いでベッドに上がる。下着をくつろげ香油を菊座にも張型にも纏わせた。目を閉じて、セシリオの愛撫や囁きを甦らせる。自身の指で後孔を解した後は、張型をゆっくりと後孔に差し込んだ。この形も、大きさも太さもあの日感じたセシリオの雄と寸分違わぬものであった。快感を感じている間は多幸感に包まれていたが、精を放った後は虚しさが残った。何度昇りつめても、セシリオのぬくもりはやってこない。やがて疲れ果て、セシリオの分身を抱えて眠ってしまうのが常であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

処理中です...